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月子の場合  作者: ヒスイ
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日野月子の場合⑩

高校生になっても私たちは変わることがなかった、

強いて言えばセーラー服からブレザータイプの制服に変わったくらいだ。

売春も当然している。つい先日、二人で稼いだ額を数えてみたらとんでもない額になっており笑いが止まらなかった。

祖母にはバイトが決まったと嘘をつき、週に四日は夜遅くまで男の相手をする。休日はフル稼働だ。

クラスには相変わらず馴染めず、というより馴染もうとしなかった。

私もアキラもお互いがいればそれでよかったから。



『愛している。』

私とアキラは体を交わすたびにそう口にした。

男に何度抱かれても、何度同じ言葉をささやかれても響かなかったがアキラにささやかれるこの言葉は特別だった。

最後の客の相手を終えてから私たちはどちらかの部屋に行き、穢された身体を清め合いながら愛し合う。

シャワーを出てからすぐにベッドへなだれ込み、もっと深く激しく愛し合う。

私の発育は中学一年生のあの事件以降止まったままだったがアキラは違う。

すらりと伸びた長い手足、元々凹凸がはっきりしていた身体は女性らしい丸みも加わり誰が見ても羨むシルエットになっていた。

身長も百六十五と女子の中ではかなり高い方で学校でも時折男子生徒に告白されたり、教師から舐めるように見つめられ、時には触られたりもしている。いずれも私の怒りを買うものであるがアキラ本人がなんの気にもしていないので私は怒りの分、欲望を彼女にぶつけることで解消していた。

そんな私を見てアキラは、かわいい、と受け止めてくれる。

逆のパターンもあった。

物好きな男子が私に告白をしてきたこと、物好きな教師が私の身体に触ってきたこと。いずれも一蹴した私をアキラは私が壊れてしまうのではと思うくらい愛してくれた。

身体の一番奥で繋がれなくても愛を囁き合い、知り尽くしたお互いの身体を愛で合うことで心が結ばれる。これに勝る快楽などあるのだろうか。

穢れれば穢れるほど私たちの愛は磨かれ、結ばれていった。


月に一回の頻度、およそ月末の日に私とアキラはアキラの家に行く。

アキラの父親が無造作に置いていく生活費の一万円の回収と家の中の掃除が目的だ。

家に入ってすぐアキラはリビングに向かいテーブルの上に置いてある一万円を無表情に財布へねじ込む。

それからすぐに部屋の掃除だ。

一か月に一回の頻度なので埃は溜まるがそれ以外はいたって綺麗なもので、生活に必要な最低限の家具や家電以外は二人で業者に依頼して捨ててもらった。

私が掃除機をくまなくかけている間にアキラは浴室やトイレ、台所などの水回りを簡単に掃除する。

父親は帰っては来るものの本当にお金を置いていくだけらしくどれも使われた形跡がなかった。

空っぽの家の中、窓という窓を開けて空気を入れ替えながら掃除をする。

必要性があるのか、とアキラに尋ねたことがあった。

アキラは、売るときにそこそこの値段が付くようにしておきたいとだけ返した。

もうこの家にアキラやその両親の思い入れはなく本当に空っぽの家になっていた。

掃除が終わるとアキラはテーブルの上に親のサインが必要な書類を置き、施錠して家を出る。こうしておくと翌月にはサインが書き込まれ、一万円と一緒に回収ができるシステムなのだ。


アキラは私と祖母の家に来てから表情がとても柔らかくなった。

ただ実家にいるときは別で表情の硬さなんてものはない。無なのだ。

感情も無く、ただ自分で決めたことを決めた手順で行うだけ。

彼女の母親はどんな人なのだろう、父親はどんな人なのだろう。アキラは両親の人物像について全く語らない。だから私も聞かない。ただ、もしアキラに危害を加えるような人間であれば私は…。


私たちは高校三年生になった。

またしても同じクラスにはなれなかったがもう慣れた。

去年の秋ごろからいよいよ周囲は受験モードになっており、散々噂の種になっていた私たちの売春行為には誰も触れなくなった。噂話なんて一時の娯楽でしかないと痛感させられた。

そんな鬼気迫る生徒をよそ眼に私とアキラは表面上の成績は優秀で無遅刻無欠席なものだから内申点も高い。

二年の進路希望を含めた保護者面談でも指定校推薦は確実と言われていた。(アキラの保護者面談は佐々木さんが参加してくれた。)

だから私たちの日常に変わりはない。いつも通りに学校に行き、いつも通りに売春をし、いつも通りに帰って祖母の夕食を食べ、いつも通りに愛し合いながら眠る。

そんないつも通りがこれからも続いていく、そう疑わなかった。

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