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15.ツカサ復活!

 日が傾き、フリーマーケットを閉じて宿に戻ると、カツミは宿泊延長の手続きをした。

 恐らく、王都チバニアンにいた方が、商業上は有利だろう。


 しかし、既に王都までは転移魔法で行けるようになったので、ムリに王都の宿に宿泊する意義は無い。

 むしろ、王都での宿泊の方が、料金が高い分、マイナスになる。


 それに、どの道、今は宿を変えたくない。

 多分、ツカサが動きたがらないだろうから。



 カツミが部屋に戻ると、ツカサがベッドの上で横になっていた。

 こればかりは、もうどうしようもない。



「ツカサ、大丈夫?」


「大丈夫くない」


「一先ず、ロバートさんのところは、目標達成。あと、フリマは開いてみたけど、文房具じゃ全然売れないわね」


「やっぱり、識字率の問題とかもあるんだろうね」



 やはり、文房具を売るのはロバート商会に任せた方が良いだろう。

 魔法学院とか、使ってくれる人がいるところに持って行ってくれそうだ。



「たしかに、文字が分からなきゃ文房具なんて必要ないもんね。あと、薬も全然売れなかった」


「たしかに、第三者視点で考えたら、フリマで売られている薬って怪しいもんね。メーカー品ってわけでもないし」


「だよね。それから、情報収集は全然成果なしだった」


「でも、あの優しい女神様のことだから、ここからムチャクチャ離れているところにカナエマンネンが自生しているとは思えないんだよね」


「私もそう思う。それと、宿の方は宿泊延長して来たから。なので、明日も寝てて大丈夫だよ」


「ありがとう。助かる」



 この日も、ツカサは風呂をキャンセルした。

 カツミとしては、汗臭くなっているので入って欲しかったが、かなりキツそうなツカサを見ていると、強制はできなかった。



 ❖  ❖  ❖



 翌日、ツカサは宿で引き続き生理休暇。

 カツミは情報収集を兼ねてフリーマーケットを開きに昨日と同じギルド近くの路地に向かった。


 今回も文房具主体で粘ってみた。

 少々意地になっているところはある。


 しかし、意地だけで何とかなるモノではない。

 昨日よりは若干マシだったが、やはり、商品は然程売れなかった。

 カナエマンネンの情報も全然得ることは出来ず、この日も完全に不発で終わった。



 その次の日。

 ようやく、ツカサも動く気力が戻って来た。


 朝食を済ませると、ツカサは朝風呂に入って汗を流した。

 久し振りに身体がスッキリする。



「今日は、ボクもフリマに行くよ」


「じゃあ、完全にお任せしちゃってイイかな?」


「カツミはフリマに行かないの?」


「転移範囲を広げるために、王都から先に行ってみる」


「分かった。気を付けてね」


「まあ、何かあったら転移魔法で戻ってくるから」



 二人は食事、身支度を済ますと、ツカサはギルド近くの路地に、カツミは転移魔法で王都に向かった。


 ツカサは、カツミがフリーマーケットを開いた時と同様にシーツを敷き、隅をレンガで押さえると、台所用品を陳列した。

 カツミの失敗談から文房具を諦め、趣向を変えたのだ。


 プラスチックが使えないため、オール金属の鍋とか土鍋、木のまな板、完全金属の鉄フライパンや泡立て器、フライ返し等が対象となる。


 これらも、何故か生活必需品として出せるらしい。

 女神ピルバラナの甘い取り計らいに、ツカサは心底感謝していた。


 ただし、包丁・ナイフの類は出さなかった。

 この世界では、刃物だけは、鍛冶職人以外は取り扱えないことになっていたためだ。



「そのフライパンと鍋っておいくら?」


「フライパンは一律銀貨三枚、金属鍋は一律銀貨二枚になります」


「安いわね。その焼き物の鍋は?」


「銀貨五枚になりますけど」


「ん-ん。じゃあ、フライパンと金属鍋を一つずつ」


「ありがとうございます」



 台所用品であれば識字率は関係ない。

 取り敢えず、ツカサの店は順調に動き出した。



 一方のカツミは、

「転移!」

 王都チバニアンに出ると、そこからグリポスクスとは反対方向に向けて歩き出した。

 目指す街の名は、辞書機能で調べたところ、ティタニスと言うらしい。



 チバニアンの居住区の門を抜けると、道の両脇には農耕地帯が広がっていた。

 ここも、居住区と同様に防壁で覆われていたが、その広大な面積には、カツミも度肝を抜かれた。



 農耕地帯を抜けると、再び門があった。

 そこを抜けると、道の両脇は牧草地帯となり、酪農農家の家が点在していた。

 恐らく、臭いが出る関係で、居住区から離したのだろう。

 また、牧場には中型魔獣迄の侵入を防げるように有刺鉄線が張られていた。



 そんな中を、カツミは、ひたすら歩き続けた。

 一回でも行ったことがある場所が増えれば、それだけ転移先が増えるし、それだけ今後の活動が有利になる。

 今、カツミは、そのことしか考えていなかった。

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