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ホウ草のお粥を手渡すと、恐る恐る口にする青年。
「え? 美味い……」
「ミルクのマイルドさと合ってて美味しいよね。どのくらい治るかわからないし、もっと作るべきだったかしら…」
「ホウ草を見つけた時点ですごいと思うけど。めったにお目にかかれない薬草らしいし。自ら気配消しの魔術使ってるのかってくらい見つからないってみんな言ってる。稀に見つけた人の話を聞いて、その場所に行ってもほぼ見つからないらしいし」
「へ? 普通にいっぱい生えてたからたくさん採っちゃったよ…、売ったら駄目なやつか。怪我治るまでここで看病するから、色々教えてくれると嬉しいな!」
「看病の必要ないと思うけど、怪我治ってもここに居ていいなら喜んで。あれ? でも、あそこのそばにこんな立派そうな内装の建物あったかな…?」
「あはは…。これもスキルの1種みたい。多分ステータス見る限りシフォンって名前だと思う。でも記憶があんまりないから、色々教えてくれると嬉しいです」
「僕の事はシルフィって呼んで」
銀髪の青年は、夜空を溶かし込んだような瞳を細めてそう言った。
「シフォンにシルフィ…。なんか響きが似てるね!」
「そうかもね。てかもう傷が塞がるのか…、みんな躍起になって探すわけだ…」
傷口があったはずの箇所を確認しながら、シルフィさんは言う。
「採っちゃった物は仕方ないし、おかわり食べる? まだたくさんあるけど…」
「確かに…。それじゃあ、お言葉に甘えていただきます」
ホウ草が見つける人を選ぶ草だとは思わなかったけど、何も知らず売らなくて良かった。
シルフィさんに確認してから、余った分を売りに出そう…。そう心に決める私だった。
「なんかここキャビンっていうみたいなのだけど、私…、ここへの扉を呼び出せるみたいで、それで見つけてすぐにここに運んだの…」
「でもここ…。見た事ない作りだし、入れる人は選んだ方が良いかもしれない…。運ばれて看病受けた人間が言うべきじゃない事かもしれないけど…」
「シルフィさんって強い?」
「ん? まぁ、それなりには…。A級の冒険者しているし…」
「ふむ…。しばらくここの常識を教えて欲しいのと、ボディガードしてもらえないかな?」
「僕も何者かに狙われてるみたいだし、匿ってくれるかな?」
「ここで良ければ」
「鳥の肉とりたくて、森に入ったんだけど、捕まえる前に襲われて姿消しを使ったけど、倒れちゃったみたいで残念だよ…」
「あれ? 冷蔵庫に何か入れる場所ができた…」
「レイゾウコ? この箱か…。コインが入りそう…、入れてみていいかな?」
「じゃあ、ホウ草とコイン交換する?」
「それは遠慮しとこうかな……」
「そっかぁ…」
そんなやり取りをした後に、シルフィさんが持ってた銀色のコインを入れてみて、鳥肉らしきものが大量に冷蔵庫内を埋め尽くしていた。