6.意外と使える魔法だった!
「ところでさ、そろそろ食事にしない? 勿論、当然だけど……」
「経費節減のため、しばらくは物質創製魔法おにぎり限定食料バージョンで食いつなぐしか無いわね」
「だね。ただ、おにぎりって、どのレベルまで出せるんだろう? 塩むすびしか出せないのか、具が入ったのを出せるのか、海苔で包んだモノも出せるのか?」
「たしかに。それこそ、コンビニのおにぎりなら、赤飯おこわとか、野沢菜が入ったヤツとか、それこそ、オムライスおにぎりなんてのもあるからね」
「だよね。ちょっと試してみよう」
「そうね」
二人は、各々、食べたいおにぎりをイメージした。
そして、おにぎり限定物質創製魔法を発動した。
「出ろ!」
「出て!」
すると、テーブルの上に、色鮮やかなたくさんの種類のおにぎりが出て来た。
勿論、ビニールは出せないので、おにぎり本体のみである。
ツカサが出したのは、オムライスおにぎりにハンバーグおにぎり、チャーハンおにぎりにカレーピラフおにぎり。
今の身体は女性だが、選んだメニューは男性寄り……と言うかオコチャマ寄りだ。
カツミが出したのは、野沢菜いりおにぎりに赤飯おこわおにぎり、刻んだ梅をまぶしたおにぎりだった。
こちらが選んだモノは、比較的オコチャマメニューからは離れた感じだ。
「えっ? マジで?」
「すごーい! 女神様は、他の転生者から苦情が出るのでおにぎり限定にしたって言ってたけど」
「かなり優遇されてるな。手違いで入れ替わっちゃったお詫びに、ボク達が飢えない程度に塩むすびくらいは出せるようにしてくれたって勝手にイメージしていたけど」
「多分、他の人達も、そんな感じで捉えるかも。その辺は、あの女神様も上手にやってくれたってことなんだろうね」
「これは感謝しないと」
「そうね。でも、これだと野菜がちょっと少ないかも」
「それなら、前にネットで見たキャベツ入りのおにぎりってのがあったけど?」
「ホント? そんなのあるんだ」
「ちょっと出せるかどうか試してみる。茹でたキャベツを細かく刻んで、それをご飯とまぶしておにぎりにするヤツだったけど……。ええと……、出ろ!」
ツカサが、キャベツ入りおにぎりをイメージして、物質創製魔法おにぎり限定食料バージョンを発動した。
すると、ツカサのイメージ通り、キャベツたっぷりのおにぎりが出て来た。
既にハンバーグおにぎりも出しているし、一応、これなら肉と野菜を取ることは可能だ。
「凄い。マジで出た!」
「ホント、これは助かる!」
「だね。じゃあ、いただきます」
「いただきます」
もっとも、いくらバラエティーに富んだおにぎりを出せても、こればかりでは、そのうち飽きが来るとは思うが……。
とは言え、労せず確実に食にありつけることは、何も知らない異世界に放り出された転生者にとって、非常に有り難いことである。
二人は、女神ピルバラナに感謝しながら、早速、おにぎりを食べ始めた。
❖ ❖ ❖
食にひと段落着いた。
「ところでさ。お風呂、どうする?」
こう聞いたのはカツミ。
地球時代は、病気でもしない限り毎晩風呂は欠かさなかった。
なので、入らないと何だか身体が気持ち悪い。
「汗かいたし、入りたい」
「で、どうする?」
「何が?」
「ツカサの身体は、本来は私の身体だし。私が洗った方がイイかな……とか」
「まあ、別に元の身体を互いに見るだけだし、一緒に入ってもイイじゃないかな?」
「そうね。じゃあ、そうしましょう」
一応、この部屋にはバストイレ付きだった。
浴槽は、余裕で、二人で入れる広さがあった。
「あのさ、カツミ。ちょっと試したいことがあるんだけど」
「試したいって、何を?」
「生活魔法も、一通り与えてくれたって話じゃん」
「ああ、確かに」
「ただ、これも、どのレベルかは分からないよね?」
「そうね。これも建前上は、『お詫びに、一通りの生活魔法を使えるようにしただけ』とか言っておきながら意外とチートだったりして。それで、何をするの」
「自前でお風呂にお湯を張れないか試してみる。ええと、四十二度のお湯で浴槽を満たせ。出ろ!」
すると、浴槽内に、一気にお湯が湧いて出て来た。
生活魔法と言いながらも、これは、かなりのチートである。
お湯が出せると言うことは、当然、水も出せるだろう。
これなら、飲料を買わなくても、喉の渇きを潤わせることが出来る。
二人は、ちょっと恥ずかしかったが、服を脱ぎ、風呂に浸かった。
ただ、一緒に入る相手が元の自分の身体である。
互いに、何とも不思議な感覚だった。
「石鹸って出せるかな?」
「生活必需品なら出せるって言っていたから、多分、出せると思うけど? ちょっと試してみるね。お願い、出て!」
カツミは、地球時代に自分が使ったことのある石鹸をイメージした。
本当はボディソープ派だったのだが、ピルバラナからは、
『この世界でまともにプラスチックが入っている製品はNG』
と言われている。
それで、取り敢えず容器がプラスチックのボディソープではなく、石鹸にしていた。
宿には、一応、各部屋にフェイスタオルとバスタオルくらいは置いてある。
フェイスタオルと石鹸があれば、別にアカスリとかスポンジが無くても身体を洗うことは十分可能だ。
先ずカツミが浴槽から出て身体を洗い始めた。
ただ、触れた感触が違和感だらけだ。
「カツミ。先っぽもキチンと洗って、くっついたトイレットペーパーのカスを流し取ってくれよ」
「分かってるわよ」
そのことをイチイチ言われるのは、カツミとしては少々不愉快だった。
もっとも、本来の身体の持ち主であれば、当然、言ってきて当たり前なのだが。




