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月子の場合  作者: ヒスイ
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月子の場合⑥

封筒から出てきたカラーコピー写真を見て私は絶句した。

姉が下着姿で土下座させられている写真、それもまさに今この場所が写っている。

震えながら他の写真にも目を通す。

どれもこれも目をそむけたくなる写真ばかり、姉の全裸、姉が男子生徒に犯されている写真、どこかのホテルだろうか?高校生や大人に犯されている写真、そして手術台に乗せられて器具を挿入されている写真。

姉が味わった地獄がこれらに凝縮されていた。

怒りと悔しさに震えている私の嗅覚に何かが燃える匂いを捉える。

ハッとして顔を上げると、尾形が地面に落ちている姉の遺書にライターで火を点けた後だった。

踏みにじったのかぐちゃぐちゃにされた遺書が端から灰になっていく。


「あははははははははははははははははは!!これで原本削除完了!!月子ちゃんありがとうね~。で、どうよ?お姉ちゃんの遺作。もう本人はいないから援交では稼いでくれないけどそれを男子どもに売ったらまだ儲けられるからさ。月子ちゃんのお姉ちゃんは死んでも俺らにずっとお小遣いくれる天使だよ。」


怒りで頭がうまく回らない。視界がぐにゃりと曲がる。

私は無意識のうちに鞄の中にしまってある筆箱からカッターナイフを取り出し、歯をキチキチという音とともにむき出しにする。


「へえ。ガキが調子乗んなよ。松井、やっちゃっていいよ。」


「正当防衛だもんな。」


松井と呼ばれた男が一歩前に出る。

他の生徒と比べると体が二回りほど大きい。でも、今の私にはそんなこと関係なかった。

乱暴にカッターナイフを振り回しながら彼らのもとに駆け寄るが、腹部に衝撃を受けた私は軽々と吹き飛ばされる。

仰向けに倒れた私はその衝撃でカッターナイフと写真を手放してしまった。

写真はこいつらを警察に突き出す証拠になる、急いで回収しようとしたが先ほどの松井という男が私にのしかかり動きが止められる。


「尾形の言う通り、かわいい顔してんじゃん。俺が一番乗りでいいの?」


「守ってくれたし一番でいいぞ。姉の処女は俺がもらったしね。」


その言葉に松井の顔が一気に歪む。

私は心底ぞっとしたが言葉が出ない。まだ鈍く残る腹部の痛みとのしかかられている重み、そして恐怖が私の声帯を締め上げて呼吸音しか発することができない。


「月子ちゃんはどんな声で鳴いてくれるかなあ?」


松井が私の制服に手をかけようとしたその時、


「火事だあああああ!!中庭で家事です!!誰か先生を呼んでください!!」


聞き覚えのある声が叫んでくれた。


「ちっ。写真だけ回収して逃げるぞ!」


尾形の声に従って私の上に乗っていた松井が写真を回収。

その後、ほかのメンバーと一緒に蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

逃げる彼らを見送る視界の中に燃え尽きた姉の遺書が映る。

誰かがそれに水をかけて鎮火した。


「大丈夫!?」


聞き覚えのある優しい声が耳に響く。

顔を上げると山田君が心配そうに私を見下ろしていた。


「山田君が叫んでくれたの?」


「うん。天野さん、教室から出ていく時、様子がおかしかったからしばらく探したんだ。そしたらここで三年生に囲まれてて…。立てる?」


手を差し伸べてくれる。

まるで女の子のように綺麗な手だ。私はお言葉に甘えてその手を握り立ち上がる。

蹴られた腹部がまだ痛むがそれ以外は擦り傷程度なので安心した。

帰ってから両親を心配させるわけにはいかない。

制服の汚れを払っていると山田君が何か言いたそうにこちらをちらちら見てくる。


「聞きたいことあるなら聞いていいよ。」


そう伝えると遠慮がちに口を開く。


「さっきの人たちってお姉さんの、その、自殺と関係あるの?」


「うん。燃やされちゃったけど姉の遺書に二人の名前が書いてあった。連れてきてた人たちも関係者だと思う。」


「警察には言ったの?」


「両親が事情聴取を何度か受けてるし遺書の現物も警察にコピーしてもらってるよ。今日はあの人たちに遺書が見たいって言われたから持ってきたの。姉の遺品があるって言われたし、何より姉の自殺の真相について知りたかったから。」


「そっか。色々聞いてごめんね。一人だと危ないし途中まで送るよ。」


そう言ってくれた彼は心配そうに私を見ながらも、安心させてくれるように微笑んでいた。

正直、帰る途中で襲撃されても怖いので頷き、彼に途中まで送ってもらうことにした。

帰り道は特に他愛もない話をしていたが不意に私の手を握ってくれた彼の手の優しさに心が温かくなるのを感じた。

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