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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第三章 学園編

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第76話 抱えていた問題

 フィレン王子の部屋の中で、私たちは座ったまままったく口を利かない。相当にリブロ王子の話題を出したのが気に食わなかったのか、ここまで黙り込むとは思ってもみなかった。それでも部屋から追い出さないあたり、婚約者として気遣われているようである。素直じゃないなぁ。

 しかし、今回は私だって簡単に退くつもりはない。いろいろ思い返してみれば不思議な事ばかりなのだもの。フィレン王子とはこうやって結構顔を合わせるというのに、リブロ王子とは数える程度しか会っていないんだから。こうも顔を合わせないとなるとさすがに心配になっちゃうものなのよ。それにしても、どうしてこうも兄弟で差が出てしまっているというのだろうか。

「フィレン殿下。王族の間にいかなる理由があるのか存じませんが、さすがにリブロ殿下も私とサキ様の婚約者であられるのです。ここまで顔を合わせないというのは不自然ですし、到底納得できるものではないのです」

 私は強く言ってフィレン王子に迫った。私の言い分には正当性があるし、まともに言い返す事ができないのか、フィレン王子は強く唇を噛みしめて必死に耐えていた。

 しかし、私の方だって我慢の限度があるというもの。この事に関して口が堅すぎるフィレン王子に業を煮やして、

「分かりました。殿下から何も仰らないというのでしたら、他の人に聞くだけです。それでは失礼致しましたわ」

 私は椅子から立ち上がってフィレン王子の部屋を出ていこうとする。すると、

「ま、待って下さい」

 ようやくフィレン王子が口を開いたのだ。ようやく話す気になったのかと、私は歩く動作だけを止める。だが、あくまで足を止めただけであって、状況次第ではいつでも出ていけるように立った状態を貫いていた。

「何を話して下さるというのかしら。このままお聞かせ願いますか?」

 私は悪い顔をして、この姿勢のまま話を聞かせろとフィレン王子に脅しを掛ける。すると、フィレン王子はどこまでも言い渋っていたのだが、私が立ち去ろうとする態度を見せ続けると、いい加減に参ってしまったようで話をしてくれるようである。最初からおとなしく話してくれればいいのに。

 ところが、私のこの軽い気持ちとは裏腹に、どうやら王家としては重い事情があったようだった。

 この事情というのは、乙女ゲーム内では語られる事のなかった理由だった。

 どうやら、リブロ王子には魔力の制御に関して問題を抱えているようなのである。どうにも制御がうまくいかないようで、度々魔力の暴走が見られるようであり、その危険性ゆえに表舞台から遠ざけたらしいのだ。なんとも初耳な事情なのである。

 それにしても、魔力の制御に問題を抱えているとは、それは確かになかなか表舞台に立たせられない事情としては重いものだった。

 だけれども、私ははっきり言ってその対応が裏目に出ていると確信を持っていた。まずは、どうして制御に問題を抱えるようになったのか、その事情の原因を探らなければならないと考えた。こうなったらリブロ王子に会う事は必須事項なのである。私はフィレン王子にその事を強く訴えた。

 私が強く訴えても、フィレン王子は渋っている。自分だけでは判断できないと。だがしかし、私の能力があれば、きっとその事情を解決できると必死に説得。婚約者なのだからと、私は強引に話を押し通した。

 確かに、その危険性を認識していれば、いくら婚約者とはいえど簡単に会わせられないだろう。だけれども、私には洗礼式で発露した恩恵というものがある。膨大な魔力で多少の荒療治くらい可能なはずなのである。私は事後承認でもすればいいと、リブロ王子への面会を強く求めた。

 私の熱量に負けて、フィレン王子は独断でリブロ王子への面会の許可を出した。これによって、私たちはすぐさま、リブロ王子の部屋への移動を開始する。

 移動した先で、私はあまりの状態に言葉を失ってしまった。

 久しぶりに見たリブロ王子は、すっかり軟禁状態のせいで表情からは笑顔が消えてしまっていたのである。以前見た無邪気そうな笑顔はどこへと行ってしまったのやら。理由はどうあれ、閉じ込められ続けたが故の悲惨な状態だった。

「リブロ殿下、なんとお労しいお姿に……」

 私はすぐさまリブロ王子に駆け寄った。そして、間髪入れずに鑑定魔法をかける。私の魔法なら詳細な状態を見る事ができるはずである。

 こうして鑑定されたリブロ王子の状態だけれども、想像以上に深刻である事が判明する。少なくともここ3年間はまともに見ていなかったし、その間気に掛ける事のなかった事は、完全に私のミスだった。自分の事に集中し過ぎた結果である。

 ……事態の深刻さに、私は痛く後悔した。

「あ、アンマリア?」

 フィレン王子が私に恐る恐る声を掛ける。

「大丈夫です、フィレン殿下。……まだリブロ殿下の事は治せます」

 私は、小さいながらも力強くそう呟いた。

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