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転生し自分の娘となった元英雄  作者: 夜桜 迷移
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 誕生日から1週間、早くも教育という名の何かが始まった。

 週に2回どちらかの家に集まり授業をする。

 他の人から見たら教育なんだろうけど、私にとってはただつまらないだけの時間なの。


 簡単に一日の流れを説明すると、午前中は文字の書き方は読み方、簡単な計算などのお勉強、この時間が1番苦痛、前世の記憶があるから読み書きも計算も簡単すぎて退屈なのである。


 勉強が終わったらお昼ご飯を食べ、その後は魔法の練習、これも基礎的なことしかやらないからとてもつまらないけど魔力量を増やしたりしないと行けないからちゃんとやる、一応知識量だけなら母と同じだから魔力さえどうにかなれば使える魔法は自然と増えるしね。魔法の練習は父が帰ってくるまでやる。


 父が帰ってきたらいよいよお楽しみ剣術の時間、これが一日の楽しみで仕方ない、と言っても体づくりや素振りしか今のところやらせてもらえないけど、それでも十分、身体動かすのは楽しいからね。


 日が落ちたら剣術の時間は終了、父とお風呂に入りその後夜ご飯を食べて寝る、これが最近の一日の流れである。


「こら、メアちゃん集中して」


「はい」


 で、こんな長々と説明して今何をやっているかと言うと、自然感じてます。え? 何言ってんだこいつだって? しょうがないじゃない、これが1番魔力量増やすのに手っ取り早い方法なんだもん。


 自然を感じる、要するに瞑想だよね、目を閉じて風の音を聞き、感じる、ただ違うのはひたすら体内で魔力を練るとこだね、正直この歳でやっていいことじゃない。


「メア、また乱れてきてるわよ」


「はい」


 また怒られた、器用じゃないから考え事しながら魔力を練るのは無理か、集中集中。


「ただいま、お、今日もやってるね」


「あ、パパ! おかえりなさい! 早く剣術やろ」


「メア! まだ途中よ、つまらないかもだけど逃げ出さないの」


「はーい……」


「メアちゃんまた怒られてる」


 あ、そうだマリスくんも一緒にこれをやっている、忙しいエラッタ達に変わって教えてあげてる、マリスくんも覚えが良くて、母が教えたことはすぐに出来るようになる、生まれつき天才ってやつだ、さすが英雄の子、私もだけどね。


「だってじっとするのつまらないもん、身体動かしたい! 」


「ダメだよ我慢しないと、好きなことばっかりじゃ強くなれないよ」


「むー」


 でも私は好き嫌いじゃなくて要らないことだから、別に言い訳してる訳じゃないよ、決してじっとしてられない訳じゃないからね。


「そんなかっこつけて言って、素直に言ったらどうなの、僕はメアちゃんを守りたいから強くなるってね」


 いつの間にかマリスくんの後ろに立っていたエラッタが立っていた。

 そうかー守るかー。物語に出てきそうなセリフだな


「な、ママ、いつの間に、メアちゃんも誤解だよ、そんなこと言ってないかね」


「ふふん、頑張ってるかなってちょっと様子見にね、メアちゃんも乙女だねぇ、顔赤くして」


 あ、あはは、なんだろう、顔が熱い、熱でもあるのかなぁ、将来イケメン確定なの分かってるからその言葉めっちゃ刺さる、はわわわどうしよう


「えっと……今日も綺麗な天気だね?」


「え?」


「ブハッ、メアちゃんがした、あはは、お腹痛い」


 ははは今日も空が青いな……、今すぐエラッタに魔法を打ち込みたいほど澄んだ空だ。


「ちょっとエラッタ、茶化しに来るなら何か手伝ってよね」


「はははは、ふぅ、ごめんねサリー、あ、そうだこれ、ティモンに渡しておいて、義手のメンテナンス終わったから」


「いつもありがとね、助かるわ、今度何かお礼するわ」


「いいのよ、マリスの面倒見てもらってるんだし、それに昔の仲間でしょ、そんなお礼とかなしよ」


 向こうは向こうでなんか話したるみたいだね、エラッタが母に渡したのは腕? あ、義手か、森に行った時かなり無茶してたもんね、でもエラッタがメンテナンスに1週間かけるなんて珍しい、何か新機能とか作ったりしてないだろうね。


