16
気がつくと牧場の改装したばかりの木で建てられたロッジにあったベッドに寝かされていた。
あぁ、困らせてしまったかも。そんな思いもあったけど、シルに優しく「大丈夫?」と覗き込まれるののほうが何故か、恥ずかしかった。
「どのくらい寝てた……?」
「えと…、2時間くらい?」
蘇る最後の方の記憶だと、シルを抱き寄せて泣いていた気がする。
思い出すと恥ずかしくて顔が上げられない。
「熱はないな…」
なんて気軽に額に触れる、シルに今までの無駄に近かった距離を、今更ながらに思い知らされる。
『シフォ~~! 目が覚めたの~~!』
飛びついてくる雨夏に舐められた。
「心配かけてごめんね。体は平気だよ」
私は背中を撫でて宥めるみたいに、雨夏の背中ゆっくり撫でる。
少し落ちついた頃に、シルへも声をかける。
「心配してくれてありがとう。落ちついた……。しばらくキャビンじゃ部屋足りないし、ここでみんなで暮らして行けるんだね……」
そう言うとシルも雨夏も嬉しそうに笑った気がした。
その後気恥ずかしさもあったけど、簡単な料理で腹ごしらえし、しばらくして、キャビンへと足を運んでみる。
不思議なゲームを試す為に。ゲームを進めると僕場の状況も反映していく。
牧場に入って作業した事も反映していく。
シルが入れてくれたお金の残高も加算されている。
「でも……、最初は男女のキャラクター選んで進めて行くだけのゲームよね……」
「何なんだろう? 玄関から外にはしばらく出ない方がいいみたいだし、牧場で生活しながら作物や武器のランクをあげよう…」
『ゲーム? それのストーリーとかあるんでしょ? 関係してくるのかな』
「なんかマップ広がる条件になっていそうだし、それっぽい展開はありそうだね」
シルも顎に手を当ていう。
頭を悩ませていると上から、何故か紙が2枚降ってくる。
「なにこれ…。パーティ追加用紙? シルと雨夏が名前書いたらパーティとか言うのに入るみたい…」
説明を見て読み上げる私。
「離れないって事なら、別に何も変わらない…」
いつの間にか出てきていたペンを、片手にシルが言う。
「代筆でもいいみたい…」
私がそう言うと、雨夏は、ペン持てないから代わりに名前書くな~」
シルはそう言うと、雨夏の名も書き込む。
承認『キャビンオープン』と表示され、NEWの文字が浮かぶ。
シルと雨夏にも自由にここに入る権利ができたらしい。
まだまだわからない事ばかりだけど、私達の冒険は始まったばかりだ。
これからも、二人と一匹が綴る物語は続いて行く。