パンくわ! 〜パンくわ女子と俺との直径1kmウォーズ〜 【あらすじ&本文&設定&プロット】
▼あらすじ
俺は山田多九郎、十七歳の高校生。
宇宙人だ。
え、意味がわからない?
言い換えよう。
異星人だ。
地球に調査員として潜伏している中、通う高校へ向かう途中の路地角である女の子とぶつかった俺は、
「うぐぉっ」
という情けないうめき声と共に地面とランデブーした。
後で知るのだか、彼女は転校生の山下広香だった。
これは、彼女と出会ったことで俺が巻き込まれた、ハードだけどボイルドしない、ちょっとラブって振り回される、俺の調査の日々、かーらーのぉ?
直径一キロメートルを巻き込んで行われる、星間生存ウォーズ
▼本文
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▽1 ぶつかる
「定期連絡。タクローより本船へ。本日も地球における日本人の生態調査を続ける」
「本線よりタクローへ。了解した。本日も夜八時に作戦終了されたし。貴君の健闘を祈る」
ブツッ
「はぁ……」
俺は山田多九郎、十七歳の高校二年生だ。
え、本船って何かって?
バレちゃぁしょうがない。
ショートカットの黒髪、薄い唇に少しぽってりした鼻、目はくっきりとした二重だけど少し細長くて、まぁまあのイケメン。
そんな俺はこう見えても宇宙人だ。
見えない?
勿論擬態している……と言いたいところだけれど、偶然も偶然に、俺の星とこの地球という星の生態系がすごく似ていて、外見だけなら俺も地球人っぽくて擬態なしでやれているのが実際だったりする。
今現在、仲間は本船の方で待機をしていて、一部の俺のような調査員が各地に散らばってこの地球を詳しく調べている最中だ。
何の為かって? それは機密事項だから教えるわけにはいかないな。
ま、いずれその時が来たらわかるから待っていればいいと思う。
というわけで、俺は今日も十七歳らしく学校へと向かう為に朝の準備を終わらせ家を出た。
今は五月。
日差しはもうかなり痛くなっていて、紫外線バシバシだ。
この星は段々と住環境が厳しくなってきているようなので、もしも移……おっと機密だった。
俺はちょっと肌が弱いので、ありがたく先進的なこの星の日焼け止めクリームを塗り済みである。
衣替えはまだだけど、もう暑くて着ていられないので学ランの上着はカバンの中にしまっていて、上はカッターシャツ一枚だ。
少しそういった事を家を出る前にしていて、時間に遅れ気味だった俺は足早に通学路を進む。
そして学校から家までのちょうど中間あたりに差し掛かったくらい、その時だ。
俺は十字路の真横から来た何かと勢いよくぶつかった。
何かも吹っ飛ぶ俺も吹っ飛ぶ。
大惨事だ。
思いっきり横へと吹っ飛ばされて俺は地面とキスをした。
「うぐぉっ」
変な声も出た。
何なんだ? こんなところで前方も見ずに突進するかのように直進するのは。
猪か?!
俺は腹を立てながら立ち上がりぶつかってきた何かの方を見た。
咥えて走っていたのか、あんこの塗られた食パンが脇に落ちている。
あれは四枚切りだな。
「いったたたたー」
パンツが見えた。
ピンクの大きめ水玉だった。
慌てて目を逸らしながら、パンツ、じゃなかったおそらく女の子であろう痛がっている相手に声をかける。
「俺も痛いんだけど? 十字路は左右見てから出てこいよな、怪我がなかったから良いものの自転車相手だったら相手吹っ飛ぶぞ? あとスカートの中見えてる」
大事な事なので忠告と、丁寧にぼかしながらも今そこにある危機を教えてあげる俺ってば優しいやつである。
視線を逸らしながら自画自賛していると、いきなりグーパンチが俺の左頬に飛んできた。
「えっち!!」
「ぅぶっ?!」
俺は再び吹っ飛び道の真ん中へ沈んだ。
住宅街だから車が来ないだけでここ歩道の無い車道だぞ? 俺が轢かれたらどーすんだよ?!
