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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第九章 拡張版ミズーナ編

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487/500

第487話 すべてを砕く最強の剣

 タミールもレッタス王子もサクラ相手にほとんどいいところなしで終わってしまった。サクラの方も試験だということを忘れているような感じだ。

「さて、次はどなたでしょうか」

「次はボクですね」

「あら、リブロ殿下。サキ様の婚約者とはいえ今は試験。手加減は致しませんよ」

「ははっ、お手柔らかに」

 サクラがやる気満々で立っているので、リブロは冷や汗を流しながら笑っていた。

 とにかくサクラの雰囲気にリブロ王子は圧倒されていた。

「剣術大会ではないので、手順に沿った方法でのお相手となりますが、他の皆様と同じように対応させて頂きますよ?」

「ええ、試験ですからね。それでお願いします」

 試験用の木剣を手に取って、リブロ王子はサクラと相まみえる。

 試験会場は今まで以上にしんと静まり返っている。第二王子と無敗の剣術大会覇者の打ち合いが見られるのだから。

 試験開始の合図がなされると、まずはリブロ王子が攻撃を仕掛ける。もちろんではあるものの、サクラはそのすべてをしっかりと防いでいた。

「さすがはリブロ殿下。アンマリア様から伺っておりましたけれど、本当にしばらく寝込んでられたのか疑問に思える鋭さですね」

「ボクにだって、王族としてのプライドはありますからね」

「そうですか。ですが、プライドだけでは不十分でございます」

 会話を終えたサクラが、今度は防御技術を見るための攻撃を仕掛ける。今までと同じで最初は上方からの振り下ろしだ。

 リブロ王子は素早く反応して、攻撃を受け止める。だが、止められると同時にサクラは素早く次の行動に移っていた。相変わらずミスミ教官以外は目で追えない素早さである。

「それはさっき、レッタス殿下の時に見せてもらいましたよ!」

 素早く反応するリブロ王子。レッタス王子が越えられなかったサクラの二撃目にも見事に受け止める。

 よしと思ったのも束の間。これで止まらないのがサクラである。更なる三撃目がリブロ王子を襲う。

「油断はしてはなりませんよ、リブロ殿下」

「くっ……。さすがは剣術大会の無敗の優勝者。ボクもまだまだですね」

 目の前で剣が寸止めされていて、リブロ王子の腰は完全に引けてしまっていた。とはいえ、サクラに三回目の攻撃を繰り出させただけでも十分すごいというものだった。

 リブロは悔しさと満足の入り混じったような表情で試験を終えたのだった。

 こうして、武術型の期末の実技試験は無事に終わったのである。

 が、今回はそれだけでは終わらなかった。

「今回は特別だ。ちょっと待っててくれたら面白いものを見せてあげよう」

 ミスミ教官が前に出てきて話を始める。それと同時にこっそりとサクラが会場を出ていく。一体何が始まるのか、学生たちに動揺が走る。

 しばらくすると、動きやすい服装になったサクラが戻ってくる。こうなると何が行われるのかピンとくるリブロ王子たちである。

「心を折るかもしれないが、バッサーシ家の私たちがちょっとした模擬戦闘を見せてあげようではないか。そのために今回の試験官をサクラに頼んだのだからな」

 なんと、サクラ・バッサーシとミスミ・バッサーシ教官とで模擬戦をしてくれるらしい。王国最強とも言われるミスミ教官と、剣術大会無敗の覇者サクラの戦い。これを見たくない学生など居るものだろうか。

 二人は刃を潰した剣を構えると、静かに向かい合う。これだけで場にはとんでもない緊張感が走る。

 教官の一人が嫌々ながらも開始の合図をすると、そこではなんとも異次元な戦いが繰り広げられた。

「すごいですね、まったく動きが見えませんよ」

「音しか聞こえてこないんですけど?」

 バッサーシ辺境伯家の二人の戦いは、誰の目にも追えるものではなかった。動きが速すぎるのである。ミスミ教官が『心を折る』と言っていた理由がとてもよく分かる。

 剣のぶつかる音だけが響く状態がしばらく続いた後、ようやく音がやんで二人の姿がはっきりと見えた。

「はあはあ……、さすがおば様ですね」

「ここまで粘るとは、サクラも腕を上げたね。これならばバッサーシ家も安泰だろうな」

 膝をついているサクラと、サクラの額に剣を向けるミスミ教官。どうやら、あのサクラをミスミ教官が下したようである。

 さすがは最強と呼ばれるバッサーシ辺境伯の一族同士の戦い。レベルが高すぎてわけが分からなかった。

「あれが、王国最強の一族……」

「俺たちには到底たどり着けそうにない境地だな……」

 学生たちは呆然と二人の姿を見ている。

「まったく、君の国は羨ましいね」

「そう思って頂けて嬉しい限りですね。ボクたちが誇る守護者の一族ですからね」

 言葉を交わしながら、リブロ王子とレッタス王子は大きな声で笑い合っていた。

「どうやらサーロインとはうまく付き合っていかないといけないね。あの一族の領地が、我が国と接しているのですからね」

 ため息まじりに呟きながら、レッタス王子は再びサクラとミスミ教官へと視線を向けたのだった。

 サクラが試験官を務めた武術型の実技試験。果たしてどんな評価が下されるのやら、学生たちは戦慄してその結果を待つこととなったのだった。

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