第33話 お茶会の理由
私たちを出迎えたラム。
「よくお越し下さいました。アンマリア様。それとファッティ夫人も」
本来なら私の母親を先に言うところだろうけれど、あくまで茶会のおまけなので招いた私を先に呼ぶラム。
「あら、もしかしてラム様、痩せられました?」
「はい、3kgほど体重が落ちました。さすがバッサーシ辺境伯家の運動は違いますね」
嬉々として話すラムだが、間違いなく痩せていた。8歳児で3kgも痩せれば相当の減量である。私は55kgなのに対して、これでラムは私の半分程度まで体重を減らした事になる。それでも標準的な子どもよりは太っているのだけど。悔しいです!
だけど、ラムは私の体形には触れず、席へと案内してくれた。さすがは公爵令嬢、きちんとした気遣いができる少女なのだ。よく見ると席はまだ空いており、居るのはサクラだけだった。
「お久しぶりですね、アンマリア様」
「これはサクラ様、お久しぶりでございます」
サクラが座ったまま頭を下げてきたので、私は軽くお辞儀をする。母親は付き添いなのでそのまま立っていたが、スーラもしっかり頭を下げていた。
「そういえば、ラム様、サクラ様」
「はい、何でしょうか」
私が声を掛ければ、二人揃って反応をする。私の声にスーラはテーブルの上に持っていた包みを置いて広げた。
「今日のお茶会にあたって、お菓子を作って参りました。ご一緒にご賞味下さいませ。これでも料理には少しだけ自信がありますので」
「まぁ、それはわざわざありがとうございます」
包みから出てきたのは紅茶の葉を刻んで練り込んだクッキーと、中央にオレンジジャムの存在感が目立つクッキーの二種類だった。
「失礼ですが、このような事をしているからアンマリア様は痩せないのでは?」
「いえ、確かに試食をするのでそれは否めませんが、その分ちゃんと運動はしております。私が痩せないのは別な理由もあるのですよ」
サクラがすごく険悪な顔をするものだから、私はちょっとびびりながらそう答えた。実際問題、運動はしているので私の体力低下ペースは鈍っている。筋力もついているのだからこれは疑いようのない事実である。まあステータスが確認できる私だけにしか分からないので、いくら言っても言い訳にしか聞こえないだろうけど。
とりあえず、この二種類のクッキーはお茶うけに加えてもらう事ができた。これで後は男子たちを待つばかり。待っているのも暇なので、私たちは適当に話をして待つ事にした。
遅れること数分、ようやく男子たちが現れた。タンとタカーである。この中で後々に婚約者となるのは、タンとサクラの組み合わせだけである。さすがゲームと関係ないところでは自由ね。
「すまんすまん、親父に捕まって遅くなった」
「私の方もですよ。うっかり令嬢方に会うと話してしまったら、いろいろとくどくどと話を聞かされました」
どうやら、紳士としての心構えでも聞かされていたようだ。8歳児にどうしてそこまでするのかなぁ……。
「まあまあ、それは大変でしたね」
主催であるラムが二人を労う。こっちもこっちで8歳児とは思えない落ち着き様である。前世の8歳の頃って、どうだったかしらね。
ちなみにこのお茶会、全員どういうわけか母親同伴である。多分、子どものお付き合いに合わせて情報交換といったところかな?
「お久しぶりでございますね、皆様」
「あら、ファッティ夫人。少しお痩せになられましたか?」
「ええ、娘に付き合って少し運動をしたり食事の内容を変えたりしましたの」
母親たちの会話が聞こえてくる。そう、私はまったく痩せないのに、私の両親ともに着実に体重も脂肪も落ち始めているのだ。よく見れば、ラムの母親の公爵夫人も少し痩せたような気がする。うう、なんで私だけ……。
私がそうやって打ちひしがれている間に、お茶会が始まった。
「今日のテーマはズバリ、魔法についてですわ」
いきなり本命の話題を切り出すラムである。すると、驚いているのは私だけで、他の三人はうんうんと頷いていた。えっ、それってどういう事。
「そうですね。やはり魔法は早めに知識や感覚を身に付けておくべきですね。学園に入ってからも学べますが、アンマリア嬢の魔法を見てしまった以上、早めの方がいいと感じました」
なるほど、私のせいですか、そうですか。
でも、確かに早い方がいい気はする。家にあった魔法書を見ても、洗礼式後はなるべく早く魔法に対しての見識を身に付けるべきだと書かれていた。ただし、強力な魔法は10歳までは待つようにとも書かれていたので、基本的な魔法をしっかり使えておいた方がいいようである。
というわけで、ラムは私に魔法の使い方を教えてもらいにこのお茶会を催したようである。公爵令嬢からの誘いだと断れないとの判断から仕組まれた事だった。ここで断ってもメリットはないし、いざという時には自分を守るすべになるのだから、私は仕方なく魔法を教える事にした。でも、室内じゃなくて屋外の方がよかった気がする。扱い方を間違えば、最悪は屋敷破壊だってあるわけだもの。
私は母親の方に視線を送りながら、盛大なため息とともに覚悟を決めたのだった。もう、どうにでもなれ。




