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イルカなみの勇気

 ジャズとか好きな割に素直な僕だ。他人から言われたことによって、その日の気持ちをコントロールされてしまう。マインドコントロール受けたい。どこかでそう思っているのかもしれない。現状を直すつもりも生まれない。芯を持たず昔からふにゃふにゃしていた。飛ぶ龍をみていた。

「ぎゃ~~~~、奪ってぇ゛~~~~~!」

 オタク女の咆哮が村にこだましていた。メスカリンでアリーナライブの夢をみていたんだ。彼女は(スーパー)地方勢。街灯がない分星はきれいなんだけどね。彼女の感情はクソでかと言うに値する、この村において希有な存在だった。

 それは同じ星の下に起こった出来事であり、イルカの尻尾をスーパーに売りだす勇気、買う勇気であった。ヨシフ・チャーチルが支給品の自動小銃を携え、三段式ラクダの鞍に乗っかって背を向け戦地へ行ってしまうそのときを、三時間前の白んだ夜の空に理解したつもりだった。ただそれは深夜テンションが助けた部分もあっただけだった。線のきめ細かい幼虫が、中身をさらけ出し、そしてキレイに収納するというシーケンスを保ちながら、キュウリ畑の葉のうえを這っていた。隣にいた兄は言った。「あっバグっとる」。博多駅に漂う変温動物ショップのにおい。爬虫類たちのにおい。あるいは単に糞尿のにおい。愛知は単に臭い。ヨシフ・チャーチルと出くわしたのは赤レンガ倉庫の裏の川のほとりだった。彼はゆっくりと腰を掛け、祖国に残してきた奥さんのことを話してくれた。笑みを崩さないよう決して会いたいとは言わず、言葉を変えて暗にそう言っていた。僕は彼に大事なことを伝えた。

「ヨシフさん。ヨシフさん。川が流れていますね。」

「This World is not Conclusion.

A Species stands beyond ─

Invisible, as Music ─

But positive, as Sound ─

It beckons, and it baffles ─

Philosophy ─ don’t know ─

……*cough*, *cough*.」

「概ねそういうことですね。ラクダも揃って早く帰った方がいい。風邪ですよ。」

「Open sesame.」

 彼は三日後に発つそうだった。

 あとは村のオタクだ。メスカリンでアリーナライブの夢をみている。村へ向かおうとするが場所が分かりにくく、どうやら日本にとって非公式の領土らしかった。県に属さずに村で独立していた。属してはいなが兵庫にある山奥の村ということだった。この辺りでは、山の神様の力によって日本政府や兵庫県議会を黙らせていると信じられていた。ただ、誰も宗教を発足するだけの力は残っていなかった。野菜をつくって配るていどだった。例にもれず高齢化・過疎化が加速している。例のオタク女が歩いていた。田んぼと田んぼの間の道を歩いている。太陽の斜めった昼間だった。僕は視界がsin波形を描いていた。

「アリーナ行きたい?」

「え、行きたい。」

「行こうよ。」

「うん。今すぐ。」

 全員救われた。

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