表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第1話

 気が付くとハヤトは林の中にいた。

 ここは何処だろうか。異世界と言っても元いた世界と見た目の違いは見受けられなかった。空も太陽もハヤトの知っているものと変わらない。目の前でそびえ立つこの大木だって探せば何処かの国にあるだろう。


「さて、どこに向かおうか……」


 周囲の情報をエルに聞いて置けば良かったと少し後悔したが、今更のことなので諦めて歩き出した。

 (エルは魔物が出ると言ってたな。とりあえずレベルを上げよう。)


 落ちている丈夫そうな木の枝を手に取り2、3回素振りをしてみる。こんなことになるなら剣道部に入っておくべきだったか。学生時代の部活選択を後悔する。とは言ってもこうなることは予見しえない。無駄な事を考えながら森を進んでいると小さな緑色の丸い物体と出会った。


 液体と言うには形が崩れない。ぴょんぴょんと飛び跳ねている。これはきっと、スライムだな。ハヤトは持っていた木の枝でスライムを突っついてみる。当たった感触はあったもののぐにゃっとして気持ちが悪い。それでも、レベル上げの為だと割り切って、枝を振りハヤトは攻撃をする。


 5、6回ほど攻撃するとスライムを倒すことに成功した。緑色の丸かった体は溶けてバケツををひっくり返したように地面に広がっている。なんとも形容し難い。


 近くに、まだ数匹いるようなのでまとめて倒す。10匹ほど倒したところでハヤトのレベルが1つ上がった。


「コンッ」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ハヤト・ムツキ 男 無職 22歳

 レベル2

 

 HP:35/35 MP:15/20


 攻撃力:15

 防御力:15

 速 度:10

 知 力:10

 精神力:15

 幸 運:15

 S P:3

 スキル:女神の加護エイジス


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ハヤトはステータスを確認すると全体的に5ずつ上がっていた。知力は魔物を倒しても上がっていなかった。いくら筋トレしても頭が良くなるわけがない。そんなものなんだろう。SPはスキルポイントかな。今は割り振る先がないのでそのまま。


 倒したスライムの残骸に核のようなものがあった。使い道はわからないが、とりあえず拾っておいた。レベルも上がり、疲れも出てきたので夜中に寝る場所を確保する為、移動することにした。


「村が見つかればいいが……」


 独り言を呟き、森を歩いていると水の流れている音が聞こえてきた。考えてみれば、転移してから飲まず食わずだった。ようやく水にありつける。音の聞こえた先へ走って行くと、そこには川が流れていた。


 喉がグッと鳴る。本当に飲んでいいのか。見ず知らずの土地でしかもここは異世界だ。口にして良いのか不安があったものの体が水分を欲している。迷っても仕方ない。覚悟を決めてハヤトは両手で水を掬い口に流し込んだ。全身に水が伝わるのがわかった。


 1度口にしたら、あとは毒が入ってようが関係無い。ハヤトはお腹いっぱいになるまで水を飲んだ。あまりにも夢中だったので服はびちょびちょになっている。


 お腹がいっぱいになり動くのが億劫になってしまった。村を探して宿に泊まりたかったが、どうせお金も持ってない。仕方ない。今日は野宿にしよう。


 魔物の通らない場所を探して一晩を過ごした。寝ている最中、何度も体を突かれているような感覚があった。久々に激しく体を動かして眠気がヤバかったので無視をして眠る。エルからもらったスキルが無ければハヤトの冒険はここで終わっていただろう。


 目が覚めるとハヤトの体はスライムで覆い被されていた。通りで寒さを忘れて寝ることができた訳だ。立ち上がりスライムと体に付いた土を払う。ついでに、スライムは全て倒しておいた。ステータスを確認するとレベルは上がらなかったが、寝ているときに獲得したのだろうか。精神力が20に上がり、スキルには【遮断:Lv1】が追加されている。戦闘以外でステータスやスキルが獲得出来る事を予定外だったが知る事となった。


 顔を洗い、朝ごはん代わりに川の水を飲む。今日こそは食べ物にありつきたい。睡眠を取ったことで体は軽くなり、ハヤトはやる気に溢れていた。足の裏にマメが出来なかったのは、きっとエルのスキルのお陰なんだろう。エルに感謝をしつつ、ハルトは森を進み何処かにある村を目指した。


