外道たちの場合
放課後、夕日の差す教室に集まったのは五人の男女。
市長の息子、尾形達也。
その恋人、三田透子。
大西病院の院長の息子、大西賢吾。
この地区の不良グループに所属しており売春の元締め、中野美咲。
管轄の警察署副署長の息子、松井正義。
全員が神妙な面持ちだ。
呼びかけたのは松井からで、父親から玲子の遺した遺書について事情を尋ねられたためだ。
松井自身も遺書の内容については詳しく聞かされていなかったが、玲子が無理やり売春させられていたこと、それを主導したのが尾形と三田であると書かれていたようだ。
重い空気の中、教室の扉が乱暴に開かれる。
「悪い、遅れた。」
ぶっきらぼうな言葉とともに入ってきたのは市内の高校の制服を着て、無造作に伸びた髪の毛を金髪に染めた男。
現在、高校二年生であり中野の彼氏、そして売春の斡旋をしていた岡慶太だ。
中野は主に中高年の男性に、岡は自分の属する不良グループや高校の卒業生に向けて売春の斡旋をしていた二大主犯格である。
最初は校内でのみ性暴力の被害に遭っていた玲子であったが、玲子を犯すことに飽きた尾形は中野と、中野を通じて岡を紹介してもらい二人に玲子の売春計画を持ち掛けた。
岡も玲子の容姿を見てすぐに気に入り自分で味わった後、無理やり売春をさせていた。
中野が斡旋した分の四割は三田に、六割は中野の懐に入っていた。
尾形と岡も同様の配分で金銭を受け取っていた。
「で、やっぱやばいの?」
机の上に座った岡が尾形に向けて言葉を投げかける。
制服からはほんのりタバコの匂いがしている。
「玲子の遺書に名前が書かれてたのは尾形と三田だけみたいですよ。ただ、未成年の売春ともなると警察も詳しく捜査するかもです。」
松井が答える。
続けて尾形が
「うちも昨日父親からその情報は聞きました。根も葉もないでたらめだ、と否定しておきましたしもみ消しはできるかもしれません。ただ、条件としては玲子の遺書を手に入れて完璧にこの世から消すことが重要ですね。」
と話すと一同は少し肩の力が抜けた。
「あの女の遺書は妹に探させるように言ったんでしょ?」
「もちろん。近いうちに持ってくると思う。それが手に入ったらこっちで処分すればいい。松井の父親には警察が持ってる遺書のコピーやデータを処分するようにうちの親父から圧力をかけてもらう。」
中野の疑問に尾形が答える。
彼ら、彼らの親は将来がかかっている身。
この問題が世間に明るみになる前になんとか収拾を着けなければならない。
「うちの病院はもとから玲子の堕胎の記録を取ってないから安心してね。中野さんと岡先輩はお得意様だからこれからもよろしく。」
大西がにやにやしながら二人を見つめる。
売春をさせられているのは玲子だけではないのだろう。
望んでする者もいれば、望まずする者もいる。この二人はそんな中高生たちの支配者層なのだ。
大西病院の医者は院長を筆頭に何人かの職員が二人から賄賂として金銭や少女そのものを受け取っている。
「ふんっ。これからもよろしくお願いしますよ、院長のご子息さん。で、その玲子の妹ってのはどうなんだよ。」
岡の顔がいやらしく歪む。
「玲子とは違うタイプだけどそこそこに顔はよかったですよ。ただ、勘が鋭そうなのと気が強いですね。ちょっと厄介かも。」
「そういう女を屈服させるのが好きで疼いてるくせによ。」
尾形と岡が笑いあう。
三田の不機嫌そうな態度を見て尾形は抱き寄せ口づけをする。
三田は尾形が自分を愛してくれていると確信して幸せを享受する。
隠ぺい、汚職、売春。
子どもたちの狂気と大人の欲望が渦巻く教室はまるでこの世の汚物を集めたような空間。
そこに射し込む斜陽が薄暗く真実を隠すように彼らを照らしていた。




