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気配を殺しながら、森を散策しようとするシルに、私は言う。
「よく考えたらあなたを見つけた時、入り口移動してた気がするの。一度ここの森以外で、散策出来ないか試してみない?」
「暗殺を試みた輩が僕の遺体を探してるだろうし、もし本当に出来るなら助かるよ」
「じゃあスマホ見ながら、どこがいいか候補決めよう?」
現在地はミロアの森というらしい。少し離れててモンスターのランクが少し低いところかぁ。なんて地図とにらめっこしていると、シルが徐ろにある場所を指を指す。
「ケメルの森どうだろうか。ここなら徒歩で2週間ほどかかるし、シフォを守りながら、戦える敵が多い。本当に移動出来るとすればうってつけだろう。むずかしいとしても、歩いて向かえばいいだけの事だろ」
私達は、小旅行になる事を覚悟して、カバンに食量を詰め込む。いざとなればキャビンを呼び出せば良いのだし、野宿や宿屋の心配はない。
ケメルの森に…、行けますように……。そう願いながら玄関の扉を開ける。
見覚えのない場所ではあるけど、殆ど歩き回った記憶のない私には、目の前に広がる花畑に見覚えはなかった。
「シルには……、ここどこだかわかる?」
「ケメルの森の中央あたりにある花畑のように見える……、嘘だろ……」
色とりどりの花に圧倒される。
「綺麗……、牧場にも植えられたら良いのに……」
そんな事を呟くと『春・秋 可能』の文字。
「マジか……、今の牧場なら春だし、出荷箱に入れたら、種か苗採れるかも。欲しい花採る!」
「ここの植物も反映するの? 信じ難いけどやる価値はあるか…。戦いが目的だったけど、明日にしようか…」
「うん! そうしていいかな。お花に囲まれて気持ちいいね!」
「あれ? なんかあそこに白い動物倒れてない?」
「え? どこ? 近寄ってみていい?」
「仕方ないなぁ。警戒は怠らないでね…」
「うん、ありがとう!」
私はそう言うと、白い動物に近寄っていく。尻尾の先や耳の先が緑がかった青色をしている。『九尾の狐』そんな言葉が頭をよぎる。
「シックステイルの子供かな…。お腹でも空かせてるのかな……」
「すぐに襲ってくる気配はないけど。唐揚げあげちゃ駄目?」
「……仕方ないなぁ。襲ってきたらすぐに切り捨てちゃうよ?」
そう言って、シルは剣を構え警戒を続けている。
私は少しだけ唐揚げを目の前に置いてみる。
力なく私を金色の瞳で見、唐揚げを咀嚼するシックステイルの子供。そうしていくうちに、少し元気になったのか、私の頬をペロペロと舐め、もっとくれとおねだりしているみたいだった。