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月子の場合  作者: ヒスイ
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岡慶太の場合①

「おい!とっとと開けろや!聞こえてんだろ!」


叫び声は虚しく暗闇に吸い込まれる。


この部屋に監禁されてから何日経った?

真っ暗で何も見えない、聞こえない部屋に監禁されてしばらくはドアを蹴破ろうとしたり助けを呼ぶふりをしてみたりしたが誰も来ない。

暗闇も少し経てば目が慣れると思ったがいっこうに慣れる気配もない。

外部からの音は何も聞こえず、食事も与えられないまま時間感覚が麻痺してきた。

どうしてこうなっちまったんだ。


その日も俺はいつも通り風俗街で客を装い、女を高額な給料で釣って中国人の売人に売りさばくための品定めをしていた。

一人売るだけで年齢にもよるが何百万とかいう大金が受け取れ、仮にヤクザに目を付けられたとしても売人たちのルートで海外に逃げれるお墨付きだ。

売られた女がどうなるかは知ったこっちゃないがどこぞの富豪のペットにされたり、売春婦にされたり、待遇が良ければ現地で結婚もできるらしい。俺にとってはどうでもいいことだが。

それよりも、売られる前の数日間は俺の好きにできるのがよかった。数日の間だが俺は俺好みの女とヤリまくれる。

天職を見つけたと思った。その日が来るまでは。


大通りを外れ、路地裏にひしめく店からテキトーにピックアップして入店。その時間に在籍している一番見た目が良い女を指名し、呼ばれてから室内に入るが女はどこにもいない。

数分待っていると乱暴にドアが開けられヤクザらしき男が数人入ってきて俺を取り囲む。懐に忍ばせたナイフで威嚇するがそれも虚しく、気づけば地面に転がされ袋叩きに遭い、気づいたらこの部屋だった。

意識を失った間に衣服や持ち物は剝ぎ取られたようだ。

もう一生この部屋から出れず、ここで野垂れ死ぬのかもしれない。


そう思って何日経過しただろうか。足音と共にドアが勢いよく開かれる。

急な光で目が開けられないし、身体も動かない。


「岡先輩~、お久しぶりです~。早く私の顔、見てほしいなあ。」


聞き覚えのある声、記憶を辿り、思い出した。

俺が地元で売春グループの元締めをしていた頃の女、上客に怪我をさせた腹いせに家を燃やしてやった女、天野月子だ。

あの火事で生き延びたとは聞いていたがなぜここに?


「ねえ、早く目を開けてって言ってますよね?」


「ぐぁっ!」


顔に堅い物がぶつかる衝撃が走り、口の中に血の味が広がる。

眩しさに耐えて目を開けると、そこには当時とまるで変わっていない天野月子が満面の笑みで立っていた。


「やっと目を開けてくれた。寂しかったでしょう?この部屋は光も音も通さないから、長い間監禁しておくと発狂しちゃう人もいるらしいんですって。先輩が発狂して廃人になってなくてよかったです。」


顔面の痛みに耐えながら這って天野月子の足首を掴む。


「お、おま、おまえが、俺を、ここ、に…ぐふっ!」


もう一度顔面に衝撃が走る。予想はしていたがその通り、革靴で蹴られていた。


「汚い手で触らないでもらえますか?あ、そろそろ時間だ。じゃあ、また後程です。」


天野月子は俺の手を蹴りほどき、ひらひらと手を振りながら部屋を出ていき代わりに男が二人入ってきて俺を抱え、注射器で正体不明の薬物を体内に注入された。

そして奴らは俺を鉄格子で囲われた檻に投げ入れ施錠する。

檻はキャスターでも付いているのかそのまま滑るように動き出し、殺風景な廊下を通過した突き当たりの部屋に入った。

そこには数人の女といかつい顔をした男が一人、全員がぎらついた目で俺を睨んでいる。

女の顔を一人ずつ見ると過去に俺が売りさばいた女たちと天野月子だった。男の方は知らないがヤクザなのは見て分かった。


「紹介はしなくてもいいですよね?この女性たちはあなたに売られた女性たちです。それぞれがつらい目に遭ったそうで、耐えかねた私がある人に頼んで彼女たちを買い戻してくれました。みんな、先輩に会いたくてうずうずしているみたいで…。ほら、みんな、手に持ったものを見せてあげて?」


天野月子がそう呼びかけると女ども全員が刃物や鈍器を掲げる。


「一応、一人一発ずつって決めてるんです。みんなには本当に申し訳ないけど死なれたら困るので仕方ないですね、残念でなりません…。」


「てめえらこの檻の中に入ってきた瞬間、ぶん殴ってやるから覚悟しろや!!!治療費と不細工になった顔面の整形費用でも心配してやがれクソ売女どもが!!!、れ、あ、あ、あ、は…?」


急に力が抜け、世界が回りだす。

口は半開きのまま涎は垂れ流し、いつの間にか小便も漏れていた。

なにがどうなってる?


「効いてきましたか、神経毒。これもとある人に作ってもらったんです。苦労したんですって、身体の動きだけを麻痺させて痛覚を残すのに。…それじゃあ始めましょうか。哀れな雄猿さんの愉快で痛快で残酷で惨めでどうしようもない拷問ショーを。」


天野月子の歪んだ笑みとどす黒い眼差しが俺を捉えて離さなかった。

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