第206話 転生者、集う
城の中に用意された留学中のミズーナ王女の私室。そこは諸外国の来賓用に用意された部屋の一室だった。アーサリーが国内来賓用の部屋なので、地味に待遇が上だった。
「片付けはこれからですが、お話するだけなら問題ないかと思います。ささっ、どうぞお掛けになって下さい」
ミズーナ王女は部屋の来客用のテーブルを指してこう言っている。私たちの侍女も一応同席しているが、すぐにミズーナ王女によって席を外させられた。
「ちょっと大事なお話ですので、すみませんね」
「いえ、王女殿下には逆らえませんので」
ミズーナの謝罪の言葉に、スーラはおとなしく従っていた。そして、パリーセを連れて城の案内をすると言って出ていった。
これで部屋の中には、私、エスカ、ミズーナ王女というヒロイン二人とお邪魔虫が揃った。
「さて、部屋に案内したのはいいですけれど、何からお話しましょうかね」
ミズーナ王女は考え込む仕草をする。まあ、会ったばかりだからそういう話になるでしょうね。
「それにしても、おかしいですわね。この時期だとまだ相手が決まっていませんから、王妃教育とかそんな話が出るわけありませんのに……」
ぶつぶつと独り言ちるミズーナ王女。すると、これにエスカが反応していた。
「ちょっと待って。この時期だとまだ相手が決まっていないってどういう事なのかしら」
ミズーナ王女へと質問をぶつけるエスカ。そう言われて私もはたっと気が付く。
確かにそうだ。ゲームでは攻略2年目を目の前にしたこの時期、確かにまだ相手は誰か分からない時期だ。それを知っているという事は、もしかするとミズーナ王女は……。
「えっ、私何かおかしな事を言いましたか?」
とぼけた反応を見せるミズーナ王女。
「そんな事を確定的に言えるのは、ここが『アンマリアの恋愛ダイエット大作戦』の中だって知ってなければ言えた事じゃないわ。もしかして、ミズーナ王女も転生者?」
エスカがびしっと指摘していた。これに驚いた顔をするミズーナ王女。
「『も』って事は、もしかしてお二人ともそうなのですか?」
目をぱちぱちとしながら確認するように問い掛けるミズーナ王女。それに対して私たちはこくりと頷いた。私たちの反応を見て、ミズーナ王女は驚きを隠しきれないようだった。
「驚きましたわね。まさか初期主人公と追加ライバルが転生者だなんて思いもしませんでしたわ。でも、少し安心しましたわね」
ミズーナ王女は本当にほっとしたような様子を見せていた。なまじ前世の記憶があるからこそ起こってしまう現象でしょうね。私も身に覚えがありますもの。
「アンマリアはどうだったのですか? 太っちょヒロインだと知った時のショックたるや、言葉にならなかったでしょう?」
ミズーナ王女はこう言っているという事は、間違いなく本人はそうなったという事だろう。
「そうですね。洗礼式で見た自分の恩恵を確認した時は、それはショックでしたよ。学園に入る時に120kgが確定だなんて、何の拷問かと……」
私は当時を思い出しながらそう話すと、ミズーナ王女も強く頷いていた。やっぱりそうなのね。一人だけ普通の体型なエスカだけは首を傾げていた。
「失礼とは存じますが、ミズーナ王女殿下も、やっぱり120kgなのでしょうか」
私がドストレートに問い掛けると、ミズーナ王女は無言で頷いた。やっぱり拡張版も同じ仕様なのか。人の心とかないんか、開発の人たち……。
実際にミズーナ王女もかなりでっぷりとしている。さっきの謁見の間で初めて姿を見た人たちが言葉を失うくらいである。私という先例がありながらも驚いてしまうのは、ミズーナ王女が一国の王女だからなのだろう。
「でも、安心しました。私一人ではない上に、アンマリアがずいぶんと1年間で痩せていますので。私も頑張れば痩せられるんだって希望が持てました」
ミズーナ王女が笑顔を見せている。元の素材がいいからだろうか、これだけ太っていても美人に見えるのはすごいわね。
とりあえず、こうやってお互いに転生者だという事を確認した上で、この乙女ゲームの事でしばらく盛り上がっていた。
しかし、それもあまり長くは続かなかった。
「アンマリアお嬢様、王妃教育の時間でございます。このままですと遅れてしまいます」
スーラが私を呼びにやって来たのだ。
「あっちゃあ……。もっと話していたかったんだけどね。仕方ない、私は行くわね」
「はい、アンマリア。またお話しましょう」
こうして私はミズーナ王女と別れて王妃教育へと向かったのだった。部屋に残ったのはミール王国のエスカとベジタリウス王国のミズーナ王女の二人である。あとでエスカから確認した話だけど、拡張版の簡単なストーリーと学園生活に対して思う事などを話していたいそうな。二人とも来年から学園に通うものね。私の方でも気になる事はあるから、またミズーナ王女とはお話がしたいものだわ。
そういうわけで、私の学園生活2年目は、転生者が三人というとんでもない状況の中で始まる事になったのだった。




