山田陸人の場合・終
月子が部屋を出ていくと入れ替わりに防護服を着た男が数人入ってきた、といっても顔まで隠れているので性別は分からないが仕草や体格からして男だと直感する。
吐瀉物塗れの僕に何度も乱暴に水をかけて汚れを落としていく。
床の清掃も終わり、傷口の状態を確認したところで男たちは頷き合い、拘束されている両足部分を動かす。
大股開きに開脚させられ、まるで出産前の妊婦が分娩台の上に乗ったようなポーズだ。
両足を動かされたとき、麻酔が弱まっているのか股間に鈍い痛みが走りだした。同時に傷口が開いたのか生暖かい血が滴る感触までしてきた。
男たちが出ていくと室内が静寂で満たされる。
しかし、僕の股間は痛みと流血でどれだけ冷静さを取り戻そうとしても無駄だった。
どれだけ時間が経っただろう、ドアが開くと月子が満面の笑みで戻って来る。
手には先端がオレンジ色に発光した黒い棒がミトンで握りしめられている。
「お待たせ~!生きてるよね?死なれちゃ困るよ~?」
まるで恋人同士の待ち合わせのような愛嬌のある笑顔が僕に向けられるが目は一切笑っていなかった。
そして月子が近付いてくるたびに彼女が持っている黒い棒の正体が分かる。
「あ、これ?やっぱり気になる?ロビーに戻ったらちょうど暖炉で見つけたの、火かき棒!」
顔の間近まで差し出されると熱気で火傷しそうになり顔を背ける。
まさかこれで全身を焼かれるのでは…
「私の復讐は終わったんだけどさ、まだ心の復讐が残ってるでしょ?あの子、あなたにレイプされてからしばらく男性恐怖症になってさ。外出も私がいないとできなかったし、夜になると思い出してよく泣いてたんだよなあ。だからあなたが心にしたことを私がして、耐えてくれたらここから出してあげるし救急車も呼んであげる。だから頑張ってね?」
どういうことだ?混乱している僕を尻目に月子はゆっくり下半身側に移動する。
やっと悟った。この焼けた棒を僕の中に…。
「力入れたら入りにくくなるから痛いよ?力抜いてもっとリラックスして?」
月子はどこまでも目が笑っていない笑顔を崩さない。
そしてついに焼けた棒が僕の肛門を突き刺す。
「がっ!?…ぐ、ぐ、ぐああああああああああッ!!!」
喉から出したことのない叫びが部屋のタイルに取り込まれていく。
苦痛に歪み僕の顔を見た月子がはじめて満面の笑みを見せる。
「痛い?苦しい?つらい?でもね、心の味わった痛みはこんなもんじゃないんだよ。」
勢いよく引かれた棒には僕の内部の肉がこびりついている。周囲には排泄物と肉が焼ける混じった臭いが充満する。
「私が満足するまで死なないでね?」
それが僕が意識を保っていられるうちに聞いた月子からの最後の言葉だった。
その後、何度も抜き差しされる焼けた棒の苦痛に耐えかねた僕は目覚めることのない眠りに誘われる。
視界の隅にいる月子は最後まで美しい天使のような顔で悪魔のような所業を繰り返していた。
そして冒頭へ




