日野月子の場合⑫
事件が起きてから、アキラが実家にいく時は私の他に祖母か佐々木さんが必ず同行することにした。
昼間に行っているせいか父親と遭遇することはなく時間が経過していった。
秋になると無事に指定校推薦を勝ち取れた私とアキラは休日を利用して都内まで行き、不動産で二人用のアパートを見たり、大学周辺の環境を確認したり有意義に過ごす日が増えた。
日帰りは体力的につらいので、一日目は歩き回って疲れ果てたままラブホテルに転がり込み、少し眠った後に愛し合い、ご飯を食べてさらに愛し合い、抱き合って朝まで眠る。翌朝に慌ててホテルを飛び出し新幹線に乗って最寄り駅まで眠る。
それを何回か繰り返していくうちに私とアキラの目を引く物件が見つかった。
大学からは少し距離は離れてしまうが内外装ともに打ちっぱなしのコンクリートで一見すると寂しい見た目だがキッチンや浴室も設備が整っている。なにより良い点は周りの建物よりも高層階があり広いベランダから射す陽射しは室内まで届いていた。LDKの他に広い部屋も二つあり条件にぴったりで契約までこぎつけた。
地元に戻るとすぐに冬休みになり、家の周辺は雪で埋もれ駅まで行くことが億劫になった私たちは一日中家にいることが多くなった。
祖母が留守になると布団の上でアキラと愛し合う。
私は中学一年生のあの時からほとんど成長が止まっており、アキラの発育した体型が羨ましかった。
アキラはそんな私のことを普段は『ちんちくりん』とからかうが、愛し合うときはとことん褒めてくれる。
素敵だよ、綺麗だよ、月子の全部が大好きだよ、そんな言葉を聞くたびに私の胸は高鳴り彼女への愛が深まる。
私も同様に彼女へ愛を囁く。お互いがお互いの全てだった。
とあるなんでもない日に、私はアキラに将来の夢について聞いてみたことがある。
アキラはしばらく考えてから、孤児院を作りたいと答えた。自分のように家庭環境が複雑だったり親から暴力を受けたり、そのほか事情がある子供たちが売春などの犯罪行為に手を染めることがなく幸せに暮らせる安全地帯を作ってあげたい、そう語る彼女の瞳は一切の濁りがなく澄んでいた。
「私が世話人をやるから月子は子供たちに勉強を教えてあげてよ。私なんかよりずっと頭がいいし教えるのも上手そうなんだから。」
私は反応に困った。
私の将来は簡単に言えば人殺しだ。
私の家族を殺した奴らを殺して回るのが私の将来の夢だ。
きっと何人も殺すだろうし、殺せなくても警察に捕まれば塀の中なのだ。(出所し次第殺すが)
そんな私が彼女の夢の中に居ていいのだろうか。と考えているとアキラは私の手を包み込む。
「大丈夫。どんなことをしても月子は月子だよ。私と一緒にこの先も生きて、私たちみたいな子供たちを救ってあげよう。」
アキラのまっすぐ過ぎる眼差しに私は頷くしかなかった。
私の穢れる未来を彼女は受け入れ、それでも一緒に歩もうとしてくれている。
そんな人はもうこの先、巡り合えないだろう。運命の人、なんて安い言葉を軽々しく使いたくないがアキラは私にとってまぎれもなく運命の人なのだ。
冬が深まると同時に雪も深まってきたある日。
朝から祖母に頼まれた雪かきを午前中いっぱい使ってこなし、二人で軽くシャワーを浴び、いつものように炬燵で寛ぐ。彼女の足が炬燵の中で私の足に絡みつく。これは二人で決めたサインの一種で、愛し合いたい、というサインなのだ。
幸い、祖母も出かけており家には二人だけ。私はこくりと頷き、先に部屋に上がる。
布団は最近敷きっぱなしなので私は部屋着を脱ぎ布団の上で待機しているとアキラが入って来る。
彼女も部屋着を脱ぎ私を押し倒した。
長い髪が私の顔にかかる。自分と同じシャンプーの匂いが心地良く、その美貌にうっとりとしているとあっという間に唇を奪われ、わずかな隙間から舌をねじ込まれる。
私の口内で暴れる舌に自分の舌を絡める。吐息と唾液の絡まる音が混じった淫らな音が部屋に響き渡る。
アキラが舌を引き抜くとどちらのか分からない唾液が糸を引く。
荒い息遣いの私を休ませることなくアキラはブラジャーのホックを外し丁寧に口と手で私の乳頭を愛撫する。同じ性別だから、何度も体を重ねているから知っている弱点を的確に突かれて私はすぐに絶頂を迎える。
私の体が小さく跳ねたことを確認したアキラは自分のブラジャーを外し、唾液で艶を帯びている私の乳頭にアキラの乳頭が擦り合わさる。
先ほどだけでも十分すぎる快楽に私はすぐに果ててしまいそうになるがアキラと一緒に果てたい気持ちで我慢する。
私より何倍も大人びていて美しいその表情が快楽に歪む様は美しさを超えて中毒性すらある。
段々とお互いの熱が上がっていき果てる直前でアキラは体を起こす。いつもの手口だが直前で止められるこの行為は私の欲情をさらに搔き立てる。
アキラは迷うことなく私のパンツを脱がし、股間に顔を埋める。
敏感なところをアキラの吐息交じりの舌に蹂躙されると私はまたしてもすぐに果てそうになるが彼女は私が果てる予兆を見抜いているようですぐに止めてはキスで時間を置いて再度責められる。
それが数度、繰り返されさすがに我慢の限界だった私は恥ずかしい言葉を使っておねだりをする。
するとようやく深い絶頂にたどり着いた。
荒い呼吸を整える間もなくアキラは私を抱き上げ、自分の股間に私の顔を近づける。すでに淫らに濡れているそれを私は宝物を愛でるように舐める。隅々まで、じっくり、丁寧に。
アキラの声に段々と余裕がなくなってくるのを感じ、指も使い責め立てる。
少しすると彼女の体が大きく跳ね、私の指の締め付けもきつくなり解放された。
私は体を起こし、アキラの顔が見える位置に寝転がる。どちらからともなく降り注ぐ濃厚なキス。
しんしんと雪が降る午後、心地良い疲れと快楽の余韻の中で私は眠りにつく。
そして、アキラが部屋を出ていったことに気づかなかった。




