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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第六章 2年目後半

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第320話 帰省の終わりに

 さて、帰る日も近くなってきた頃だった。女子の間で盛り上がっていたために、すっかりタミールの事を忘れてしまっていた事実に気が付く私。

 そんなわけで、私は急遽タミールの部屋へと出向いた。

「タミール、居るかしら」

「何でしょうか、アンマリア姉さん」

 うぅん、名前に姉さんを付けて呼んでくれてる。なんて新鮮なのかしら。

 私はちょっと感動を覚えてしまった。王都でもあまり顔を合わせなかったし、言葉を交わす事も少なかったものね。いとこなんだし、もうちょっと親交は持っておくべきかしらね。うん、反省ね。

「ちょっと……、ううん、ちゃんと謝っておきたいかなと思いましてね」

「アンマリア姉さんが?」

 私の言葉に、どういうわけか驚くタミールである。変な事を言ったかしらね。

「そうよ。今までろくに話もしてこなかったんですもの、いとこなのに。まあ、モモやエスカが居る時点で、タミールからも話しづらかったとは思いますけれどね」

 謝罪をしつつ、タミール側の事情も察する私。おそらくこちらではあまり女性と話した事はないだろうし、同年代とはいっても、女性の中に割り込むのは度胸が要るでしょうからね。

「今夜にはお父様たちが戻られて視察内容をまとめられるでしょう。そしたら王都に戻る事になります。せっかくこっちに来ているのですから、少しくらいはお話をしませんとね」

 私の言葉に戸惑っているタミール。ところが、それに追い打ちをかけるように、私の後ろからモモとエスカが顔を出す。

「うわぁっ?!」

 思わぬ展開に、タミールは驚いて腰を抜かしてしまっていた。

「あらあら、驚かせてしまったわね」

「エスカ王女殿下が急に顔を出されたからではないでしょうか。王女様相手だと、男性は緊張をなさると言いますし」

 エスカに対してモモもかなり冷静にツッコミを入れている。長らく一緒に生活していると、ついつい慣れてしまうものなのである。多分、私がエスカを軽く扱っている影響もあるでしょうけどね。

「とりあえず、少し領地についてお話を聞かせてもらえるかしら。私たちは自分の親の領地なのに、この土地には詳しくありませんからね」

「わ、分かりました。僕もあまり詳しくはないですけれど、少しくらいなら……」

 私の申し出に、タミールは自信なさげながら話に乗ってくれた。断られなかったところを見ると、嫌われてるってわけじゃなさそうね。

 話を聞けば、タミールはもう少し小さい頃に父親に連れられて領地を回った事があるらしい。なんでもこのファッティ伯爵領は農業が盛んらしい。

「へえ、柑橘系の果物かぁ……。いいわねぇ」

 エスカの目がきらりと輝いた。

「まさか、エスカ……?」

「ええ、柑橘系の皮はいいアロマの材料になるのよ。ただ、充分量を取るためには大量の皮が必要だけれどもね」

 にっこりとこの上ない笑顔を見せるエスカだった。

「それにしても……。好きでよく食べている果物が、まさか自分の親の領地の産物だったなんて、驚きでしかないわね」

「お姉様、ご存じなかったのですか?」

 私の言葉に、モモから容赦ないツッコミが飛んでくる。

「だって、お父様ったら一度も領地に戻られないんですもの。今回無理にでも言わなかったら、きっと今後も戻らなかったと思いますよ」

「……なるほど、それはよく分かりますね」

 私の反論に、すんなり納得してしまうモモだった。その姿を見てエスカが笑うものだから、私はつい睨んでしまった。

「おっと、怖い怖い」

 笑いながら反応するエスカに、私はさらにジト目を向けた。すると、エスカは笑うのをやめて私を落ち着かせようとしてきた。だったら笑わないで欲しいわね。

 そんな私たちの様子に、呆れ顔のタミールである。なにせ、隣国とはいえ王女に対してこの態度を平気で取れる事もそうだし、それを笑って済ませる王女の態度にも理解が追いつかなかったのだ。私たちには常識が通用しないのだ。

「おほほほほ、私たちの事は気にせずに、続きを話して下さいな」

 笑ってごまかそうとするエスカだったが、タミールの困惑はそう簡単には解消しなかった。

 そんなこんなでわいわいと話をしていると、屋敷の中が騒がしくなってきた。

「どうやら、お父様たちが戻られたようですね」

 使用人たちからわずかに聞こえる声で、私はすぐにその様に判断した。

「うっわ、地獄耳……」

 私の言葉にボソッと悪口を漏らすエスカ。悪口ではないだろうけれど、エスカの表情を見たら悪口以外のなにものでもない。なので、私は無言の笑顔でエスカに圧力をかけておいた。

「それでは、お開きにしましょうか。興味深い話をいろいろ聞けてよかったですよ、タミール」

「いえ、僕の話を聞いて下さってありがとうございました」

 タミールは謙虚に頭を下げていた。ふふ、可愛いいとこだわ。


 そんなこんなで10数年ぶりの父親の帰省は幕を閉じた。

 あとは王都に戻って年末の年越しパーティーに参加するだけである。

 ただ私たちは気付いていなかった。このファッティ伯爵領への訪問が、今後にとって重要なヒントにあふれていた事に……。

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