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伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦  作者: 未羊
第三章 学園編

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第118話 安心したいから

 私はリブロ王子の経過を見るために、途中で見かけた兵士にリブロ王子の部屋まで案内してもらった。お城の中なので勝手に一人で歩くのもよろしくないだろうという判断からよ。婚約者だから許されるかもだけれど、一応証人のようなものは必要でしょ?

「案内ご苦労様ですわ」

「はっ、この私めでよければ、いつでも!」

 私が労うと、案内をしてくれた兵士は敬礼をしてその場を去っていった。

 さて、私は気を取り直してリブロ王子の部屋の扉を叩く。

「アンマリア・ファッティでございます。リブロ殿下、様子を見に参りました」

「あ、アンマリアかい? 入ってきていいよ」

 私が中に呼び掛けると、ちょっと慌てたような感じのリブロ王子の反応が返ってきた。一体何があったというのだろうか。気にはなったものの、私は許可が下りたので扉を開けて中へと入った。

「や、やあ、アンマリア。一体どうしたんだい?」

 テーブルに向かって車椅子に乗ったまま本を読んでいるリブロ王子。どうやら来年から通う学園のために、ちょっとした勉強をしているようだった。

 その様子をしばらく眺めていた私だけれども、手の方は完全に動きが戻ってきているようで、本をめくる動作も、紙に文字を書く動作も実にスムーズに行えている。

「だいぶお体の調子はよろしくなられたようですね」

 ようやく私は口を開いた。

「ああ、アンマリアがしてくれた魔力循環治療のおかげだよ。腕や手を使った作業についてはまったく問題が無くなってきてる」

 うん、それは見れば分かるものである。痛がる様子も動き止まる様子も誤差レベルと言っていいくらいスムーズなのだ。

 しかし、私が今回見に来たのは脚の方だ。普通に立って歩けるかどうか、歩けたとして何歩ぐらいまでなのか、そっちの方を確認する必要があるのである。医者ではないけれど、初期治療を始めた者としては完治まで見届ける義務があると思うわ。

「あ、アンマリア? なんだか怖いよ?」

 あまりにじっと凝視していたら、リブロ王子に怖がられてしまった。いやこれは失敗ね。

「申し訳ございません、リブロ殿下。殿下の状態がどのくらい回復したのか気になってしまって、つい凝視をしてしまいました」

 とりあえず正直に話しておく私。もちろん謝罪もするために頭だって下げておく。

「そうか。婚約者だものね、気になってしまうのも当然か」

 私の返答に、リブロ王子は納得した様子だった。

 私は視界に入った松葉杖を取るために部屋の中を移動する。そして、松葉杖を手にすると、笑顔をリブロ王子に向けた。

「どれほど脚の状態が回復したのか、確認させて頂いてよろしいでしょうか。どちらが王位を継ぐと致しましても、やはり歩けない事には話にならないと思いますのでね」

 松葉杖を運んできた私は、リブロ王子に無言の笑顔絵で松葉杖を差し出した。当のリブロ王子や彼の使用人たちも驚いていたが、こればかりは要る要らないの選択ではなく、必須の項目なのだ。

 私の無言の圧力に屈したリブロ王子は、車椅子の方向を変えて両手に松葉杖を持つ。そして、力を込めて車椅子から立ち上がった。

 次の瞬間、リブロ王子が大きくよろめいた。だけれども、私がすぐさま体と魔法で支えたのでリブロ王子が転倒するような事はなかった。いくら私が女性だからといっても、体重100kgを舐めないでちょうだい。

 さて、松葉杖を使うリブロ王子だけれども、やっぱり足元を見れば小刻みに震えている。まだまだ自分の足だけで立てるほどの筋力は戻っていないようだ。

「リブロ殿下、少々失礼致します」

「何をする気なんだい?」

「立ったこの状態で鑑定魔法を掛けさせて頂きます。詳しい状態を知りたいですから」

 リブロ王子の返事を待つ事なく、私は鑑定魔法をリブロ王子に掛ける。すると、リブロ王子の体の状態が事細かに空中に表示されていった。

「これはなんだい、アンマリア」

「これが今のリブロ王子の体の状態ですね。侍従の方も確認頂けますか?」

「は、はい!」

 鑑定魔法の結果によると、腕や胴体に関してはほぼ正常と出ている。一方で脚に関しては……。

「うーん、まだ立つには厳しそうですね。私の鑑定結果でも、順調に回復して冬に差し掛かる頃と出てますね」

「という事は、一応学園に入る前どころか、年末の行事までには間に合うわけか」

「そういう事になります。ただし、順調に回復すればという条件が付きますけれど」

 険しい顔をする私の姿を見て、リブロ王子と侍従の顔も険しくなる。

「どうすればいい?」

「魔力循環を正す治療の継続と、あそこに作った歩行訓練のための器具を使って歩く練習を欠かさない事ですね。長らく動かしていなかったので、まだまだ脚の機能が衰えていますから」

「分かった。そこまで心配されては、僕も頑張らなくてはいけないと思う。これ以上みんなに心配をかけては、王子としても、君の婚約者としても失格だろうから」

 リブロはそう宣言していたものの、どことなく顔が赤くなった気がした。見間違いよね?

「モモの誕生日を祝った後、夏休みに入りますので、しばらく私は領地の方へ出向こうと思います。ちゃんとリブロ殿下の誕生日までには戻りますので、ご安心下さい」

「そうか。すぐとんぼ返りだろうけれど、久々の領地を満喫してきてくれ」

 これでリブロ王子との会話を終えた私は、後の事は侍従に任せて、そのまま部屋を後にして家へと戻ったのだった。

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