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月子の場合  作者: ヒスイ
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天野玲子の場合④

放課後、玲子は件の旧校舎中庭に呼び出されていた。

呼び出してきた相手は尾形と三田だ。

中庭に行くとその二人と取り巻きの友人が男女二人ずつが先に着いており、到着した玲子を取り囲んだ。

先に口を開いたのは三田。


「あんた、なんで呼び出されたかわかってる?」


玲子はすぐに昨日のことだと理解したため答える。


「昨日のことだよね…?」


尾形の方を見ると、彼は軽くため息を吐き三田に続けた。


「天野さぁ、俺はお前の為を思って告白してやったんだよ。お前の親父、市役所の職員だろ?俺の親父に頼んだらもっといい立場になれるのにもったいないことしたよなぁ。どうする?別にお前の親父を辞めさすことくらい出来るけど。」


尾形の父親は市長だ。

確かに彼がもし市長である父親に頼めば玲子の父親を閑職に追いやることくらい簡単なのかも知れない。

稚拙な脅迫ではあるが父親や家庭に危害が及ぶことが玲子には耐えられなかった。


「わ、私はどうしたらいいの?」


冷や汗をかきながら玲子は尾形に問いかける。


「んー、とりあえず土下座してくれる?尾形様の有り難い告白を無下にしてすみませんでしたって言いながらさ。」


それくらいで許されるなら、と思うが恐怖なのか緊張なのか体が思うように動かない。

そんな彼女のもとに苛ついた様子で三田が歩み寄ってきて胸ぐらを掴み、地面に体を押し付けようとした。


「てめぇ!達也の顔に泥塗っておいて躊躇してんじゃねぇよ!とっととしろよ!」


乱暴な言葉と力で玲子の体は地を這うような姿勢になる。

逃げられないことを自覚した玲子は意を決して土下座の体勢を取る。


「こ、この度は尾形様の有り難い、告白を、私ごときが断ってしまい…本当に申し訳ありませんでした…。」


屈辱というのは正にこういう感情なのだろうか。

彼女は自分の中で溢れそうになる感情と涙を必死に堪えながら額が地面に付くように頭を下げる。

周囲からは携帯電話のシャッター音が鳴り響く。

地面しか見えていない玲子の頭に硬い物が押し付けられる衝撃が走った。


「これからは尾形様の言う事に対して反抗しません、ほら言ってみろよ。」


頭に勢いよく押し付けられたのが靴だというのがすぐに分かった。

感情を押し殺し、声を絞り出す。


「これからは尾形様の言う事に反抗しません。」


周りから嘲笑とシャッター音が鳴り止まない。

泣いたらだめだ、こいつらを喜ばすことになってしまう。

玲子の拳の中に爪が突き刺さる。


「じゃあ最初の命令。服脱いでもう一回土下座しろ。」


尾形の言葉に頭が真っ白になる。

女子生徒ばかりならまだしも男子生徒も複数名いる前で服を脱げなんて…。


「できねえの?じゃあお前の親父、クビにしてもらうから。」


「や、やります!脱ぎます!だからそれは…あぐっ!!」


咄嗟に顔を上げた玲子の頬を三田が蹴った。


「誰が顔を上げていいなんて言ったのよ。はいかいいえか答えろよ。」


焼けるような痛みを頬に感じながら玲子は言葉を捻り出す。


「わかりました、ぬ、脱ぎます…。」


男子からは歓声が、女子からは侮蔑の声が上がる。


「じゃあ立っていいぞ。とっとと脱げ。」 


尾形の言葉に従って立ち上がり、玲子はブレザーを脱ぎベンチに置く。

カッターシャツのボタンを外す指が震える。

早くしないとまた殴られる、そう思い玲子は懸命にカッターシャツのボタンを全て外した。

そしてゆっくりとシャツを脱いでいく。

少し肌寒い外気が肌に刺さる。

男子は生唾をのみ込み、獣のような目で玲子の動作を監視している。

シャツを脱ぐと下着に包まれた玲子の胸部が露わになる。

同級生と比べて発育が良く、それがまた男子の欲情をかき立てた。


「ほら、次はスカートも下ろせよ。」


尾形も他の男子と同様に獣の目をしながら玲子に指示を出す。

玲子はゆっくりとスカートを下ろし、下着姿となった。

携帯電話のカメラは舐めるように玲子の体を映していく。


「やればできんじゃん。そのまま土下座して、私は尾形様の奴隷です、これからも可愛がってください、って言え。」


最早、玲子に反抗の意思などなかった。

あるのは屈辱と恥辱に塗れた情けない心だけだった。

静かに土下座の体勢を取り、セリフを述べる。


「私は尾形様の奴隷です。これからも可愛がってください。」


自分でも驚くように言葉が出たのは、この瞬間だけでも心を殺したからだろうと玲子は思った。

そんな玲子の頭を尾形は再度踏みつけ、


「よく出来ました。明日も中庭集合な。来なかったら…分かってるよな?」


「はい…。」


玲子の返事と共に複数の足音と気配が遠退いていく。

恥辱に塗れた体勢のまま彼女はそれらが消え去るのを待ち、急いで服を着替えて家路を急いだ。

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