1
私はふと目覚めると、知らない小屋? 部屋? に一人でいた。
こんな所…、見覚えないのに。キッチンと思い浮かんだ部屋には、四角い大きな箱があった。冷気が宿り食物を冷やすための物だと何故だかわかる。
『これは食材を火にかけるもの…?』
冷蔵庫や…、大きな鍋やフライパン、近くに置かれたコンロと認識されたそれらを横目に、そんな事を考える。
『こんなものに見覚えも、名前すら知らないはずなのに…使い方や名前がわかるなんてどうしてだろう…』
ベッドという寝具がおいてある部屋もある。
そんな事を考えながら見ならぬ小屋を見回す。
私の頭がテーブルと認識した台の上に、薄い長方形の形をした板が目についた。
「スマホ……? 何それ」
よくわからないなりに触ってみると、わからない事を調べたり、地図を確認したり出来る優れた板の様だ。
「うーん…、自分の名前すら忘れてるのに、何を調べろというの…?」
そう独りごちると、スマホという板と冷蔵庫の中の食料を、持ち歩ける程度のバッグを背負い込むと、ドアの前においてある靴を履き、玄関の扉を開いた。
ドアノブをくるりとひねると扉が開き、一歩踏み出す。
「何これ…?」
森と呼ばれるにふさわしい木々が覆い茂り、さっきまでいたはずの小屋への扉が消えていた。
動物に襲われても身を守れる程の準備なんてしていない。
「どうしろって言うのよ……」
泣きそうな気持ちになりながら、目の前に広がる光景を見ていると、頭の中に『ステータスオープン』そんな言葉が浮かび、追いかけるようにして口にする。
「ステータス…オープン?」
光る画面が浮かび上がり、シフォン…、STR…、INT…といった書き出されている文字に目をやると、スキルと書かれた場所に全知…、キャビンオープンと書かれている。
全知の説明を見ると、知りたいと思った事柄に対して有効らしいので、今はあまり役に立ちそうもない。
「あとはキャビンオープン……?」
説明に目を通そうと口ずさむと、目の前に扉が現れた。
『なるほどね~』と思いながら小屋への扉を通り、武器になりそうなものを身に着ける。再びドアをくぐり抜ける。
一応薬草とか見つけたら採っとくべきかな? そう思いスマホなるものをカバンから取りだすとうんともすんとも言わない。
もしかしてと思いキャビンの中で、触ろうとすると問題なく動く。
「室内限定って事か…、薬草は……っと」
スマホをテーブルの上に置き、再びドアを開く。
薬草の名前を意識すると周りにある雑草と区別化されるのか薬草の在り処にアイコン表示がされるみたいだ。
「薬草って検索じゃ出ないか~。まぁ当たり前だけど」
…などと、周りを見渡して見るとさっきより増えたアイコンを黙々と丁寧に集めて行く。
「採りすぎたけど何処かで売れればいいのになぁ。あれ…? でもカバンの容量おかしくない? かなり採ったよね…」
カバンを見つめていると、時間経過なし、アイテムボックス。
そんな説明が見える気がするのは気のせいだろうか。