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ー少し時間は遡り……ー
キャビンに戻ると、雨夏に「ちょっとそこで待っていて」と声をかけ、濡らしたタオルで足を綺麗に拭く。
「これで綺麗になったかな。靴は履けないし、雨夏はお外に出たら綺麗に足を拭こうね。そういえば街に動物屋があったよね。お手入れ用の用品とかあるのかな。後日行ってみようか?」
『ここ何?』
「彼女のスキルらしいよ。毛足が長いからか、雨夏少し汚れてるみたいだね、洗おうか?」
「人のボディソープしかないから、明日動物屋で見ようね」
『冷たい水、寒いしヤ~……』
「シャワーって温かいお湯出るので洗ったげるから、綺麗にしよ? 今日は人用の石鹸で我慢してね?」
「魔物だし、シャンプーとかいうのでいけるんじゃないかな。シャワー浴びるついでに僕が洗おうか?」
「私も洗ってみたい! みんなでバスルームに行こう?」
『バスルーム? ワタシ冷たいのヤなんだけど…、主が言うなら仕方ないか…』
嬉々としてバスルームに向かう私と、意気消沈してトボトボとついて来る雨夏。それを見て、笑いを堪えながら、最後尾をついてくるシル。
傍から見たら三者三様の反応に笑いを誘われたに違いない。
結論から言うと、人用のシャンプーで洗うと、雨夏の汚れは綺麗に落ち、ドライヤーという髪を乾かす機械でふわふわと真っ白い体に耳や九本の尻尾の先を縁取る様な青い毛が美しい、九尾の狐へと変貌を遂げた。
まだまだ小狐といった様子だけど、ふわふわとした毛並み、愛らしい容貌に癒やされる。
頭を撫でると、気持ち良さそうに金色の目を細めて身を預ける姿に、頬ずりしたくなるほどかわいい。
「そうだ! 雨夏のステータス見て良い?」
『すてえたす? よくわからないけど、主が見たいならいいよ』
「ありがとう! でも主って他人行儀な気がするし、シフォって呼んで? 契約切れない限りずっと傍にいてくれるのでしょう?」
本当はシルともずっと一緒がいいけど…、きっと難しいのだろう…
まだ出会って数日なのに、何考えてるのだろう、私ったら。
『主……』
「??」
私と雨夏は遠目には仲睦まじく見えていたらしく、突然の雨夏の淋しげな呟きに、剣の手入れをしていたシルは不思議そうに顔を上げた。
私は思いを振り切るように、「そうだ! ステータス・オープン」そういい雨夏の能力を見る。
雨夏
シックステイル 変異型 LV55 next10885
まだグレーで開放されてない感じだけど、スキルに人化という文字が見える。
「LV55……。私よりずっと強い…。しかもそのうち人の姿になれる時が来るみたいよ?」
『んんーー? そうなったら、シフォ嬉しい??』
「嬉しいよ!」
私達がそんなやり取りをしている間に、スマホを見ながらシルがポトフとサラダを作ってくれていたのは、また別のお話。