タイムリミット
薄々、気づいていることがある。まなは日記の通りに現れている。日記はまなが死んだあの日、そこで途絶えている。つまり、そこから先は………
おそらくまなが現れることはなくなるだろう。
そう、もうタイムリミットは近いんだ。残された時間はもう沢山はない。
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「水族館、楽しかったねー。」
「そうだな、楽しかった」
「エイ、めっちゃでかかった。」
「それ、前回も言ってたな。」
「そうだっけ?最近なのに全然覚えてないや。」
そんな他愛もないことを話していると、まなの体が透け始めた。
「おっと、そろそろ時間かな。」
「そうだな……また明日」
「うん!またあしたね!」
また明日、おろらくもうあと数回しか言えないのだろう。そもそも、今言えている事が奇跡に近い。
「帰るか、」
1年前、2人で帰った道を、俺は1人で歩いた。
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「ついに、ついに勝ったぞ!!」
「おお、負けちゃった。」
どうやら、先輩がついにまなの連勝記録を破ったらしい。
「これで324敗1勝だ!!」
「じゅんたくん、まなちゃんついに負けちゃったね、」
「そうだな、というか先輩相手に今まで負け無しだったのすごすぎだろ。」
これは余談だが、渡辺さんがいつの間にか俺の事をじゅんたくんと呼ぶようになっていた。
理由を聞いてみると、
「だ、だって、まなさんがじゅんたって呼んでたし………」
などと理由になっていないことを言っていた。
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先輩が先に帰り、じゅんたくんもトイレへと席を立ったあと、私とまなさんだけが部屋に残った。
「ねえ、渡辺さん」
「は、はい!なに?」
いきなり話しかけられて少しびっくりする。
「渡辺さんってさ、じゅんたのこと好きでしょ?」
ドキッとした
「え?!えー、あー」
「隠さなくていいんだよ?気づいてるから。」
「えっと、まあ…………うん。私、じゅんたくんのことが好き、、、かな。」
「私も。」
「え?」
「私もじゅんたのことが好き。ずっと前から。」
まなさんはいつにもまして真面目な顔をしていた。
「私たち、ライバルだねって、言いたいところだけど、、、私もう死んじゃってるんだよね。」
「……………」
「つまり、何が言いたいのかって言うとさ、じゅんたのやつ、結構私がいなくなって悲しんでたと思うのよ。てか!悲しんでなかったらさすがに泣く。」
「悲しんでましたよ。すごく」
まなさんは少し目を見開いた
「そ、そっか、へへ…………ま、まあ!とにかく、それでじゅんたは悲しむと思うの、私が消えたあと。もう多分、少ししか時間残ってないんだよ。悲しいけどね、」
少しためてから口を開く
「だからね、じゅんたのこと、よろしくね」




