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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第三章 学園編

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第80話 車椅子を作ろう

 ギーモの前に提出したのは車椅子のデザインを描いた紙だ。

 車椅子とはいっているけれど、どこにも車輪は描かれていない。魔石によって浮かせるので、車輪が要らなくなってしまったのだ。ちなみに魔石の稼働期間はずっと使い続けて半年間を見ている。これはあくまで理想であって、実際はどうなるか分からない。使い方次第ではそれより早く枯渇するかも知れない。

 最近は魔石を使った魔道具の周知が進んでいて、冒険者たちも魔石を必ず持ち帰ってくるようになっていた。以前は使い方がほんのりした明かり程度だったが、今ではペンにコンロに暖房など、本当に用途が増えている。しかも、照明としても格段に明るいものに変わった。魔法を込めてやればその通りに効果を発揮するので、一気に便利になったものである。

 そんな背景もあって、ボンジール商会にも魔石はたくさん眠っている。なので、この車椅子の椅子部分を作ってもらう事になった。少なくとも1日は掛かるというような返事があったのだが、私は初期の段階で口を大いに出す事にした。

 どうせ今日は学園をさぼっているのだ。このまま1日さぼっても問題はないはず。伝言自体はモモに頼んであるし、モモの侍女だって居るからきっと大丈夫だと思いたい。

「この車椅子なんですけど、魔石に込めた魔法で浮かせたり動きを制御したりするので、丈夫で軽い材質でこさえてもらいたいのです。いい材料はありますかね」

 転生したので前世の知識があるとはいっても、この世界の素材に関してそれほど詳しいわけではない。こういう点は素直に現地人である商人に聞いた方が確実なのだ。

「木材か、魔物の骨か、金属か。どういった素材をお好みですかな」

 ギーモからは不思議な質問が飛んできた。私はつい首を傾げてしまったものの、これを使うのはリブロ王子だ。下手な材質を選びたくはない。そこで私は、

「最初にお使いになられる方は、高貴なお方です。ですので、その方にふさわしい材質で作って頂けますか?」

 とりあえず、貴族が使うというようなニュアンスで返す。ただ、ギーモは私の言葉遣いで誰を相手にした物か勘付いてしまった模様。

「となれば、木材でしょうかな。魔物の骨や金属では、直接触れる部分に冷たさが残ってしまいますからな。温かみがあって肌触りの良い、木材と布を組み合わせた座面がよろしいでしょう」

 というわけで、基本となる椅子の材質は木材に決まった。あとは強度を強めるために、体の触れない要所に金属を用いる事になった。軽さと丈夫さを両立させるために、使用割合までを詰めていく。これだけであっという間に昼を迎えてしまった。

「それでは、残りは私どもにお任せ下さいませ。アンマリア様は車椅子とやらを制御するための魔法を、魔石に込めてきて下さい。明日の学園が終わった後にでもお越し下さいませ」

 ギーモはそう言って、何個か魔石を私に持たせてくれた。

 そして、私とスーラは、ボンジール商会の馬車に乗って学園へと送り出されてしまったのだった。いや、今日は丸々さぼるつもりだったんだけど……、まあいっか。

 というわけで、送られてしまった以上、昼食を食べて午後の授業だけは受けたのだった。

「お姉様、用事は終わったのですか?」

 食事を終えて講義室へと向かうと、モモが駆け寄ってきた。

「ええ、後は職人たちに任せる話ですから、私の出番はここまでなのよ。明日の学園の授業が終わった後で、また向かう事になるわ」

「そうなのですね。ちなみに私も同席しても構いませんか?」

 モモの申し出に、私はきょとんと固まった。いやまあ、ちょっと意外だったかな、そういった気分である。

 しかし、今回の車椅子は、現状外部に出すのは早いと思う。でも、そこまで秘密にするような事ではないので、

「そうね。誰にも話さないという条件でなら、ついて来てもいいわよ。例外はお父様だけ、いいわね?」

 私がそういう条件を付けると、モモは強く深く頷いた。すっかり姉妹として繋がっているから疑いたくはないけれど、元々がライバル令嬢だから警戒してしまうのである。

 というわけで、翌日の放課後、私は夜中のうちに魔法を込めた魔石を持って、モモと一緒に侍女を伴ってボンジール商会を訪れた。

「お待ちしておりました、アンマリアお嬢様。おや、モモお嬢様もご同席ですか」

「ええ、コンロなどの件では頑張ってくれた実績がありますし、姉妹という事もあるので、同席を許可したんです」

 本当は自分とスーラの二人だけで来たかったけれど、ここで嫌われて邪魔に回られては困るというのも理由だ。モモは根は素直ないい子だしね、正直疑いを持つのは心が痛いのよ。

 私とモモは、ギーモの執務室に通される。そこには、私がデザインした車椅子を忠実に再現した椅子が置かれていた。

「どうでしょうか。座面と背もたれにはクッションを付けております。見た感じはただの椅子ですが、ちゃんと指定された通りに足元には足置き、手元には魔石を埋め込む穴、座面の下には予備の魔石をしまっておく引き出しが付いております」

「ええ、上出来よ」

 できあがった椅子を見て、私はちょっとばかり興奮しているのだった。

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