流石に怒り心頭でサッと立ち上がると相手に詰め寄り抗議した。
「いきなり殴る奴があるか馬鹿野郎!!」
「私の大事なもの見たんだから当然でしょ?!」
「見たくてみたわけじゃないし、見たくもなかったわ!!」
「それはそれでひっどーい!」
「いきなり暴力振るう方が酷いですー」
「やるの?」
「おう、受けてたってやる!!」
お互いに睨み合う。
と、相手の身長が当然と言えば当然だが低いので、ちょっと下方向に見下ろす形になって制服が見えた。
どうやら一緒の学校の奴らしい。
そこでふと、改めて相手をじっくりと観察する。
二重の瞳はぱっちりと、この国の基準でいくと結構な美少女っぽく、鼻筋は通ってはいるがちょこんと顔に乗っていて愛らしく、唇は程良い大きさで口角が上目だ。
しかも今はなんだか瞳が潤んで頬が上気している。
ぶっちゃけ、とても可愛らしい、言うなればこの国のアイドルもかくやの顔立ちで。
だが――
「ん?? 何でお前、髪色緑な訳?」
「へ?」
地球について調査中の俺だが、高校一年次からいる為この星についてはそこそこ詳しくなっていた。
が、この星で、しかもこの国に生まれてくるものの容姿には、確か緑髪なんてどこにも存在してなかったはずである。
「ひゃぁ!」
指摘すると同時に相手は悲鳴を上げ、次いで髪色は俺と同じ黒になった。
がしかし、瞳は未だに緑色だ。
「お前な……」
俺は頭痛がした。
本船から追加人員の話は来ていない、だとするとだ。
こいつはお仲間だ。
けれどこの様子だとすこぶる出来が悪い……容易く正体がバレる可能性がある。
一緒にいてはまずいし知り合うのもリスクが高そうだ。
俺はそう判断すると、方針を変えた。
無難にこの場を取りなして今後一切関わり合わないようにしよう、そう決めると早速行動に移すことにする。
「怪我はなかったか? 俺も前方不注意だったよ、ごめん。お互い気をつけような? じゃ、これで」
一気に言い終わると、相手を見る事もせずに俺はその場を去った。
とにかく関わらないように。
その一念だった。
俺の努力は、その後すぐに意味がなくなった。
「えっと、外国から転校してきました? 山下広香デス。よろしくお願いします」
ペコリとお辞儀をした後上げたその顔に、瞳の色は緑のままで。
そいつは俺のクラスへと転校してきたのだった。
※ ※ ※
「あ、山田くん!」
▽2 話し合う
休憩時間になると転校生が俺に声をかけてきた。
学校では陰キャで通していたので、教室内がゆっくりとざわめきに満ちていくのが肌感覚でわかる。
激まずである。
俺は慌てて山下へと顎で一緒に表へ出ろ、と合図を送ると廊下へ出て秘密の場所へと奴を誘導した。
「こんなところに呼び出して、どーしたの?」
「どーしたもこーしたもなくってだな、俺とお前は初対面のはずだろうし、名前も名乗らなかったはずだ。……なぜ、知ってる?」
「へ? あっ! あぁぁぁあ」
言うと山下はペタンとその場に割座になった。
ブツブツと知らない設定だったとか、いやでも調べ……る暇なかったもんねとか言っている。
山下のツインテールは気持ちのいいくらい屋上の風に、綺麗にたなびいていた。
そう、ここは屋上だ。
普段は鍵がかかっていて、生徒は誰も開けられない。
ならなんで俺たちがこんなとこにいられるかというと、瞬間移動アプリを使ったに過ぎない。
俺の文明では、こちらでいうパーソナルコンピューターってやつが超時空進化して、アプリでなんでもある程度はできるようになったのである。
そんなわけで今俺と山下は屋上に二人だけ、という状況で安心して密談できるわけ。
だが、問題は未だ片付いていない。
「お前……帰れ」
「えっっ?! 帰れってお家に?」
山下はまだしらばっくれられると思っているのか、ボケた返答をした。
さっき俺のアプリ起動、体感したばっかだろーがよ!
