9.だる!
翌朝。
ツカサは、体調が今一つだった。
「おはよう、カツミ」
「おはよう」
一方のカツミは、余り眠れなかった。
そのため、ツカサと同様に体調は今一つ優れなかったが、基本的に眠気だけである。
特段、頭痛がするとか腹痛がするとか言う訳ではなかった。
ただ、ツカサの方を振り向き、Tシャツ姿のツカサの姿が目に入ると、何故か股間が元気に反応している。
朝から何故?
股間を抑えるカツミを見て、ツカサは、
「朝勃ち? 高校生男子の身体だし、仕方が無いだろ。それが普通だから。おしっこすれば大抵治まると思うよ」
とカツミに言った。
「ホント?」
「ああ。その身体の持ち主が言うんだから」
「そ……そうね」
カツミは、トイレに駆け込んだ。
たしかに尿意はある。
なので、排泄したいのは事実である。
しかし、カツミは、用を足さずにトイレから出て来た。
しかも表情が昨日のトイレから出てきた時以上にブルーであった。
より切羽詰まった感じだ。
「ねえ、ツカサ。出ないんだけど」
「そりゃあ、尿道じゃなくて精管との繋がりが優先されているからだろ。だから、尿意があっても中々出せないんだよ」
「じゃあ、どうすれば」
「ちょっと時間はかかるかも知れないけど、トイレに立って、切り替わるように命じるしかないな。焦らず、ゆっくりやればイイよ。ボクもそうだったから」
「分かった」
カツミは、再びトイレに入った。
そして、十分近くかかったが、何とか排尿に成功し、スッキリした顔でトイレから出て来た。
「なんか不思議だね。おしっこが出たら(勃起が)治まったよ」
「まあ、そんなもんだよ」
「じゃあ、朝食を出すけど、何おにぎりが食べたい?」
「食欲はあるんだけど、ちょっと怠くて、今は起きるのが面倒」
「あっ? そう言えば、地球時代に、そろそろ来る頃だった」
「来るって?」
「アレが」
「えっ?」
これは、ツカサにとっては完全に未体験ゾーンであった。
もの凄い不安がツカサを襲った。
男性だったツカサが、地球時代に生理を直接経験するのは身体構造的に不可能だ。
せめて、今まで女性と付き合ったことがあれば、その情報を相手から多少は得られただろうとは思うが……。
しかし、彼は女性と付き合った経験が無い。
四十歳童貞だったのだ。
なので、一切の知識なしの状態だ。
「ツカサ。悪いけど、一応、念のためだけど当てといて」
「当てるって?」
「これ。ええとね、お願い、出て!」
しかし、望みのものは出てこなかった。
カツミが出そうとしたモノ。
それは、生理用の紙ナプキンだった。
実は、紙ナプキンは、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック成分が使われている。
そのため、ここではNGとなる。
まともにプラスチックやビニールが入ったモノは出せない設定なのだ。
「出せないんだ。じゃあ、代わりに出て!」
カツミは、改めてタンポンを出した。
これなら天然素材である。
ちなみに、この世界で出すためには、アプリケーター部分も紙製のモノになる。
ただ、これは、ツカサとしても初めて見る形状のモノ。
綿そのものは見たことはあるが、この製品としては、今まで見たことが無い。
なので、いったい、それが何なのか分からなかった。
「それって?」
「タンポン」
「えっ?」
ツカサが怪訝な表情浮かべた。
身体は女性でも中身が男性故だ。
正直、着けたくないのだ。
「なんか、ヤだけど」
「でも、服が汚れるから。着替えなんて持ってないでしょ!」
「そうなんだけど……」
「本当は、私はナプキン派だったんだけど、ナプキンが出せなかったから、コッチにした。とにかく、着け方教えてあげるから、起きてくれる?」
「分かった」
カツミは、ツカサのパンツを下ろすとタンポンを挿入した。
ツカサにとっては、挿入されるなんて、まさに初体験。
地球時代に、挿入する側の経験さえしたことが無いのに……。
これが、TS状態でトイレ事情以上に辛い生殖絡みの生理現象第二弾だ。
カツミとツカサで、一つずつだが。
ただ、ある意味、ツカサはカツミが傍にいてくれて助かったとも言える。
一人で今の身体にTS転生させられていたら、このような対処は出来なかっただろう。
「なんか、違和感しか無いんだけど!」
「分かるけど我慢して。あと、念のため予備も出しておくから持っていて」
「分かった……」
まさか、生理用品を使う日が来るとは。
前世だったら有り得ない話だ。
この日ツカサは、心は男性でも身体は女性であることを強く痛感した。