「お待たせ、お、もう来たかありがとな、サリー、夜になったら付けてくれないか」


「ええ」


 エラッタの義手は魔法で付け外しが出来るタイプで多少強引に使っても壊れたり外れることはない、また感覚もあるらしいのでなれると本物の腕と変わらなくなるらしい、さすが最強の人形使い、リアリティを求めてるね。


 父が来たので母は家に戻り夜ご飯の準備などの家事をする、今日の夜ご飯なんだろうな、お肉だといいな。


「さてと、準備運動と少し走ったら、いつもみたいに素振りして今日は2人で打ち合ってみようか」


「おぉー」


 やった素振りだけじゃなくて今日は初めて打ち合うのか、楽しみだよ


「それじゃあしっかりと準備運動してな」


「「はい」」


 準備運動は大切だよ、子供の時とかは特に、身体が出来てないから怪我もしやすいし、その怪我で一生戦うことが出来なくなることもあるからね、大人でも突然動くのは危ないんだから子供はもっと危ない、念入りにやらないと。


 走り込みも同じで子供時からやってないと大人になってからだと遅く、体力が付きにくくなっちゃう、子供は体力付きやすいからね今のうちからやっとくのがいいだろう。


 何度も言うけど6歳児がやることではない。


「よし終わったな、それじゃあ素振りやろうか」


「「はい」」


「それでは、始め! 1、2、3……」


「「4、5、6……」」


 掛け声に合わせて木の剣を振る、これを100数えるまで続ける、少ない方らしいがかなりキツイ、終わる頃には腕が上がらなくなっている、それでもじっとして魔力練る良きかわ増し。


「56……57……」


「メア、振るのが遅くなってきてるぞ、しっかり振れ、マリス、力が入りすぎてる、もっと肩の力抜いて」


「はい、59、60! 」


 腕がぷるぷるする、剣士とかのレベルになるとこれの倍やるんでしょ、ヤバいって。


「99……100! 」


「お疲れ様、それじゃあ少し休憩をしてから打ち合ってみようか、休む前にしっかり身体ほぐしてね」


「「はい」」


 やっと終わった、ここからしばらく休憩になる、普段なら休憩後にまた素振りをするのだが、今回は初めて二人がかりでやる稽古、自由にやるのか型を決めるのかはわからないけど楽しみだよ。

 休憩中は柔軟をしてから、タオルで汗を拭いて身体を冷やさないようにする。


「お疲れ様、はい喉乾いたでしょ」


「ありがとうございます、サリーおばさん」


「ありがとうママ」


 母が冷たいお茶を持ってきてくれた、水分補給はしっかりとしないとね、脱水症状で倒れたら洒落にならない。

 休憩中はマリスくんとお喋りをする、互いに褒め合う感じの会話だけどね。


「マリスくんはやっぱり凄いね、ペース落とさないで素振り出来るなんて、私なんて後半腕が上がらなくてきついよ」


「でもメアちゃんは形が綺麗だからね、丁寧にやってる証拠だと思うよ、それに僕は強くならないと行けないから」


「やっぱり私を守るため?」


「う、うん」


 顔を赤くして可愛い、大丈夫だよ、将来は立派な騎士になるよ、でも守られるだけは嫌だな……そうだ!


