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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第二章 ゲーム開始前

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第54話 新作を召し上がれ

 フィレン王子とリブロ王子の前に置かれたお菓子は、マドレーヌとタルトだった。どちらもこの世界ではまだ見た事のないお菓子である。

(伯爵家とはいえ、お父様の立場上そこそこ裕福なので、この世界のお菓子をはじめとした食べ物を調べるだけ調べられたのよね。そしたら、この二つは存在してなかったのよ)

 マドレーヌはホタテの貝殻のような特徴的な外見を持つお菓子で、タルトもクッキーの器にフルーツなどを盛り合わせた独特のお菓子だ。二人の王子が見た事ないお菓子にどのような反応をするのか、私は緊張している。

「これは、変わった模様のお菓子ですね」

 まずはマドレーヌに興味を示した。立食用に少し小さめに作っているけれど、ひと口で食べるには少し厳しい大きさである。フィレン王子が先んじてはむっとマドレーヌを口にした。マドレーヌは簡単にかみ切られて、フィレン王子はもぐもぐと食べている。同じ10歳とはいえ、その姿はなんとなく可愛かった。

「想像したよりも柔らかくて、そして甘いですね。面白い食感です。このお菓子は何と言うのですか?」

 キラッキラとした笑顔で聞いてくるフィレン王子。くっ、笑顔が眩し過ぎてダメージを受けるわ。

「マドレーヌというものです。とある海で獲れる貝殻を模したお菓子でございますわ」

 私は王子の質問に答える。スーラに言って以前紙に描いたイラストを持ってこさせておいたので、その絵を取り出しながら説明を加えていく。それを興味津々に聞くフィレン王子。まさかお菓子にここまで興味を示すなんて思ってもみなかったわ。

「貝ですか。それは実際に見てみたいですね」

 あっ、そっちかと私は思った。よく思えばサーロイン王国は内陸国でしたわ。海は南隣のミール王国に行かなければないのだ。そう、あの長い壁に阻まれたその向こう側の国へと。

「アンマリアは海を知っているのですか?」

 フィレン王子からそう尋ねられた私は、

「いえ、商会の伝手で話に聞いただけですわ」

 とボンジール商会から聞いた事にしてごまかした。前世では散々見てますけどね!

 その横では、リブロ王子がタルトにも手を出していた。クッキーの上にフルーツやらクリームやらを盛りつけたお菓子である。

 このクッキーのお皿を作るのに苦労をしたのよ。型がないから作るところから始めたわ。今ではファッティ家では定番のデザートになっていて、モモもすごく気に入っているお菓子なのよ。

 このタルトの利点は、とにかくカトラリーが要らない事。こういった立食の場でも少々大きさがあってもカトラリー要らずという優れものなのだ。クッキーの味を変えてやれば、肉料理なんかも乗せられそうである。

「すごいですね。手を汚さずに果物が食べられるなんて、思いもしませんでした」

 9歳のリブロ殿下の微笑みが私を貫く。

(うっ、可愛すぎる……。ゲームでは14歳まで一切見る事のできなかった隠しキャラが、こ、こんなかわいいショタだなんて……)

 私は必死に鼻血が出そうになるのを押さえる。

「アンマリア?」

 私の不思議な行動に、フィレン王子は心配そうな表情を向けてくる。だけど、かえってその表情が私をさらに不安にさせる。

(ああ、耐えなさい、私!)

 王子たちが可愛すぎるので、私は悶絶しそうになっていた。しかし、パーティーの主役が倒れてしまってはいけないので、その一心で私は必死に耐えていた。

「うーん、貝というとやはりミール王国へ行ってみたいですね」

 フィレン王子がどういうわけか、深刻な顔をしていた。

 さて、ここで出てきたミール王国とは何か。ゲームにも出てくるサーロイン王国の隣国の一つで、王国南側にあって海に面している国。魚や貝などの海産物が獲れる国で、単語だけはゲーム内に何度となく登場した国なのよ。残念ながら詳細は不明で、なんで名前だけは出したのよと総ツッコミだったとか。……ええ、私もツッコミを入れた一人よ。まあ、劇中では海産物に話が及んだ際の流れだったのだけどね。

「それでしたら、陛下にお願いしてみたらどうでしょうか。他国との交流は王族たる者、一度は経験させられる事になるとは思いますので」

 私は流れでそのようにフィレン王子に進言してみる。そしたらば、フィレン王子は真剣に悩み始めていた。

「まぁ、それは城に戻られてからでよろしいのではないでしょうか。今は私の誕生日パーティーをお楽しみ下さいませ」

 太った姿ではあるが、私は精一杯の笑顔をフィレン王子とリブロ王子に向けた。太ってなければ可憐な笑顔でしたでしょうにね。私はどうにも自分の笑顔に自信が持てなかった。

「そうですね。これでは主催者である君に失礼でしたね」

 王子からの微笑み返しである。ふっ、本当に眩し過ぎるわ。その横ではリブロ王子が一心不乱にお菓子を頬張っていた。可愛い。

「そうだ、アンマリア」

「何でしょうか」

「このお菓子の作り方を教えてもらってもいいかな? 王宮料理人に作らせようと思うのです」

「それでしたら構いませんわ。あとで私が直々にレシピをお教え致しますわ」

 私がこう言うと、リブロ王子がぱあっと顔を明るくしていた。よほど気に入ったようである。

 どうやら、唐突な誕生日パーティーへの参加に対する私のカウンターは、見事に決まったようだった。えっへん。

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