「あのなぁ……お前も異星人だろ?」
「な、ななな何でそれを?!」
「バレバレだっつーの」
俺はため息をつきながら、朝の髪色の変化を目撃したこと、アプリの使用に特段驚かなかったことなどを説明して、山下を問い詰めた。
「……だから、だよ。そんなの異星人以外いないだろ、地球人の文明はまだそこまで発展していない」
「うう、反論の余地がない」
「バレて痛い目みる前に帰れ。向いてないぞお前」
「そんなぁ……でも私これ成功させないと後がないのっ! お願い、黙ってて?」
山下は目の前でパン! と手を合わせて拝みにかかってくる。
なんなら両目をつぶりつつもうっすらと片目だけこちらをうががっていて。
畜生、かわいいは正義かよ。
流石の俺でも、これにはちょっとぐらついた。
調査員といっても妙齢の男子なのである。
「〜〜わーったよ! 黙っててやる。けど、何が目的かはともかくとして共倒れしたくない。ミスったらお前の星じゃなくて俺の星に強制送還してやるからな?!」
「えっ、違う文明の星は水が合わないから、ちょっと……」
「そんな贅沢言ってられるのか? 後、ないんだろ」
「あうー……ワカリマシタ」
山下は、まだ何か納得しかねるようだったが渋々了承の返事をした。
どうしても、今回の任務を成功させたいらしい。
「ちなみにお前、なんの任務でこの星来てるんだ?」
「えー? えへへ、なーいしょー」
あきらか彼女は誤魔化し笑いをした。
それではぐらかせると思ってるんだから、ほんとどこの星かは知らないが厄介な奴を送り込んでくれたものだ。
俺は心の中でため息をつくと、瞬間移動アプリを起動させ、踊り場へと向かう算段をつけ始めたのだった。
※ ※ ※
「了解、検討を祈る」
ブツッ
またいつもの朝が始まる。
だいぶデータを収集できたから、そろそろ本星に帰れるかも知れないなと、今後のことをつらつらと考えながら支度を始める。
今日も学校だ。
いつでもボッチ登校の俺は、登校途中の道を観察しながらプラプラと歩みを進める。
そういえば、昨日ここでぶつかったんだよなーだなんてよそ見していたからか、
「あぶるぁ!」
前回以上にぶっ飛んだ。
こんなことできるやつなんてヤツしかいない!!
▽3 案内する
「おーまぁーえーなぁー?!!」
「ぴえん」
「クソ異星人のくせにサブカルばっかり明るくなってんじゃねーよ!!」
「ひっどーい、やんの?!」
「おうやるかぁ?!」
すわ喧嘩か?! というところで、車のクラクションが高らかに鳴り響いた。
「邪魔だ、そこの学生!!」
という怒号も聞こえてきた。
俺たちは我に返って、ここが道のど真ん中ってことに気づいてペコペコと日本人らしく謝罪の意を表すと、わきに退けた。
運転手が中指をたてながら、車を走らせ遠ざかる。
「お前のせいで怒られたじゃねーか」
「私のせいじゃないもん」
「もんってかわいこぶってもビタ一文まからん、お前が悪い」
「……ごめんなさい」
しゅんとする山下は、なんだか小動物みたいで。
だからつい俺は頭をぽんぽん、と撫でてしまっていた。
「……たっくん、優しい」
しまった!
気づいてさっさと手を外したがどうやら既に遅かったらしい。
呼び方が変になっているし、こっちを見てうるうるしている勘弁してくれ。
「いや、これは何かの間違いで、俺はお前が迷惑だ!」
俺は言い捨てるとさっさと走って学校へ行くことにした。
尻拭いは死んでもごめんだ。
山下は追っては来なかった。
俺はいつもと同じくらいに学校に着き、やつはちょっと遅刻して先生に注意をされながら教室に入ってきた。
……多分勝負はお昼休憩だ。
この戦い、負けるわけにはいかない!!
