①キツネの会議
【キツネのムー】(1)
(①キツネの会議)
そよそよと風が吹く、林の中で今日もキツネのムーは仲良しさんたちと追いかけっこ。
「へへん、ぼくに追いつけるかい〜?ヤァナ、早く早く〜!」
ヤァナも必死で走ってムーに追いつこうとしています。
「まって、ムー!」
「そうだよ、ムーはいっつも早すぎるよー!」
テオも息を切らしています。
「ムー、きゅうけいしようよー!」
「ムー、こうさん!」
二匹のキツネ(ヤァナとテオ)は口ぐちにそう言いました。
ムーはしょうがないなという顔で立ち止まりました。
「あの山ぶどうの木の下で休もう」
ムーはそう言ってみんなをいつもの山ぶどうの木の下の『三匹のキツネの会議のへや』でまちました。ヤァナとテオはヘトヘトで口もきけないほどでした。
「みんな、もっと早く走れないといけないよ!ぼくの父ちゃんと母ちゃんもそう言うと思うよ!」
それをきいた二匹はそれぞれ、反論しました。
「わたし、そんなに走れたってちっともえらくなんかないと思う!ムー、あなた、えばったりしちゃいけないのよ?テオもそう思うでしょ!」
と、ヤァナ。テオは困った顔で、
「えっと……ボクは、それより、二人が言いあらそわずに、平和でいてくれたら一番だなあ」
テオは三匹の中で一番大人ではありましたが、気が弱いキツネでした。
ムーは呆れて、
「ここは会議の部屋だぞ!」
と言ったっきり、ねころんでしまいました。いやいや、ムーもねころんでますよ!
「ムーもテオもむちゃくちゃだよ〜」
ヤァナはそう言って呆れながら笑いだしました。それを見たムーとテオは二匹顔を見合わせてから、ぷぷぷっと笑い出しました。
「もう、会議はおわりだね」
「ね」
「なんでヤァナ、笑うのー」
でも、なんでだか、そう言ったムーも、もっと笑けてきたのでした。
(①キツネの会議)
おわり。