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 家に帰ると、パソコンの電源を付けた。霊について調べるためだ。検索エンジンをつけると、「霊について」と調べた。すると、かなりたくさんヒットしたので色々と知ることができた。


 霊については科学的には何も判明していないが、検証によって判明していることがある。霊には行動できる範囲があってそれは霊によるらしい。どうやら霊は一度発生すると、一か月間は同じ条件で出現するようになり、その間に自分の未練を達成できればそのまま消える。できなければ……


「悪霊になる?」


 悪霊、といっても自我がある存在というわけではなく、一日でできるだけ人を呪った後消えるという。呪われた人はというと、その人が死んだとき未練があると霊になるようになるらしい。


(そんな仕組みだったのか…)


「ご飯よー」という母さんの声で俺の調べ物は中断された。下の階から香ってくるいい匂いで、純太は自分が空腹であるということに気づいた。


 そうしていつものように学校に登校すると、自分の席に着く。今日はいつもと違うことがひとつ、彼女が話しかけてきたことだ。


「やあやあ、園田くん!今日放課後忘れんなよ?」


「あ、ああ。忘れないよ。」


 周りの生徒から見られているということがわかる。そりゃそうだ。クラスの人気者が今の今まで話してもいなかったクラスのハブれ物に話しかけたのだから。

 注目を浴びるのはあまり好きではない。居心地の悪さに少し縮こまった。


「じゃあ、後でね!」


 言うだけ言って彼女は行ってしまった。もちろんその様子は晃大も見ていたようで、


「お前って渡辺唯と仲が良かったのか?」


 なんて聞いてきた。

 渡辺唯(わたなべゆい)って言うのか…ここで彼女の名前を初めて知った。


「昨日知り合っただけだよ。」


「そうなのか?」


「ああ。」


 晃大はまだ質問してくる。


「どこで?」


「図書室。」


「どんなきっかけで?」


「なんでもいいだろ!」


 晃大はニヤニヤしながら続けた。


「まあ気持ちはわかるぜ?渡辺さん。かわいいもんな?」


 なんてしつこいのだろう。こういう質問は、楽しいのはしている側だけで、されている側は苦痛でしかないというのに。


「そんなんじゃねえよ。」


 思えば、晃大とこんなに会話が続いたのは久しぶりだった。苦手に思っていた晃大と昔のように喋れている。やはり渡辺さんに彼女のことを重ねてしまっているのだ。そのせいで、昔に戻ったような感覚に陥っている。


 その日の歴史の授業。タイムリーな話題が授業であがった。


「えー、江戸時代の頃の職業についてだが、百姓、武士、町人などがあげられるが、陰陽師なんてものもいたんだ。この頃から霊なんかが発生するようになり、陰陽師は武士についで多なった。霊を成仏させる仕事をしていたんだ。」


(成仏させる仕事か、ということは霊の未練を叶える仕事ってわけだな。)


「だが、明治3年に出された天社神道廃止令によって陰陽師という仕事は無くなることになる。これが今の時代、陰陽師がいない理由だな。」


 先生が霊についてふれたのはこの話だけだったが、なかなか面白い話だった。


 その後の授業が全て終わって放課後になり、約束どうりに図書室へ向かう。そうして席に着くと、彼女を待つ。読書をして待っていると、彼女は約束の時間に6分遅れてやってきた。


「ごめんごめん。先生に捕まっちゃってさ。」


「いいよ、それよりも霊だ。」


「そうだね。」


 昨日調べた情報を共有し、霊が発生する条件についていろいろと実験してみることにした。前回発生したのは、渡辺が【月夜の君へ】という本に3時35分頃に触れた。という条件だった。


 調べるのは、本に触れる人が違くてもいいのか、人が触れる本が違くてもいいのか、時間がズレてもいいのか、だ。


「じゃあまず、時間からだな。」


「うん3時50分にあの本に触れればいいんだよね。」


「ああ。」


 まだ時間が少しあったため、本を読んで時間を潰すことにした。


「そういえば、園田くんってどうしてあの時図書室にいたの?」


「あー、図書委員の仕事を押付けられていたんだ。」


 渡辺は同情するような目をした。


「うへー、そりゃ災難だね。」


「そういう君はどうしてあの時図書室に?」


「私?私はねー、本が好きなんだよ。意外でしょ?」


 確かに意外だ。これは偏見だが、クラスの中心にいるような人物は読書を毛嫌いしているものとばかり思っていた。

 時間を確認するために時計を見る。少し話し込んでしまったようだ。渡辺と話すのにもかなり慣れてきた。時計の針は3時53分を指していた。


「じゃあ始めるか。」


「そうだね!」


 そう言うと渡辺は立ち上がり、本棚の方へ向かった。そうして【月夜の君へ】に手を伸ばす。手が本に触れた瞬間、前回と同じくそこから強い光が発せられた。


「あれ?ここは?」


 目の前に現れた女の人、佐藤が辺りを見渡して言った。どうやら、彼女が出現する条件に時間は無いようだ。

 佐藤さんに対しコミュニケーションを試みる。


「ごほん!あのー佐藤さん。で合ってる?」


 いきなり呼ばれた佐藤は少しびっくりした様子を見せた後、おどおどしながら、


「え、えっと、はい…合ってます。あの、私はなんでここに?さっきまで病院で、いきなりここへ来たと思ったら扉の前からいきなり本棚に戻されるし……。」


 さっきまで扉の前?霊が発生して消えてからまた発生するまでのタイムラグが霊には無いのか?それに自分が死んだことがわかっていないのか?いろいろ聞いてみる必要がありそうだ。

 だが、死んでいるということがわかっていないかもしれない以上、なかなかあなたはもう死んでいますよ。なんて言うのははばかられる。


(どうしたもんかな……)


 純太は久しぶりの人に気を使うコミュニケーションに苦戦するのだった。


















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