――結果的に、俺は戦いに敗れた。
授業終了のチャイムと同時に「たっくん」とハートがついてるかのような錯覚をさせる物言いで声をかけられたし、それをもちろんほとんどのクラスメイトが聞いていた。
ビシビシと感じる山下を良いなと思い始めたヤロー共の嫉妬、怒気。
俺は意味もなく冷静を装いながら、返事をした。
「何か用か? 山下」
「学校をたっくんに案内してもらいたくて。だめ?」
「だめだ。他の奴がいくらでもいるだろ」
すげなく言うと、山下は元気がみるみるうちになくなる。
冷や汗が出る俺の脇の下、だんだん鋭くなるヤロー共の視線。
面倒ごとも注目されるのもゴメンだ!
「わーったよ、ついてこいよ」
ガタッと勢いよく立ち上がると、ご飯があるならもってこいと山下に言って、自分の飯を掴んで教室を出た。
「待ってたっくん」
焦った様子で山下がついてきてる気配を背後に受け、それ以上の嫉妬の空気を背中にべっとりとつけたまま廊下を右に曲がる。
その時チラッと見た彼女は、どこか嬉しそうで、正直ヤローがときめくのもわかる気がした。
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▼設定&プロット
甘えるのが大っ嫌いな俺が路地角でパンを咥えた子とぶつかってサポートが必要だと知る物語。
アクション
成長
現代世界に異世界がある
ローファンタジー
DADAN大賞
ヒロイン 宇宙人 地球を侵略するために、下調べをしにきた。
私 山田くん→たっくん
広香ひろか山下やました
緑髪ツインテール
俺 地球人のふりした宇宙人 地球を侵略するため下調べ潜伏中。
山下→広香
黒髪ショート
多九郎たくろう山田やまだ
山下広香が母星の計画の元、高校から半径1kmを半球体で囲み、地球生物の強度実験を開始。
起
山田は宇宙人
侵略の下調べのため潜伏して調査している調査員
ある時、路地角で女の子とぶつかる
それはど三流の別の宇宙人だった
巻き込まれて正体がバレては敵わないと距離をおこうとするが、転校生として高校へとやってきて、何かと絡んでくる
どうやら一目惚れされてしまったようで?
承
女の子一人だとやっぱねと思ったのか、他の宇宙人も下調べに来たついでに山田に狙いを定めて殺しに来ている
どうやらバレている模様
無効化しながら調査を続ける山田
なつかれたのでしょうがなしに、日本人的に世話をしていたら、広香にさらに懐かれてしまう
つい調査を忘れかけたり、広香と共に学園生活を満喫する多九郎
ドツボにハマりかけているところ、別の星の宇宙人がやってくると情報があり?
転
その宇宙人は、資源のみが必要で人も他の宇宙人も根絶やしにする木ムンムンのやつだった
広香は広香で地球生物の強度実験を開始し、学校が実験場へと変わってしまう
一人で対処しようとして失敗ののち、クラスメイトの強力もあり広香の気を変えることに成功
しかし根絶やし宇宙人がかなり強くて負けかける山田
そんな時広香が助けにきた
辛くもその場から退くことだけは成功
結
広香に正体がバレた山田
改めて告白され、星間結婚も許可されている星だったのもあり、絆されて付き合うことに
根絶やし宇宙人を二人で倒す決意をして、寝首を描きにいく
勝利
朝チュン
俺たちの交際はまだまだこれからだエンド
SFラブコメディを描こうとした足跡です。
何事もチャレンジ大事!←
いや、いつか書ききりたいです。
取り掛かってる作数と予定の一本を考えたら、これは一旦閉じた方がいいと思った次第です。
実力的に壮大にスペクタクルにラブって笑えてができるか不明ですが、私なりに挑戦はしたかったのです。
けれど、ほったらかしはほったらかしで、作品がしょんぼりしたらいけないので(謎理論)ここに石碑を建てん(葬っちゃったよこの人)




