体育祭
「好きです!付き合ってください!」
「え、えっと、ごめん。」
「そう、ですか……」
そう言うと彼女は寂しそうにその場を後にした。
最近純太は告白されることが増えていた。自分自身、どうしてこうなったかは分からないが、とにかく増えたのだ。
モテ期到来、と喜んでいる場合でもない。もちろん、好きになってくれて嬉しいのだが、こうも多いと精神的に参ってしまう。告白される側というのも緊張するものだ。まあ、贅沢な悩みがしれないが……
「いいじゃないか、モテないよりはいいことだと思うけどね。」
「それはそうかもしれませんけど……そもそも、倉本先輩って告白とかされないんですか?」
こういう質問をしても倉本先輩は顔色ひとつ変えずに言う。
「私のような人間に、告白しようなんて思う勇敢な者がこの学校にいると思う?」
「…………いませんね。」
「そうだよ。いないのだよ。」
少し意外だ。性格には難があるが、ルックスはいいのでモテるものだと思っていた。
「まあだから、モテる君の気持ちなんて知らないから私の言葉を真に受けない方がいい。」
少し嫌味っぽく言われた。
「初めて、君に何かで負けたような気がするよ。」
「こんなことで勝ってもあまり嬉しくないですね。」
「まあ、意図しないモテるモテないというものに実力は伴わないからね。」
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最近、園田くんがモテるという噂を耳にする。まあ友達が少ないから勝手に聞き耳を立てただけだが、
園田くんは誰かの告白をOKしたのだろうか?
最近は何故かそれが気になって仕方ない。だがこのモヤモヤを解決する方法はわかっている。本人に直接聞いてみることだ。そうすればきっとこの変な気持ちも無くなるだろう。
だが、ずっとそれが出来ないでいる。園田くんを前にすると何故か調子が狂ってしまう。
「はあ、」
唯は教室で1人頭を悩ませていた。
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そうこうしているうちにも時間は流れてゆき、もう体育祭当日を迎えていた。
最初は嫌々だったものの、仕事をこなしていくうちに今回の体育祭を成功させたいという気持ちが強くなっていき、朝から純太は気合いが入っていた。
とは言ったものの、もうこんな仕事来年はまっぴらだが……
開会式、午前の部、午後の部と順調に進んでいき、結果的に言うと、体育祭は成功に終わった。
全体的な進行を見ると、だが。
体育祭がちゃんと問題なく終わったのは良かった。しかし、問題があったのは自分の運動神経の方だった。
実行委員の仕事のことで頭がいっぱいだった純太は練習を疎かにしていた。個人競技である障害物競走では見事ワースト1位、前の人とかなりの差をつけられた。クラスリレーではバトンを落とすというミスを犯した。
まあ、散々だったわけだ。
唯一の心の救いは、終わった後に毎回渡辺さんがナイスファイトと言ってくれたこと、それ以外の人から色々な意味で恨みのこもった視線を向けられたが……
俺たちのクラスリレーが終わったあと、しばらくして3年のクラスリレーが始まった。倉本先輩はどこを走るのかと思って見てみると案の定、男子達を差し置いてアンカー。
さらに最下位でバトンを渡されたにも関わらず、最後は1位でフィニッシュしていた。
相変わらずの完璧超人ぶりにもう驚きすらしなくなってきている。
そしてわかったことが1つ、渡辺さんは俺が思っていた数十倍運動能力が高かった。勝手に仲間だと思い込んでいた俺からするとかなりショックな事実だ。渡辺が活躍していると毎回鈴木が嫌味ったらしい目でそちらを見ていたのを知っていたが、今回は鈴木も体育祭に勝ちたいという気持ちが強かったのか、素直にその活躍を喜んでいた。
そんな感じで、閉会式を迎え、長い時間をかけて準備した今回の体育祭は、あっけなく幕を閉じた。




