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そんなこんなで時間がたち、ハイハイなりあんよなりするようになり、活発に動けるようになった私は、とりあえずしばらくは家中を動き回ることにしました。
私の記憶が正しければ、私……じゃなかった母の寝室に鏡があるはずだ。
しかしこの家何故か2階建て、母の寝室は2階、今は、私を見るために1階で寝ているが、他のことは基本的に自分の部屋でやるために置きっぱなし。
それに最大の難関はここの階段、母は引退したとはいえ、元国の英雄、物音には敏感なので慎重に登らないと、すぐに捕まる、さてどうすか……。
と、座り混んで階段を見ていると、夫……じゃなかった父がやってきた。
「どうしたメア?2階に行きたいのかい?」
チャンス、これはあれをするしかない、えっと確かこうやってと。
「ん」
両手を広げてパパ抱っこしてとお願いする、我ながらこの演技いいと思う
「そうかそうか、よっとほら高いだろ」
よし成功、やっぱり高いなパパは、それにかっこいい……と、そうじゃなくて。
「ん」
2階を指をさす、これで連れてってと理解してもらえれば完璧、父は私には甘い娘の願いは聞いてくれるはず。
「やっぱり2階に行きたいのいいぞ連れてってやる」
よっしゃー来た、あとは鏡を見るだけ、これでやっと確認出来る。
父は階段を登り出す、だが丁度真ん中ぐらいのところで……
「あなたーちょっと手伝ってくれない?」
「はーい、ごめんなメア、2階はまた今度だ」
母が父を呼びUターンして1階に戻ると私を床に置いた。
ものすごくタイミング悪いよ私……あともうすぐだったのに、でも諦めないぞ、だったら自力で登ってみせる。
小さな体で階段を一生懸命に上がっていく、1段1段上がるのに、結構体力を使うので非常に疲れる、それでも、さっき父がUターンした所を超えてさらに登る、あと少しで2階だ。
「こらメア、階段を登ったらダメでしょ」
後ろから母の声が聞こえたと思ったら掴まれ体が宙に浮き、そのまま抱きかかえられる。
あ、これは終わった、そうだよね音立たないわけないよね、無念、流石に今回は諦めて……なんてするものか、向こうが折れるまで挑戦してやる。
と登っては降ろされ、降ろされては隙を見て登りを繰り返して数日たった頃、私は敗北を知った。
階段に大きな柵が置いてあるではないですか、なんてことをする私……じゃなくて母よ、これでは登るどころか、この柵を超えないと挑戦すら出来ない、この身体で超えるのは危なすぎる、さすがに諦めるか……
しばらくの間階段の前に行っては座りただただ上を見つめる生活を過ごした。
そんなある日いつものように階段の前に居座っていると母がやってきて私を抱き、いつものようにベビーベッドへと、戻すかと思ったら。
「もう、そんなにお2階に行きたいならほら」
母は私を抱いたまま2階へと連れていって、そのまま寝室に行き私を降ろした。
あれもしかして諦めてくれた!やった、あとは鏡を見る……だ……け?
鏡に映ったのは父親譲りの茶色い髪に母親譲りの青い瞳、そして目の下に小さなホクロがあった。
うん確定しちゃった、娘の小さい頃と全く変わらない、やっぱり私は娘になってしまったみたいだ。
「あらメア、じっと鏡なんて見てどうしたの?あー自分の姿が写るのが不思議なのね、うん可愛いわ」
ごめんなさい、違います。鏡に写る現実に絶望してただけです。
ただ自分の力でみんなを守れるとわかっただけでもいい事だ。
どうしようかな、死ぬ前にわかってることは崖崩れだけなんだけど……。
あれ?そういえば、いつも通っている道は道幅が広くて、補強もしっかり前世の私がしたのに、自然と崩れるなんて有り得る?誰かが意図的に崩した?でも魔法の反応がなかった……
「ほらメアちゃん、ママの用事が終わったからおりますよ、お2階は危ない物が沢山あるから怪我しちゃうよ」
考えていると母は私を抱っこする、そう言われるてみればこの部屋鏡の他にも母が現役時代使ってた武器とか防具が飾ってあるんだった。
母……前世の私はこの国の英雄の1人で魔導士、と言っても今この国の生きた英雄は4人程しか居ないけど、1番弱そうに見えたのか、爵位とか貰ってからずっと狙われてたんだよね、そうだよね杖使わないで短剣使う魔導士なんて邪道って呼ばれてもおかしくないし、パッと見めちゃくちゃ弱そうだしね、実際他の3人と比べると弱かったけど……。
その時に使ってたの、がここに飾ってある、嫌なことも多かったけど思い出の物だからね、捨てるに捨てられないんだよ、他には魔法の研究の時に使ってた、ガラス管などがポツリと置いてある、落ちて割れたら大惨事だね。
それにしてもなんだか眠い
「ふああー」
「あらメアちゃんお眠?もうそんな時間なのね、下で寝ましょうね」
母の温かみって凄いな、なんだか落ち着く……
1階に降りたあとはしばらく母に抱かれて家の中を歩き回るとすぐに夢の中におちました。