 村に着くまで、さほど時間は掛からなかった。森を抜けるとすぐに村があり、転移場所からも近い。エルはちゃんと村の付近に送ってくれていた。


 早速、村に入りお金を入手する情報を探す。歩いていた青年に話しかけると魔物の角や皮を道具屋が買い取ってくれると教えてくれた。集めておいたスライムの核を握りしめ道具屋へ急ぐ。いい加減空腹だ。


「いらっしゃい。お客さん初めてだな。こっち来い」


 ガタイの良いスキンヘッドの男が呼んでいる。見るに、店の主人なので心配はないがちょっと行きたくない。ハヤトは聞こえなかったことにして商品を選ぶフリをした。


「おい、聞こえてるだろ。ここには俺とお前しかいない」


 こちらが、スルーしたこともお構いなしに再度呼びかけてくる。


「ですよね……」


 仕方がないので、諦めて話しをすることにした。


「分かればいいんだよ。お客さん、渡来人だろ。俺が色々教えてやる」


 道具屋の主人だから特別に渡来人わかった訳ではない。ハヤトの格好を見れば誰だって気づく。白いTシャツにジーンズの姿の人間はこの世界では稀な格好だ。


 道具屋の主人は、ハヤトに買取の話しや宿屋の場所を教えくれた。話して見ると案外優しい人だった。途中、笑いながら肩をパシンパシンと叩かれていたのでスキルが無ければ、今頃肩は真っ赤になっていただろう。

 スライムの核を買い取ってもらったお金でこの世界で馴染む服装を揃えた。お金が出来たので今夜の寝床を確保できる。


「また来いよ。今度は、いいお店の話しをしてやる」


 いいお店。夜のお店の話しだろうか。気になるが、またの機会にしよう。今夜はお腹いっぱいご飯が食べたい。道具屋の主人にお礼をいいハヤトは宿屋に向かった。


 宿屋で部屋を取ると2Fに案内された。上等なベッドとまではいかないがフカフカの枕に布団。風呂で汗を流し、道具屋で買っておいた服に着替えた。村に入ったとき、ハヤトの格好は少し浮いていたがこれで村人と変わらない。ステータス欄を村人と修正して欲しい。少し休憩をして1Fの酒場に降りた。


「兄ちゃん、初めて見る顔だな。いっぱい食べていってくれよな」


 服装が村人と同じでもこの村自体は広くないので皆の顔が分かるようだ。ドリンク以外は宿賃に含まれているので店主のおすすめを出してもらう。

 1つ目の村の到着記念にビーと言うお酒を1杯頼んだ。多分、ビールだ。記念というのは飲む口実が欲しいだけで実際はなんでもいい。見張っている人もいないのに理由をつけるのは性分なんだろう。


「飲みっぷりがいいな。俺に1杯奢らせてくれ」


 店主の計らいに喜び、その後5、6杯のお酒を飲んだ。商売上手な店主だ。

 (女神様、今日だけはお許し下さい。)

 これから幾度と繰り返されることとなる"今日だけ''を女神様にお願いする。明日は飲み過ぎません。


 部屋に戻るとハヤトはすぐにベッドに入った。お酒が入っているので寝るまでに時間は掛からなかった。綿の入った暖かい布団。野宿した昨日と違い、心地良い眠りとなった。


 村に来てから数日、森でスライムを倒して生計を立てた。たまにスライムの攻撃が当たることもあったがダメージを受けることはなかった。道具屋の主人とは毎日通っていたせいか仲良くなっていて、今ではハインツと名前で呼んでいる。レベルも4まで上がりステータスも順調に伸びた。相変わらずSPの使い先は開拓出来ていない。


 魔法がある世界だというのに、こちらに来てからというもの1度も分かりやすい魔法を見ていない。エルの転移や攻撃の効かないこの力は魔法で間違い無いが、そろそろ火や風の様な魔法をお目にかかりたい。そろそろ、ハインツが教えてくれた街、レンブルクに行ってみる事にしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