柳春の場合④
月子と武蔵が去った車中。
私はノートパソコンを開き、あらかたの作業を片付ける。
倉庫の中で行われる拷問ショー、月子は気に入ってくれるだろうか。
彼女のスーツに仕込んだ盗聴器から聞こえる声が楽しそうで安心する。
そして私は思い出したようにとある人物にメール打った。
『白鳥様へ 遺体は埼玉県の山中に今夜廃棄予定。野生動物が食い散らかさないうちに発見してみてはいかがでしょうか。それでは素敵な夜を。』
メールには昨日の月子の処刑後の作品の写真も添付しておいた。
数分後、返事が来る。
『柳様 ご連絡ありがとうございます。ちょうど明日は早朝に埼玉の山で登山しようと思っていたので情報提供助かります。作品、とても素晴らしいですね。彼女のこれからの活躍にも期待です。そちらこそ良き夜を。」
思った通り、いい駒だ。
これで明日の朝のニュースは決まりだろう。
ふ頭の海に浮かぶ月を眺めながら昨日の光景に思いを馳せる。
彼女は確かに狂っている。躊躇いなく人間の腹に包丁を突き立て、関節に釘を打ち込み、舌を切断してみせた。それも全て笑いながら、瞳を輝かせながら、まるでほしかったおもちゃを与えられた幼児が遊ぶように人を痛めつけ残酷に殺してみせた。
こんな人間、初めて見た私は未知に遭遇できた高揚感と彼女の無邪気な笑顔に一種のときめきを感じていた。
彼女の笑顔をもっと見たい、もっと私の知らない見たことのない景色を見せてほしい。
その想いで溢れている。
私にとって人間は利益になるかどうかの駒でしかない。実の両親も利益にならないと確信したからためらいなく殺せたし、その行動は間違っていないと経営している会社の実績が証明してくれている。
なのにどうしてだろう。月子の為なら私の全てを捧げてもいいと思えるくらいに彼女に心酔している。
私も彼女同様に飢えていたのか、だから私の知らない景色を未知を魅せてくれる彼女に尽くすと心に誓う。
盗聴器からは男女のけたたましい悲鳴が聞こえてくる。波の音と合わさり私はシートに身を委ねた。




