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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第九章 拡張版ミズーナ編

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第437話 滅多打ちのエスカ

「ミズーナ、いるかい?」

「あら、お兄様。開いてますよ」

 ガチャリと扉を開けて入ってくるのはミズーナ王女の双子の兄であるレッタス王子だった。

「お兄様ったら、どうなさいましたか?」

 急に部屋にやって来たので、ミズーナ王女は理由を尋ねている。

 その態度にぎょろっとした目で驚くレッタス王子。どうやら意外な反応だったようだ。

「まったく、何も聞いていないんだな」

「ええ、今日は朝からアンマリアたちと話をしていましたからね」

 その反応に呆れてしまうレッタス王子である。

「その分だと、誕生日の事を忘れているとみていいのかな」

「……あっ」

 思わず声を出してしまうミズーナ王女だった。

「あら、誕生日ってどなたのです?」

 そんな事を聞くエスカ。それに対して、ミズーナ王女は頬を膨らませてジト目を送っている。

 アンマリアは気が付いたようだが、エスカは首を傾げて考え込んでいた。

「エスカ、ミズーナ王女殿下の誕生日ですよ。双子ですから、レッタス殿下も同日です」

「ええ?!」

 アンマリアに耳打ちされて、もの凄い声で驚くエスカだった。さすがにこれには頭が痛くなるアンマリアだった。

「去年は把握してませんでしたけれど、その分ですとフィレン様と同じ週だと見てよろしいのでしょうか」

「その通りだね。15ターン目だよ」

 しれっとレッタス王子から答えが返ってきた。フィレン王子と同じ週とは思わなかったようだ。

「どのようなプレゼントが贈られてくるのか、楽しみにしているよ」

 そう言いながら退出しようとするレッタス王子だが、ミズーナ王女ががっしり服の裾を掴んで引き止める。

「そうですわ、お兄様。ちょっとお付き合い下さいませ」

「なんだい、ミズーナ」

 あまりにも強い力でがっつり掴んでくるものだから、レッタス王子は気になってミズーナ王女の方を向いた。

「これに関して、意見を頂戴したいのです」

「これって何だい?」

 ミズーナ王女の言葉にしっかり反応するレッタス王子。そこへすかさずエスカが持っていたものを差し出す。

 いきなり差し出された得体の知れないものに、レッタス王子は思わず首を傾げていた。

「これはリバーシと申しまして、白と黒に塗り分けられたこの駒を盤上に並べていく遊びです。これから説明致します」

 質問を受けたので、ミズーナ王女がしっかりと答える。とはいいながら、リバーシの対戦はエスカに丸投げしている。

「なんで私!?」

「製作者なんですから、自ら説明して下さいな」

 にっこりと微笑んでエスカに圧力をかけるミズーナ王女。笑顔による無言の圧力に、魔王すら屈服させたエスカもさすがに耐え切れなかったようだ。観念してリバーシの遊び方をレッタス王子に説明することにしたのである。

 その後、数回対戦したエスカとレッタス王子。ところが、コツを掴んだレッタス王子があっさりエスカを圧倒し始めてしまっていた。

「うそ……。なんで私が負けてるのよぉっ?!」

 思わず叫び声を上げるエスカである。前世でそこそこ遊んだあるゲームだというのに、初心者である異世界人にボロ負けである。叫びたくもなるはずだ。

「うん、シンプルだけどなかなか面白い遊びだね」

 にっこりと微笑むレッタス王子である。

「驚きましたね。初心者ラックがあるとしても、ここまで圧倒的な勝ち方はしませんよ」

「途中からエスカが慌て始めて崩れたのもあるけれどね。とはいえ、一方的ね」

 メチルとアンマリアからもこの評価である。どんだけエスカがボロ負けしたのかがよく分かる。

「ふむ、用意するものもルールもシンプルではあるけれど、なかなかに奥深いものだね。不利かと思われた局面から、たったの一手でざっくりひっくり返るとは思ってもみなかったよ」

 レッタス王子は得意げに笑っていた。

「これは私からも売れるものだとして、進言させてもらうよ。ただ、サーロイン王国の手柄になるのはなんとも納得いかないものだけどね」

 そう言いながら小脇にリバーシの盤を挟み込むレッタス王子である。

「これとは別の誕生日プレゼントを期待しているよ。それと、中間試験のいい成績報告も含めてね」

「はっ! そうだわ、中間試験よ」

 レッタス王子の言葉で、思い出してしまうエスカである。

 エスカがここまで反応してしまうのも理由がある。ここまでの試験はことごとく座学がほぼ壊滅状態だからだ。実技のおかげでどうにか持ち直してはいるものの、テストというものはエスカによっていい思い出のあるものではなかったのだ。

「それでは、お互い頑張ろうね」

 レッタス王子はリバーシを抱えたまま部屋を出ていったのだった。

 再び転生者だけとなった部屋の中では、エスカが頭を抱えながらテーブルに突っ伏している。

「あああ、試験は嫌よぉ……」

 よっぽど中間試験の話でダメージを受けたようだった。リバーシで初心者に負けまくった事もあって、その落ち込みようは過去最大級だった。

「エスカ、私が見てさし上げますので、これからはお城に住みなさい。アンマリアもいなくなった状態で居座るのは、ファッティ伯爵家の迷惑です」

「うぎぎぎぎ……、仕方ないわね」

 中間試験をクリアできないのが耐えられないのか、ミズーナ王女の提案にあっさり乗るエスカだった。

 こうして、ようやくファッティ伯爵家からエスカが去ることになり、ようやく落ち着きを取り戻す事となったのだった。

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