第201話 冬休みが来る
どうにかこうにか、無事に後期末試験がすべて終わった。
私の成績はトップクラス。見事1位である。モモは魔法試験のおかげで上位30人にめり込めるほどにはなったものの、それでもかなり座学試験が足を引っ張っている。その事に相変わらず落ち込んでいるようだった。可愛い。
それはそれとして、1年生の後期も無事に終わる事ができたので、いよいよ4週間の冬休みに突入する。落第は誰一人としていなかったので、全員が安心して2年生に進級できるのである。
ところがどっこい、そんな状況にもかかわらず、私はまったく心が休まらなかったのだ。
「お姉様、ため息なんか吐いてどうされたのですか?」
食事の席で私の様子を見ていたモモが質問してくる。
「いやね、王族が三人もやって来るじゃないの。私ってば殿下たちの婚約者ですから、その際にお出迎えに行かなければならないのですよ」
「ああ、そういえばそうでしたね……」
私がこう言うと、モモもしっかりと思い出していたようである。
だが、伯爵令嬢である私はまだいいとして、男爵令嬢であるサキの方が可哀想である。なまじ聖女の力を持ってしまったがゆえに、王子の婚約者にされて、王族のお出迎えに参加させられるのだから。通常であれば男爵令嬢はこういった行事にはあまり縁がない。せいぜい貴族が一斉に集まる夜会くらいだ。それを思えば、本当にサキの状況はかなり可哀想なのよね。
実は、学園の終業式に合わせて、王家にはミール王国、ベジタリウス王国の双方から入国に際しての申し入れが来ていた。それはもちろん、私のところにも父親を通じて話が来ている。特にミール王国からは、くれぐれもエスカの事を頼むと念入りの書簡が届いていた。私とエスカが仲がいい事を反映しての事だろう。正直エスカの扱いには困るけれど、国際問題にするつもりはないので安心してもらいたいものね。
それよりもむしろ問題なのは、ベジタリウス王国の王子と王女だろう。双子の兄妹で、兄はレッタス、妹はミズーナという名前らしい。特にミズーナは丸々と太っているためにお城の中でも扱いが特に困っているようだった。そういう事が書簡に長々と書かれていたらしい。いやね、書簡に愚痴を書き連ねるのはやめてくれないかしらね。
とりあえず、その書簡に記されていた内容によると、年末の行事もあるので、年末の2週間前にはやって来るらしい。それも双方ともに。ベジタリウス王国の方は一度テッテイに寄るらしいので、そこにお邪魔してみようかしらね。どんな人物か見ておきたいのよ。特にミズーナ王女は、私と比べてどのくらいの太り具合なのか興味があるしね。
ちなみに私は後期末試験で魔法を使いまくったのもあってか、いよいよ80kg切りも視野に入ってきたわ。ステータス画面によると今は82kgよ。1年間で38kgも痩せたのはかなり頑張ったんじゃないかしら。それくらいに、私の太っていた原因が魔力によるものだったという証左なんでしょうけどね。
こういった私の状況は、おそらくはミズーナ王女が痩せたいと思っているのなら役に立つはずである。そう考えるからこそ、私はここまでの自分の足跡をまとめに入る。
私がそうやって珍しく部屋に閉じこもっていると、部屋へとモモがやって来た。
「お姉様、今よろしいでしょうか」
「ええ、構いませんよ」
モモはほっとした様子で部屋へと入ってきた。一体何を心配していたのだろうか。
「お姉様にお客様がいらっしゃってます。応接室でお待ちだそうですので、向かわれてはどうでしょうか」
ずいぶんとよそよそしい言い方をするモモである。ははーん、これはきっと殿下だわね。私はそう直感した。
「分かりましたわ。すぐ向かいます」
私はモモにそう返事をして席を立つ。そして、モモと一緒に応接室へと向かったのである。
「失礼致します。アンマリアです」
応接室に着いた私は、声を掛けながらコンコンと扉を二度叩く。
「やあ、アンマリア。待っていましたよ、入ってきて下さい」
すると、部屋の中から聞こえてきたのはフィレン王子の声だった。予想通りの声が聞こえた事で、私はつい安心してしまう。なので、お言葉に甘えて扉を開けて中に入ろうとする。
だが、この時の私を待ち受けていたものは、あまりにも予想外な人物だったのだ。
「やほー、アンマリア。久しぶりだわね」
ものすごく砕けた声で話し掛けてきたのは、他でもないエスカ・ミール王女である。こんな時期にこんな所に居る事がありえない存在が目の前に居る。私はものすごく面食らって立ち尽くしてしまっている。
「あはははは、ドッキリ大成功ね!」
ケラケラと笑うエスカに、苦笑いをするフィレン王子とむすっとするアーサリーである。なんだってこの三人が我が家の応接室に集まっているんですかね? そこには甚だ疑問しか浮かばなかった。
「いやまったく、今朝方城に突然現れたエスカ王女殿下には驚かされましたよ」
整ったフィレン王子の顔の眉が歪んでいる。これにはエスカが相当な事をやらかした事が、容易に想像できるというものである。
「まったく、お供もつけずにやって来るとか、お前は一体何を考えているんだ」
アーサリーもこの通り、怒っている様子である。
これを聞いて私はすぐに悟ってしまった。
そう、エスカ王女は瞬間移動魔法を使って、このサーロイン王国へとやって来たのである。
相変わらず自由でめちゃくちゃな王女様のようね。




