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月子の場合  作者: ヒスイ
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山田陸人の場合

天野月子に階段から突き落とされ、その後警察の事情聴取を病室で受けた。

先に天野月子が事情聴取を受けていたこと、携帯電話内のSDカードから例の画像が見つかったことを警察に問われ認めるしかなかった。

頭部の打撲、左腕の骨折、肋骨数本のヒビ、両足首の捻挫と大腿骨のヒビ。

その痛みよりも自分がしくじったことの愚かさの方が何倍も心の痛みとして体まで蝕んでいそうだった。


最初に天野月子を見て一目惚れした。あどけなさを残しながらも凛とした顔立ち、肩で綺麗に切り揃えられた黒のボブカット、柔らかい笑顔、クラスで浮いている自分に対しても分け隔てなく接してくれる優しさ。

彼女に興味を持ち、ある日の放課後、彼女にこっそりとついて回っていると中庭で上級生と揉めているの見かけた。

なにやら渡した紙?を燃やされその後暴行を受けていたためここぞとばかりに助けた。

そこからはとんとん拍子に付き合えたし、彼女の家庭環境を知ってからは自分の家に招き入れセックスもできた。

ここで欲望をセーブできなかった。彼女の妹、天野心に手を出してしまった。そこから狂い始めた。

階段の踊り場に誘い出した時も軽く脅すつもりだったが僕は失念していた。彼女が上級生相手にも平気でカッターナイフを向けて暴れることができる人間だということを。

突き飛ばされ、スローモーションの世界の中で見た彼女の目はまるで獣のような鋭いものだった。

もっとうまくやれていれば彼女も妹も思いのままに堪能できたのに。何度も後悔したがもう遅い。事後処理は両親と弁護士がうまくやってくれるらしい。


退屈な入院生活のさなか、お見舞いに訪れた人がいた。

病室に入って来るなり驚いた。あの日、中庭で天野月子を暴行していた上級生の内の二人だった。

天野月子から情報は得ていたのですぐわかる。

男は尾形達也、市長の息子。女は三田透子、尾形の恋人。


「やっほー、山田君。怪我の具合はどう?」


軽薄な声が病室の白い床と壁に吸い込まれていく。


「あまり本調子ではないので早く帰ってほしいんですけど。」


年上に対して失礼なのは承知であえてぶっきらぼうに返すが二人は気にも留めていない。


「あんたさ、いい物持ってるって聞いたんだけど。見せてくんない?」


三田が馴れ馴れしく話しかけて来る。どれを刺しているかはすぐに見当がつく。

ベッドサイドに置いてある引き出しからSDカードを取り出してテーブルの上に置く。


「これのことですよね。残念ながらこれは明日天野月子に手渡すことになっているのであんたらには渡せませんよ。」


尾形は制服のポケットから自分の携帯電話を取り出し、少し操作した後に画面をこちらに見せる。

音声付きの動画のようでベッド上で一人の女性が複数の男に犯されている。

表情や髪が乱れていて最初はわからなかったがその人物が天野月子の姉、天野玲子ということに気づいた。


「これと交換でいいからさ、そのデータをコピーさせてくんない?天野月子に復讐したいでしょ?俺たちが手伝ってやるよ。お前はどっかに転校するんだろうけど天野月子はこれからこっちで地獄の日々を過ごしてもらう。玲子の写真と動画は俺からお前への餞別。本当なら全部セットで3万くらいで取引してるけど今回は交換だから金はいらねえ。」


尾形の言葉は半分くらいしか頭に入ってこなかった。小さな画面の中で月子の数倍大人っぽくて美人な女性が犯されている光景は思春期の男子には強すぎる麻薬のように一瞬で脳を焼いていた。

僕はそっとSDカードを差し出す。尾形はそれを受け取り別の携帯電話に差し込んでデータを移す作業に取り掛かる。三田は退屈そうに窓から外を眺めていた。

作業を終えた尾形は元のSDカードともう一枚のSDカード、三姉妹の痴態が入ったものを渡してくれた。


「ありがとね、山田君。お前の復讐も任せてよ。でも、もし裏切ったら…」


尾形が僕の前髪をグイっと掴む。目と鼻の距離で囁くように呟く。


「殺すから。」


乱暴に僕の前髪を離して彼らは病室から去っていった。

ここから先のことはもう気にしないでいよう。

僕の復讐はもう彼らの手に渡ったのだから。

その夜、交渉を明日に控えているというのに僕は事件以来久しぶりに安眠できた。

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