表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第七章 3年目前半

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

349/389

第349話 大きなヒント

「ベジタリウス王妃殿下、よくお越し下さいました。バッサーシ辺境伯夫人、シーナ・バッサーシでございます」

 バッサーシ辺境伯邸に到着すると、辺境伯夫人の出迎えを受ける。

「ベジタリウス王国王妃、トゥメリア・ベジタリウスです。歓迎ご苦労ですね」

 シーナと言葉を交わす王妃。かなり親しげな様子である。

 それというのも、ベジタリウス王家とバッサーシ辺境伯との間では、馬の生産や取引による交流が存在しているからだ。

 その親しげに話す王妃とシーナの後ろで、メチルは少し気分が悪そうにしている。一体どうしたというのだろうか。

(なんなの、この感覚……。やけに強く感じるこれは……、みかんの香り?)

 鼻と口を押さえながら、強烈に感じ取っているものの正体を考察している。

 自分の後ろで妙な行動を取るメチルが気になるのか、王妃が心配になって声を掛ける。

「どうしたのですか、メチル」

「あ、申し訳ございません。ちょっと屋敷に入ってから香りが気になってしまいまして……」

「香り? 何もにおいませんが?」

 メチルの言い訳を聞いた王妃が首を傾げている。実際王妃の鼻には何のにおいも届いていなかったのだ。

 王妃の言葉に驚くメチル。しかし、今の状況を鑑みて、すぐに体裁を取り繕っていた。

「あら、ずいぶんと面白い子を連れていらっしゃいますね、王妃殿下」

 王妃とメチルのやり取りを見ていたシーナがくすくすと笑っている。本来王族に対して笑おうものなら極刑すらあり得る話だが、この二人の仲なので別にそういう事はなかった。

「ええ、なかなかに面白い子ですよ。さ、挨拶なさい」

 王妃に押し出されるようにして、メチルはシーナの前に出てくる。急に押し出されたのでメチルは慌てているが、王妃のメンツを潰さないようにと落ち着いてシーナに向かう。

「初めてお目にかかります、バッサーシ辺境伯夫人。私はベジタリウス王妃の専属侍女を務めますメチルと申します。本日はお世話になります」

 緊張しながらもどうにか挨拶を終えるメチルである。

「まあまあ、可愛らしいメイドさんね。今日ゆっくりくつろいでいってちょうだいね」

「は、はい。お世話になります」

 シーナの言葉に、背筋をピンと伸ばして返事をするメチルだった。

「あの……、つかぬ事をお伺い致します」

 返事をしたついでにシーナに問い掛けるメチル。

「はい、何でしょうか」

「みかんのような香りがするのですが、柑橘系のものとかあったりするのでしょうか」

 メチルの質問に、思わず目を点にするシーナ。そして、くすくすと笑い始めていた。

「ええ、ありますよ。娘が友人と一緒に心が落ち着くからと持ってきてくれたのですよ。ご覧になりますか?」

「は、はい。お願いします」

 シーナの申し出に、メチルは大げさに頭を下げていた。

「ベジタリウス王妃殿下、ちょっとこの子をお借りしますね」

「ええ、どうぞ」

 王妃はにこやかにメチルをシーナに託したのだった。

 王妃と別れて、シーナについていくメチル。それと同時にどんどんと鼻を突く柑橘の香りが強くなっていく。

(うう、吐きそう……。どういう事なのよ、一体)

 転生前は大好きだった柑橘の香りが、どういうわけか自分の体に変調をきたそうとしている。じりじりと歩く足取りが重くなっていくし、気分も悪くなっていく。

「アルー、ちょっとお願い」

「ご主人様ー、顔が真っ青ですよ?!」

 突然聞こえてきた声にシーナが慌てて振り向く。シーナが振り向いた先には、今にも倒れそうにふらつくメチルと、そのそばに浮かぶ小さな存在の姿が目に入った。

「まあ、メチルさん、大丈夫かしら?」

 近付くシーナを、なんとか手を上げて制止するメチル。次の瞬間、アルーが小さく光ると、メチルはすっと顔を上げていた。さっきまでの状態が嘘のように、すっかり調子がよくなったようだった。

「ふぅ、この世界の魔族って、柑橘の香りが弱点なのね……」

 防御魔法を使って、どうにか調子を取り戻したメチル。さすが防御特化の魔族である。

「一体何があったのですか?」

「いえ、どうやら私、柑橘の香りと相性がよくないみたいでして……。今は防御魔法を使っているので平気ですよ」

「まあ、そうなのですね。そこの食堂にその香りの元があるんですけれど、そういう事でしたら今夜は同席はやめておきますか?」

「いいえ、同席します。もう大丈夫ですので」

 改めて平気な様子を見せるメチル。心配になっていたシーナだが、メチルがそこまで言うのでそれ以上は止める事はしなかった。

 その後、無事に食事も終えられたメチルは、用意された客室で休む。

「ご主人様、大丈夫ですか?」

「ええ、もう平気ですよ。ふふっ、私はアルーが居ないとだめみたいですね」

「私だって、ご主人様が居ないと魔法の一つも使えないんです。お互い様ですよー」

 お互いに言い合いながら笑うメチルとアルー。

「でも、いい情報が手に入ったわ。魔族は柑橘の香りが苦手っぽいっていうね」

 ベッドの中で天井を見上げながら話すメチル。

「確かに意外でしたね。私はなんともないですのに」

「アルーは精霊だからね。私たち魔族とは違うのよ」

 ごろんと寝返りを打つメチル。

「とにかく、早くサーロイン王国の王都に着いて、アンマリアたちにこの情報を共有しなくてはね」

「そうですね」

 メチルはアルーと顔をしっかりと見合わせている。

「絶対に、生きて王都にたどり着きますよ」

「はい、ご主人様」

 バッサーシ辺境伯邸で大事なヒントを掴んだメチルたち。しっかりとした決意をもって眠りについたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