表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/19

19.愛着!

 翌朝。

 ツカサとカツミは、身支度を済ませると、急いで、この世界に最初に送り込まれた場所へと急いだ。


 一度行った場所には転移魔法で移動できる。

 今回も、勿論、転移魔法での移動だ。



 ただ、ここからは未知のゾーンだ。

 実を言うと二人は、グリポスクスから王都と逆方面には、一度も行ったことが無かった。

 何となくだが、グリポスクスから王都チバニアン、さらにその先へと、勢いで突き進んでしまっていたのだ。



 そこから二時間くらい歩いた。

 そこで二人は、一本の巨木を発見した。

 たしかに、その期には金色をした洋ナシ型の実が生っていた。


 ツカサが、

「出ろ!」

 物質創製魔法生活必需品限定バージョンで、通信販売で売られているような、非常に高いところにも届く高枝切りを出した。


 これが生活必需品として認められることに、ツカサもカツミも、

『生活必需品の定義が非常に甘い』

 と思ったが、今更、それと突っ込んだりはしない。

 むしろ、この甘さに色々と助けられてきたのだ。



 高枝切りを使って、ツカサは実を二つ取った。

 すると、丁度、この時だった。

 一陣の風が吹いたかと思うと、二人の前に三級天使サクラが姿を現した。



「ようやく、ここまで辿り着けましたね」


「はい。では、やはり、これがカナエマンネンで間違いないんですね?」


「そうです」


「何と言うか、転生して送り込まれたところの、結構すぐ近くにあったんですね」


「そうですよ! それなのに、逆方向に行ってしまったので、私は、内心ヒヤヒヤしていましたから!」



 こう言いながら、サクラの頬は何気に膨らんでいた。

 やはり、すぐに正解に辿り着けるように、敢えてカナエマンネンの近くに送り込んでくれていたようだ。



「あと、女神ピルバラナ様が最初に仰っていた通り、食べるのは、お二人の片方だけで構いません」


「そう言えば、そう仰ってましたね。でも、片方が互いに元の身体に魂を戻してもらうようお願いし、もう一人が別のお願いをしてもイイんですよね?」


「そうです。世界征服でも、何でも願ってください」


「そこまで大それた願いは持っていませんけど……」


「どっちにしても、サッサと食べてください。この日が来るのを一番待ち望んでいたのは私なんですから!」


「はい」



 先ず、ツカサがカナエマンネンの実を口にした。

 そして、

「ボクとカツミの魂と身体を、互いに入れ替えて」

 と願った。


 すると、その直後、ツカサの視界には十七歳の女性の姿が、カツミの視界には十七歳の男性の姿が飛び込んで来た。

 元に戻ったのだ。



 続いてカツミがカナエマンネンの実を食べた。

 そして、

「私とツカサが、この世界では互いに幸せになれますように!」

 と願った。



 ただ、食べた時点での魂は別だが、食べた身体が同じなので、願いを聞き入れてもらえるかどうか、カツミは若干不安があった。

 しかし、その不安は杞憂に終わったようだ。



「了解。カナエマンネンの実を食べて願った場合は、天界の摂理に反しても叶えられるからね。きっと幸せになれるよ!」



 そうサクラは言うと、二人の前から、転移魔法でも使ったかのように突然姿を消した。

 この願いを受け入れてくれるってことだ。



「でさあ、ツカサ。これからどうする?」


「どうするも何も、今まで通り生きて行くつもりだけど?」


「そうなんだ」


「カツミは、どうしたいの?」


「私も、今まで通りがイイかな。それと、なんか、ツカサの身体に愛着が出来ちゃってね。今更、他の女性に渡したくないって言うか……」



 これには、前世で四十年間童貞だったツカサは驚いた。

 経緯はともかく、こんなことを言ってもらえる日が来るとは。


 ただ、考えてみると、自分にも同様の気持ちが芽生えていた。

 カツミの身体を他の男性に取られたくない。

 その身体の中に、今まで自分は納められていたのだ。

 彼もカツミと同様に、カツミの身体に、それ相当の愛着が芽生えていた。



「なんか、ボクも同じみたいだ」


「じゃあ?」


「うん。ボクもカツミと離れたくないって思っているよ」


「なら、このまま、付き合おっか」


「うん」


「でも、互いに身体に愛着が出来てってのは、言葉だけ聞くと、とんでもないね?」


「なんか、セ〇レみたいだな、これ。身体の関係みたい」


「そんなこと、一度もしたことが無いクセにね」


「だね。それも、お互い、四十年以上……」



 ❖  ❖  ❖



 天界では、この様子を、ピルバラナが下界を見るモニターで見ていた。

 そこに、三級天使サクラが戻って来た。



「ただいまです!」


「お疲れ様でした」


「既にピルバラナ様もご存じと思いますけど、二人は無事、魂と身体が元の身体に戻りました。それと、二人が幸せになりたいって願いを……」


「分かってます。でも、その願いは、もう叶ったようですね」


「ですね」



 ピルバラナがモニターを切って女神椅子に座った。



「でも、サクラさんのミスが無かったら、二人は、互いを愛することは無かったかも知れませんね。何が、何処で、どういった展開に結び付くかは、事が過ぎてからでないと、本当に分からないモノです」


「私も、そう思いました」


「だからと言って、ミスをしてイイと言うわけではありませんからね。今日も日本では救済しなければならない死者が出ているようです。次の人は……刈部瑠佳さんですね」


「上から読んでも下から読んでも『かるべるか』ですか?」


「絶対に、親が遊んで付けた名前でしょうね、これ。では、サクラさん。早速、迎えに行ってください」


「了解です!」



 サクラが、部屋を飛び出して行った。

 何時までもツカサとカツミにだけ構っていられない。

 天界だって忙しいのだ。


 今日もサクラは、地球からピルバラナが統治する世界に飛ばされて来た死者達の魂の転生を手伝う。


 果たして、今回は、どんな人が飛ばされてきているのか?

 それはそれで楽しみなサクラであった。

今までお付き合いいただき有難うございました。


最後に名前だけ出て来た刈部瑠佳(♂設定)は、次作『このヒロイン~』の主人公です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 完結おめでとうございます。 2人は異世界で幸せになれてよかったです。 [気になる点] 意外と短くてあっさりと終わったんですね。 [一言] 自作もTSものですね。楽しみです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