12
「わかったから少し待って…! 今出すから…」
期待に満ちた金色の瞳を私に向けて、良い子に待てをしている。
カバンから唐揚げを出しながら、緑がかった青の交じる毛並みを見て、夏の雨…みたいかも。『雨夏』と言う名が不意に浮かぶ。
「雨夏か…」
ふと呟くと、『主になってくれてありがとう』そんな子供みたいな声が聞こえた気がした。
「え?」
「その子に名前つけたの……? 普通テイムした時しかつけないよね…。その子も喜んでるみたいに見えるし連れて行くしかないんじゃないかな…」
呆れた様に、これ以上警戒するだけ無駄とでも言うように、シルは剣をしまう。
「雨夏? これから宜しくな」
『こちらこそ! 本当にあなた達について行っても怒んない?』
「この人…、シフォって言うんだけど、色々規格外でさ…。無自覚に君をテイムしたらしいんだ。だからといって君を追い払いはしないと思うよ。僕はシル。宜しくね!」
『ありがとう…、ワタシ色白銀じゃないから、一族からもう一人で生きていけと追放された……』
小さな身体を震わせ、涙をポロポロと流しながら、雨夏は言葉を続けた。
『もうここで朽ち果てるんだと諦めてた……、ありがとう。シフォ、シル……』
「まだ唐揚げを食べるのでしょう? 泣いてる場合じゃあないよね、たくさん食べて明日から牧場の手伝いとか頑張ろう! 少しだけ植物とか採取してからキャビンへ帰ろう」
『キャビン…?』
「行ったらわかるよ……。規格外だって…」
『?? うん…』
「食べたら行こうね。私はその間に香草とか、お花採る」
私はガッツポーズを決めつつ、植物を根から集めていく。
「雨夏はお腹いっぱい食べた? 一回帰ろう。シフォも取りたい植物を集めただろう?」
「またくればいいもんね。帰ろう。キャビン・オープン」
風景が切り替わり、玄関の前につく。
『何ここ……』
「私のスキル…、キャビン・オープンっていうの」
雨夏を身綺麗に私とシルで洗い終えてから、モフモフとした柔らかな感触を楽しみながら、私のスキルと記憶の話を雨夏にする。シルが暗殺者に追われていた事も話して行く。
『シルも何者かに邪魔だと思われていたのですね……』
「まぁ、色々あるよね…」
しばらくして剣を手入れしていたはずのシルの姿は消えていて、野菜がたっぷりと入ったポトフと、パンとサラダを用意してくれた。
『見たことないけど美味しそう……』
「唐揚げたくさん食べたと思うのに、まだお腹空かせてたのか…」
少し呆れ気味にシルは言うと、ポトフを盛り付けてくれた。
食べたことがないほど柔らかいパンと、やわらかい味わいの温かいポトフ。
タマゴを茹でてレタス、きゅうり、トマトといった具材にマヨネーズをかけて、サラダを食べもりもり食べて落ちついた。