「ふふ、なら私はマリスくんを守るために強くなるよ」


 守ってくれるせめてものお礼、そしてお詫び前世の私のせいで強くなった意味がなくなってしまったから、本当にごめんなさい。


「ダメだよ、僕が守られたら意味が無い」


「でも私も守られるだけじゃやだ、マリスくんのことも守りたい」


「うぅ、なら勝負しよう、この後の打ち合いで僕が勝ったら諦めて、メアちゃんが勝ったら僕を守ることを認めるよ」


 む、勝負とな


「いいよ、絶対だからね」


 ずるいかもしれないけど戦いに関しては専門職だったからね全力で行かせてもらうよ


「二人とも悪いけどそれは最後ね、今からやるのは少し流れがあるやつだ」


「流れ?」


「あぁ、とっても簡単なやつだよ、攻め手と守り手に別れて打ち合いして合図で入れ替わる感じだ、そうだね合図は手を叩いて『はい』って言う感じでいいかな」


 攻撃する側とそれを防ぐ側に別れて父の合図で変わりつつやる感じか、なんか面白そう。


「まずはメアが攻めてみようか、それじゃ位置について」


 私とマリスくんが対面する形で並ぶ、木の剣を構えて互いに見合う。


「始め!」


 マリスくんに向かい剣を振る、今のところは上から振り降ろすだけだけどこれから色々覚えていったら色んなの混ぜながらやるんだろうな。


「はい!」


 父が手を叩き攻守が変わる、さすが男の子、振り下ろす力が強くて、こっちが剣を落としそうになる、しかしどこか荒っぽく今は簡単に捌ける。


「やめっ! 二人とも凄いな、防御の仕方とか教えてないのに出来るなんて」


「私はこの前パパと森に行った時にパパがやってたの真似しただけだよ」


「僕はパパに少し教わった」


「なるほどね、今日は少し早いが試合するか、なんか約束あるみたいだしな、二人とも位置につけ」


「「はい」」


 やっと試合だ、どうするかな、力は圧倒的にマリスくんが上、多分だけど帰った後も筋トレとかしてるんだと思う、それに比べ私は、終わったあと、こっそり魔力を練って増やしてるだけだからそこで差が出たのだろう、が、私には前世の記憶を使った技術がある、負けるわけがない。


「二人とも準備はいいな」


「「はい」」


「それでは始め!」


 父の合図と同時に私は、マリスくんの元へ走り出す、対照的にマリスくんはその場から動かず、こちらの攻撃を防ぐ姿勢を取っている。


 私は、マリスくんの懐に入ると剣を横に振り攻撃する、マリスくんはそれを防ぎ逆に攻撃をしてくる、マリスくんの攻撃を躱し、空振りしたところを攻撃する、当たるギリギリのところでマリスくんは躱して距離を取った。


「さすがマリスくん、やるね」


「メアちゃんこそ」


「お前達ほんとに子供か? パパ将来が心配だぞ」


 横から変なの聞こえたけど気にしないで次の手を考えよう、思った以上にマリスくんが出来る、本来の戦いであったらこれに魔法が加わるから私が優位に立てるけど、今は使っちゃダメだし、剣術のみの純粋な試合だとやっぱり動けるマリスくんの方が上になるか、どうしよう、速さ勝負とかしてみるか。


「やああああ!」


 私は下段に構えて地面を蹴る、マリスくんは剣を正面に構え立ったままじっとこっちが来るのを待っている、私が間合いに入ると、マリスくんは剣を振り下ろした、私はそれを見て左に避ける……フェイントを入れ、素早く右に身体を縮こませながら避け、視界から外れる。


 貰った、そう思い剣を振りあげようとしたら急に足のバランスが崩れ倒れる


「きゃっ」


「僕の勝ち」


 マリスくんは木の剣を首元に当てて勝ちを宣言する。


「足使うなんてずるい!」


 そう、私が突然バランスを崩したのは、マリスくんが足払いをしたからである、軽い私は簡単に払われて地面に倒れたのだ。はは、お空ってこんなに青いんだな……


「いやずるくないよメア、これも立派な手だ、だからマリスの勝ちだ」


 負けた、負けたの……あんなに勢いよく受けたのに、攻めてたのは私なのに、防御に回っていたマリスくんに負けた、魔法ありなら勝てたと思うのに、無しだとこんなにあっさり負けるの……


「うぅぅぅ、もう1回、もう1回だもん次は勝つもん」


 若干泣き目になりながら再戦を希望する、認めない、今度こそ勝ってやる


「こらメア、勝負は1回だけだ、マリスだって困るだろ」


「でもぉ」


「でもじゃない」


「僕はいいですよ」


「む、マリスがいいって言うなら、分かった」


 ヤッター次こそ勝つ、色々手を考えないと


「でも約束は守ってよメアちゃん」


「うん」


 今は約束なんていい、とにかく勝ちたい、負けるのなんていや!


