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月子の場合  作者: ヒスイ
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天野玲子の場合⑥

一睡も出来ず朝を迎えた玲子。


学校に行きたくない。


初めて芽生えたその感情が体の動きを鈍くする。

しばらく呆然としていると目覚まし時計が鳴り、活動を始める時間だということに気付かされた。

目覚まし時計を止めて、玲子はいつものように朝の準備に取りかかった。


通学路は朝の陽射しに満ちており、冬が少し近づいている時期なので風は冷たいが日光の暖かさが中和してくれる。

多くの学生に混じって玲子も歩みを進めるが気分が重い、というよりも心が重い。

学校に近づくにつれて動悸が増していく。

校門には生活指導の教師が立っており服装の乱れ等を注意している。

校門を通過して下駄箱で上履きに履き替える。

昨日、仕事から帰って来る途中の父に新しい上履きを頼んでいたので今日は下駄箱を開けることはなかったし、下駄箱を見た途端に昨日の光景がフラッシュバックしたため、玲子は素早く目を逸らして教室まで移動した。


教室のドアを開けると中にいた生徒が一斉に玲子の方を見る。

その中でも尾形と三田、その取り巻きは悪意の混じった笑みで玲子を見ていた。

玲子が席に着く。

落書きが昨日より増えており、ノートの切れ端が置かれている。


『放課後、昨日の場所に来い。教師にチクったらお前の家燃やす。』


玲子は絶望したが始業のベルは鳴り響く。

残酷にも時間は待ってはくれないのだ。


放課後、昨日と同じ中庭に向かう。

クラスカースト上位の尾形と三田が指示したのか、それとも雰囲気を察したのかほとんどのクラスメイトは玲子を避けるようになっていた。


到着した中庭には尾形と三田、そしてその取り巻き合わせて十人の男女がいた。

玲子を見た男子たちはみんな一斉にニヤケ顔を隠さない。

女子は相変わらず侮蔑の眼差しを向けている。

ベンチから立ち上がった尾形は顔色を変えず玲子に言い放つ。


「遅えんだよ。ほら、昨日みたいに脱げよ。」


玲子に断る選択肢なんてなかった。

昨日と同じく震える手でブレザー、カッターシャツのボタンを外し、最後にスカートを下ろした。


『おおー!!』


男子から歓声が上がると同時に携帯電話のカメラが一斉に向けられる。

咄嗟に露出している下着を隠そうとするが


「動くんじゃねぇよ!」


三田の怒号で制された。

玲子の震える身体を写真に収める男子たち。

一通り、写真撮影が終わると尾形の口角が歪に上がる。


「天野、全部脱げ。」


玲子の頭が真っ白になる。

尾形の言葉が頭の中でこだまする。

身体が、指先すら動かない。


「チッ、トロいなぁ。おい!」


そんな玲子に痺れを切らした尾形が三田に声をかける。

三田は周りの女子に目配せをして女子数人で玲子を取り囲む。


「な、なに…?」


「達也をこれ以上待たせんなよ、ゴミ。」


「お、お願い!!やめて!!」


玲子は女子数名に手足を抑えられ、下着を剥ぎ取られていく。

あっという間に玲子は一糸纏わぬ姿になった。

女子の拘束が解かれ、男子達はその姿を見て生唾を飲み込む。

玲子は力が抜けてその場に倒れる。


「天野、お前感謝しろよ。この街で一番の権力者の息子のガキ産めるかもしれねえんだからな。」


その言葉の意味を理解した瞬間、彼女は決死の覚悟で力を振り絞るが無情にも女子たちの手が彼女を再度拘束した。


尾形がズボンのベルトを緩める金属音が玲子の耳に届く。

その日、尾形を最初に玲子の純潔は複数の男子たちに無残にも蹂躙されるのだった。

全てが終わった後、放心状態の玲子は服を着させられ中庭に放置されていた。

最終下校のチャイムがまるでこの世の終わりを報せる鐘のように響き渡る。

誰にも晒したことのない自分の一番深い場所に蠢く違和感。

この日、玲子は生まれて初めて死にたいという感情が湧き上がる。

夕闇が古びた校舎と玲子を飲み込んでいった。

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