第382話 意外性には敵わない
サキとアルーの放った光の魔法が、サンカリーに直撃する。
「やりましたか?」
サクラ、フラグを立てないで下さいな。
立てられたフラグは即回収されるものである。
もうもうと立ち上る埃の向こうからは、何やらバチバチとした光が見える。
「反撃が来るわ」
私が構えると、メチルが数少ない使える魔法を展開しようとする。もちろん私もよ。
「マジックシールド!」
私とメチルが同時に、全員を包み込むように防御魔法を展開する。それと同時に、部屋中に雷が暴れまわっていた。一瞬でも遅ければ、黒焦げにされていた可能性があるくらい強力な魔法だった。
「この虫けらどもめが……。この我をここまで怒らせるとはな、全員消し炭にしてやろうぞ!」
サンカリーはかなり怒っているようだ。雑魚と思っていた相手からいいようにあしらわれたのだから、魔王四天王としてのプライドが傷ついたのだろう。
でも、私たちからすれば、その状態はかえってつけ入る隙ができるっていうものなのよね。異世界転生者がここには三人も居るんだから。
サキやサクラにアルーというこちらの世界の住人たちには十分脅しになっているみたいだし、ここは私たちがしっかりしなきゃね。
決意を固めたところで、私はエスカとメチルに目で合図を送る。
「雷なら私に任せなさい」
エスカが自信たっぷりに魔法を展開する。
エスカの使う魔法の属性は水と闇だ。一体何をするというのだろうか。
「ピュアウォーター!」
なんか捻りのない言葉を叫ぶエスカ。
「ふん、ただの水なんぞで、我の雷を弾けると思ったか!」
サンカリーは向けられた水に向かって雷を発する。
普通なら水に雷が伝って危険なはずなのだけど、エスカは何をしているのかしら。ところが、そのエスカの顔は余裕の笑みに包まれていた。
「かかったわね!」
エスカはさらに魔法を追加して、水をまるで投網のように広げる。よく見ると、闇魔法でコーティングしてあるのだけど、それでサンカリーの雷を防げるのだろうか。
ところが、私の予想に反して、エスカの水は雷を弾いている。いや、弾いてるんじゃない。水の網の中に雷を閉じ込めていっている。
「なんだと!?」
当然ながら、サンカリーは大声で驚いている。
「教えてあげる。水が雷を通すのは、不純物が混ざっているからよ」
普段では見る事のない、エスカの真剣な表情だ。
「でもね、不純物を取り除いた水っていうのは、雷を通さないものなのよ!」
「そ、そんなばかな!」
エスカが叫んだ言葉に、サンカリーは驚きの表情を隠せない。ここまで焦った顔はメチルやアルーも見た事がないのではないだろうか。
「さあ、自分の放った雷を、自ら食らいなさい!」
「うわああっ!!」
エスカによって跳ね返された雷がサンカリーを襲う。バリバリと凄まじい音が響いていて、いくら相手が明確な敵だとはいえ、見るからに寒気のする光景だった。
今度こそやったと思っただろう。でも、私にはまだ終わっとは感じられなかった。
「ぜえ、ぜえ……。雑魚どものくせに、この我を愚弄するなど……」
弾け飛んだように見えたので、おそらくサンカリーは新たに放った雷で多くを相殺したのだろう。ダメージを負っているところを見ると、完全には相殺しきれなかったようだ。
「だが、この程度で我を……ぶはっ!」
「うるさい、黙りなさいよ」
さらに言葉を続けて強がるサンカリーに、遠慮なく追撃を食らわしておいた。柑橘魔石である。
おそらく最初に使えば雷によって無効化されただろうけれど、ここまでダメージが通っているのなら目をかいくぐって命中できたのだ。
「この、小娘があっ!」
ブチ切れた私に、サンカリーが再び雷を放ってくる。
しかし、タネの割れた手品ほど面白くないものはない。私は純粋の渦を作って、サンカリーへと放つ。筒の中で弾き返された雷が、鋭い刃となってサンカリーを貫いた。
「ぐぬっ……」
ただの魔族ならば、雷を扱うとはいっても雷吸収だとか強耐性というわけではなさそうだ。
強力な一撃となったのか、サンカリーは片膝をついてしまった。
その様子を見たアルーが、サンカリーに向けて魔法を放とうとしていた。
「みなさん、お任せ下さい。どうやら我が家が発端だったようですから、こいつとの決着は私がつけます」
アルーはサンカリーをしっかりと視界に捉えて、魔法を放つ準備をしている。
異世界人である私たちは、人型相手だと躊躇してしまう。なので、覚悟の決まっているアルーにすべてを任せることにした。
「これで終わりです。我が家の汚点とともに、消えてなくなりなさい!」
大きく手を掲げて、最大限に魔力を込めた魔法を放とうとするアルー。
「脅威を焼き払え、ホーリーブレイズ!」
ここにきて新しい魔法を放つアルー。
次の瞬間、サンカリーは聖なる炎に包まれる。
「バカな……。だが、これで終わってなるものか。我が死ぬというのなら……お前たちも、道連れにしてくれる」
サンカリーが最後の抵抗を見せている。だが、それは叶う事はなかった。
「ぐぼあっ!」
魔石剣を手にしたサクラが、サンカリーを攻撃していたのだった。
「王国の剣であり盾であるバッサーシの名において、あなたを滅ぼします」
「そん……な。ま、魔王様ぁっ!!」
最後の魔族サンカリーは、そのまま魔力の霧となって崩れ去ったのだった。