 その後、日が沈むまで何回も何回も試合をしたが全て私の負け、最後に関してはもう勝てなさすぎて涙で顔をぐちょぐちょにしながら戦ったよ、なぜ勝てない、やっぱり才能ないのかな……


「メアちゃん約束覚えてる、諦めて僕を守ることは辞めてね」


「うぅぅ、分かってるもん、でも絶対マリスくんより強くなってみせるもん」


「はいはい」


「全く、誰に似たのやら」


 このまま負けっぱなしは絶対にやだ、いつか必ず勝ってやる、ぐすん。


 前世からの負けず嫌いがしっかり反映してる感じする、父が誰に似たのやらとか言ってるのは多分(わたし)のことだろう


「やっと終わったわね、マリスくん、お母さんがこっちの家に来てるからこのままお風呂に入ってご飯食べていきなさい、なんならお泊まりする?」


「はいありがとうございます。えっと多分お酒飲みますよね、なら泊まって行きます、すいませんお邪魔します」


 家から出てきた母がマリスくんにお泊まりしないかと提案していた、まぁ多分エラッタがと一緒にご飯食べるということは酔い潰れるまで呑むだろうからマリスくんの選択肢は正解だね。


「じゃあみんなお風呂に入ってきなさい、汚れしっかりとるのよ」


「「「はーい」」」

母たちによる教育がある日はなるべくみんなで夕食を食べるというルールがいつの間にか出来ていた。

私たちがお風呂に行っている間に母とエラッタがご飯を用意していた。

「美味しい!」


 夕食は大好きなハンバーグが出てきて、それもう、上機嫌、さっきまでのことなんてなかったかのよう。幸せそうな顔をする私を父と母、エラッタ、そして何故かマリスくんが見てる。

 まだ口の小さな私のためにハンバーグは小さめ、上にはチーズが乗っていて、母の特性ソースがかかってる、作り方知ってるけどね。

 それでも美味しい、今日の夕食のメニューは子供たちがハンバーグ、大人はステーキと少し豪華、それに加えて、子供はフルーツジュース、大人はお酒を呑んでいる、自分の家から、ありったけ持ってきたものである。

 その中には貴族でもなかなか買わない高級なものまであった。


「良かったのか、こんな高そうなの開けても」


「いいのいいの、買えばいいし、お酒もどんどん飲んで」


「それにしても、よく食べるわねマリスくん、これが普通なんだけど、逆にメアが心配だわ」


「そうね、あんだけ動いたのに確かに少食すぎるかもね」


 あれ、そんなに食べない方かな? パンひとつに小さなハンバーグが4つって普通だと思うんだけど、これでお腹いっぱいにはなるし。


「そのうち食べる様になるさ、今は少食なのかもしれないだけだよ」


「そうね、さ、エラッタが持ってきたお酒飲むわよ、もちろん付き合ってもらうわよエラッタ」


「ええ、どうせ酔いつぶれたあなたの面倒みるの私だけどね」


「おいおい、俺を忘れてないか? 今日は負けねぇからな」


 そういえばこの3人、ものすごくお酒に強い、結構昔に最難関と言われたダンジョン攻略した時の祝勝会で、店の酒全て無くなるまで飲み続けた、それでも潰れることなく帰った。

 そんなちょっとした伝説があったりする、それのせいで酒豪の英雄達と呼ばれてたこともあった。


 大人達がわんちゃか始めて、ゆっくり食べてた私もお酒の匂いに耐えれなくなり、急いで食べ終わると、マリスくんとその場を離れ、一緒に遊んだりした。


 手遊び、ジャンケンなど色々してたら眠くなって来たので、母の所に行く


「ママ……」


「あらお眠? マリスくんもそう見たいね、お2階で一緒に寝てなさい」


「うん……」


 マリスくんと一緒に2階に行き、2人してベッドに倒れ込むように横になると、直ぐに眠りについてしまった。




 夜遅く、何故か目が覚めた私、辺りは暗く何も見えないが、下の方でまだ呑んでいるが分かるくらい話し声が聞こえた。


 会話の内容は俺が小さい頃はな、とかあの時のあれはなどの思い出話だった。

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