第128話 領地の伯父家族
朝早くに到着した私たちは、早速荷物を部屋に置いてくる。使う部屋は元々私が使っていた部屋を二人で使う事にした。滞在期間はそんなに長くないし、養女となったモモへの扱いがどうなるか分からないからよ。いまいち信用できないわ。なにせモモはこのファッティ領に初めて来たばかりなのだ。周りが赤の他人ばかりなのだから、落ち着けるわけがないのである。だからこそ、モモを私と同じ部屋に割り振ったのだ。
「おじ様、私たちの滞在はそう長くはありません。ですので、使用人は特に要りませんのでよろしくお願い致します」
「そういえば、学園の合宿だとかいう話しだったな。となるともう発たねば間に合わぬのでは?」
私の発言に、伯父は顎を触りながら疑問を呈してきた。
「いえ、私には秘密兵器がありますので、3日間は滞在できますわよ」
それに対して、私はすっぱりと言い切っておいた。瞬間移動を使えば、合宿先であるクッケン湖までひとっ飛びどころか一瞬だもの。
「せっかくおじ様とお会いしたというのに、いろいろとお話を伺いたいですわ」
私はにっこりと伯父に笑いかけておく。伯父の方も私を無下に扱えないらしく、苦笑いをしながらも歓迎しているようだった。
午前中は屋敷の中でくつろぐ私たち。本当はまったく疲れていないんだけど、一応長旅をしてきたという風に思われている。いや、朝に到着した時点で疑おうよ。なんでそれを信じちゃうわけよ。私は突っ込む気力を失ってしまった。
さてまぁ、午前中に屋敷の中を見せてもらったわけだし、午後は領主邸の近辺でも見学させてもらおうかしら。伯父の事を信用してないわけじゃないけれど、父親があれだけ目を離しているわけだから、ちょっと心配になっているだけよ。
そんなわけで、私とモモは昼食の席に招かれる。ここの領主の娘とはいっても、ほとんど王都に居るわけだから客人扱いも仕方がない。
食卓の上座には伯父であるデバラ・ファッティが座り、その隣にはその妻であるミムクが座っている。デバラの隣には息子のタミール、その向かい側に私たちが陣取っている。それにしても、伯母といとこに会うのは久しぶりだった。最後に会ったのは本当にいつだったかしらね。いろいろあり過ぎたせいでうまく思い出せないわ。
さてさて、その伯父夫婦が普段食べている食事とはどういうものなのか、早速見させてもらおうじゃないの。
出てきた料理に驚かされる私。思ったよりも健康志向の料理である。野菜がたくさんあって、全体の量としては両親たちとの食事と変わらないものの、明らかに内容が違っていた。
「アンマリアや、弟の近況などを聞かせてもらってもいいかい?」
「そうですよ。あなたが殿下たちの婚約者に決まったとか喜んで送ってきた以降、ろくに手紙も寄こしませんからね。私たちとしても気になっていましたのよ」
デバラとミムクは口々に心配の声を私に浴びせてきた。あれ、思った以上にいい人たちなのでは?
「弟は優秀だが、真面目だからな。城で大臣をしているらしいから、体が心配なのだよ」
デバラは私の顔を覗き込みながら、本気で心配しているように話してくる。やっぱり身内の事は気になるものなのね。
「え、ええ。お父様でしたら元気ですわよ。食事にも気を付けてられますし、適度に運動もされています。ただ、やはり城での仕事が忙しいのか、少々家に戻ってくるのが遅くなっているのは気になりますね」
私は父親の事を包み隠さず、デバラに伝えておく。
「やはりか……。領地の仕事は私が引き受けておいて正解だったな。弟、ゼニークは昔っから真面目過ぎるのだよ。そのせいでストレスを溜めて暴食気味になって、気が付けばあの体格だ。私は心配でたまらないんだよ」
「あなた……」
「父上……」
顔を手で押さえて左右に振るデバラ。うん、演技なんかじゃない。本気で父親の事を心配しているのである。
それにしても、確かにデバラたちの体格は比較的普通ね。なるほど、父親の体型は一族では特殊だったわけか。まあ、私もその影響をもろに食らっているわけだけれどもね。
「そうだ、無茶を承知でひとつ聞いてほしい」
顔を左右に振って気を取り直したデバラが、私に対して何かを頼もうとしている。
「私の息子のタミールの事だ。年齢としてはアンマリアたちの一つ下に当たる。つまり来年から学園に通う事になるんだ」
ここまで聞いて私は頼み事の内容を直感した。年齢を言ってきた時点でもう一つしかありえない。
「すまないが、息子が学園に通う間、王都の家で預かってもらってもいいだろうか」
あー、やっぱりそうなるわよね。私は予感通りだったために、ちょっと放心気味になる。
「お、お姉様!」
モモの声で我に返る私。そして、
「申し訳ございませんが、私の一存では決めかねます。お父様とお母様に相談してから決めたいと思いますし、その件はひとまず保留でよろしくお願い致します」
言い方を変えながら、大事な事なので二度伝えておく私。すると、デバラはそれを了承してくれた。
「合宿の帰りにもう一度寄りますので、その時にでも手紙を預かりますわ。リブロ殿下の誕生日もございますから、間に合わせるように戻る事になりますけれど」
「分かった、そうさせてもらおう」
そうして話が終わると、私とモモは伯父家族との食事をしっかりと味わったのだった。うん、ヘルシーでさっぱりしていて気にいったわ。惜しむらくは、この食事がここに居る間しか味わえない。それだけに、私はしっかりと堪能しておいたのだった。




