第222話 続々・聖女育成計画
翌日、学園に登校した私は、モモと一緒にサキに会いに行く。
すると、すっかり調子が戻って元気になったサキが学園に登校していた。
「サキ様、すっかり調子はよろしいようですね」
「これはアンマリア様。ええ、もうすっかり元気です」
たったの2日で全快するとは、さすが聖女といったところかしら。すぐさま私も処置をしたし、こうやって見ていると間違っていなかったんだなと再認識する。
サキも無事に回復して、これで一応は学園生活は元に戻った。
なんだかんだでサキもクラスでは人気があるようで、周りにはそれなりに親しい友人が居るようである。王子の婚約者と聖女という2つの肩書があるからこそ、サキの周りには人が集まっているところがある。これがただの男爵令嬢だったら、はたしてこうなっていたのかは疑問に思えた。
まあそんな事はさておいて、私はサキに話し掛ける。
「サキ様、全快祝いにお渡ししたいものがございますの。よろしいでしょうか」
私が話し掛けると、サキに群がっていた友人たちはさっと蜘蛛の子を散らしたかのように去っていく。なんか怯えたように走っていくその姿に、私は表情を曇らせた。
「何なのですか、あれは……。まるで魔物でも見たかのように走っていくなんて、どうかしていますわ」
「アンマリア様、恐れられていますね」
「はあ、なんでそうなるのかしら」
私は理解できないといった感じにため息を吐く。するとモモが横からツッコミを入れてくる。
「ふふっ、お姉様ったらその体格ですし、去年魔法型の所属ながらも剣術大会であそこまで善戦されたんですもの。普通の方々からしたら恐れ多くなるのは当然だと思います」
モモが笑いながら言うものだから、私はどういった反応をしていいのかものすごく困ってしまった。何と言っても可愛い妹だからね。
それはそれとして、気を取り直して私は改めてサキに話し掛ける。
「ちょっと予想外な事をされてしまったので話が逸れてしまいましたね。改めて全快祝いの贈り物をお受け取り下さいな」
「アンマリア様、一体何を下さるのでしょうか」
私の言葉に、サキがもの凄くわくわくしているのが分かる。だって、目が輝いているんですもの。
「そ、そんな期待するほどのものでもありませんよ。ほら、これです」
ずいっという圧力が強いサキに、私は落ち着かせるように言いながらその贈り物を取り出す。
「何でしょうか、これは」
サキがきょとんとした顔をしている。そのサキの目の前に出てきたもの、それはエスカに言って形状を変えてもらったサキ専用の杖だった。
本来なら光と氷の属性を持つサキとは相性の悪い、エスカの闇とモモの火の魔法を使って仕上げた杖だけど、そこに私がひとつまみの工夫を加えて問題がないようにしておいた。
そうやってでき上がった杖は、材料はトレント木材とはいえ、きれいな乳白色の見事な一品に仕上がっていた。長さとしてはナイフ程度なので、そこそこ細長い。
「まあ、きれいです、アンマリア様。いいんですか、これを私が頂いてしまって」
サキからは感嘆の声が漏れていた。
「いいのですよ、サキ様。この杖なんですが、トレント木材という魔力と親和性の高い木材を使っています。念じながら魔力を通す事で、いろいろな姿に変える事ができますのよ」
私はそう言って、誕生日にもらった棒切れ状のトレント木材を取り出した。
「通常のトレント木材でしたら、一度魔力を通して変形させると、二度と形が変わらなくなるのですが、これはちょっと訳が違いますのよ」
私がここまで言いかけたところで、ホームルームの鐘が鳴る。
「あら、時間ですね。それではお昼休みにでもゆっくりお話をしましょうか」
「はい、承知しました、アンマリア様」
「私も同席致しますね」
私の言葉に返事をするサキと、乗っかってくるモモ。
というわけで、私たちは昼休みに改めて三人で会って話をする事になった。
昼休みを迎え、賑やかな学食の一角に三人で席を囲む。食事をしながら簡単に説明をするためだ。
「今朝、サキ様にお渡しした杖は、エスカ王女殿下とモモの二人で作り上げた特殊な杖なのです」
「ええ?! そんなものを、頂いてしまっていいのですか?」
私が単刀直入に告げた事実に、サキはものすごく驚いている。モモはまだしもエスカが関わっているせいだろう。
「構いません。サキ様を魔法に関して鍛えるには、これが最適だと思われますのでね」
強く言い切る私。私の言葉に、サキは黙って今朝渡された杖をじっと見てる。
「この杖は二人の魔法によって特別に作られたものでして、魔力を通す事で様々なものに姿を変えられるのです。しかも、何度でもです」
「まあ……!」
地球でなら質量保存の法則やエネルギー保存の法則よって変形の制限が掛かってしまうような事も、魔法があればまったく問題がない。魔力という媒体によって、そんなものなどどうとでもできてしまうからだ。
「ですので、このトレント木材の杖を使って、サキ様には更なる魔法の訓練をして頂きたいのです。あのような無茶をされて、命の危険に晒されてしまうのはもう終わりにしてしまいましょう」
私はまるで何かを企んでいるかのような鋭い目で笑うのだった。




