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月と地球と宇宙人  作者: 会員壱号
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プロローグ イブ

初めての投稿となります。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

 ――私たちは今の生活に満足していた。


 実りある豊かな大地と、勇ましく頼りになる相棒や沢山の仲間たち。それらが集まり、自分たちはこの世界を生きている。


 そして何よりも彼が見つけた――私たちの宝物。


 「ウホホホ、ウホ?」

 「ウホウホ」


 彼の目の前にあるのは、木が宿す不思議な力。冷えて動かなくなる体を温め、普通なら口に入れる事も敵わない食べ物も、極上の物へと変える事が出来る。 

 それがどういう物であるのかは、全く分からなかったけど、これが私たちには絶対に必要な物だと――心のどこかで分かっていた。


 そして私たちはその不思議な力を使い、仲間たちを増やしていく。


 暫くすると私と彼の間にも子は生まれ、やがてこの子がまた私たちの様に子を作っていく。そしてその子たちがまた子を作って、この世界で幾久しく生きて行くのだだろう。


 「ウホホ……ウホウホ」

 「ウホホーン」


 ――だがそれは私たちの勘違いだった。


 いつの頃からは分からないが、体の動かすことが出来なくなった仲間が増え始めた。今も私たちは一人の仲間を運びながら、その動かない体を不思議な力を宿した木に近づける。

 そうすると、その運ばれた仲間は、少しだけ元気になって体を動かそうとする。だがそれは本当に少しだけで、前のように元気にはならない。 


 その仲間は瞬きするように不思議な力を見つめ、次第に瞼が閉じるように降りてくる。そうなると、もうその仲間は二度と動かない。それを見ていると私の目には水が溢れ、鼻の奥がツンと痛くなる。それは他の仲間も同じようだ。


 だけど――私たちにはどうする事も出来ない。


 近頃はこの辺りの食べ物が減って来たのか、私たちはまともに腹を満たすことが出来ないでいる。他の生き物の骨を砕き、それを腹に入れる。そこらにある緑の生き物を不思議な力に近づけ、口に含む。私たちは、そうやって何とか腹を満たそうとしていたが、仲間たちはどんどん目覚める事のない眠りについてく。


 「ウホウホ?」

 「ウホ!」

 「ウホホホホオホホ」


 そんな時にちょっとした諍いが、仲間たちの間で起こった。


 今は彼と仲間たちが、これからの事を話している。仲間たちは自分たちが生きて行くには必要な事だとと言ってはいるが、それを彼は許さないようだ。そして私も彼のその意見に賛成だ。それだけは仲間として、やってはいけない事だと思っている。


 「ウホホ」

 「ウホ、フホ」


 どうやら彼の言い分に仲間たちは納得したようだ。例え自分たちが動けなくなったとしても、私は仲間たちを食べ物として見る事は出来ない。


 ――私はこの事に安堵して、重くなった体を癒す様に横にする。


 こうして私たちが何も口に入れる事が無くなって、だいぶ時間が経った。今では彼も地面の上の横になって、眠るように静かにしている。そうしていれば少しだけでも体が軽くなるからだ。


 だが、それもあまり長くはない――と、私は思っている。


 あれだけ沢山いた仲間の数は今では半分になり、動かなくなった体は他の獣に食われている。いつになるかは分からないが、そう時間も掛からず私もその中に入るのだろう。


 今はもう目の前に写る景色がグニャグニャに揺れて、頭の中がボーっとして凄く眠たい。もうすぐ私も目覚める事のない眠りに着くのだろう――そんな風に考え、瞼を閉じようとした時だった。 


 コン! ゴロゴロゴロゴロゴロ!


 何かが落ちる音と、それらが大量に転がる音が聞こえる。


 「ウホ?」


 すでに眠たくなっていた私もその音に驚き、重たくなった瞼を何とか開ける。そんな私の目に映るのは、彼が見つけた不思議な力と同じ色の石だ。


 「ウホホ?」


 私はこの石は何だろう――そう思って、その赤く光っている石を手に取ってみる。


 彼の見つけた不思議な力……それは手に掴むことが出来ない。でも同じように輝くこの石は、自分の手で触る事が出来る。思った以上の柔らかさに驚きながらも、よく見る為に顔を近づける。


 「ウホ!!」


 私は思わず叫ぶような声を上げる。何故ならこの赤い石からは、不思議な匂いがある事に気づいたからだ。それは私のボーっとする頭を目様す様に刺激的で、喉の奥の方からダラダラと水が溢れてくる。


 ガブッ!


 私は居ても立っても居られなくなり、思わず手に持っていた赤い石に齧り付いてしまう。赤い石は欠けるように砕かれ、その中からは味わった事のない水が染み出してくる。私はそれを無我夢中で咀嚼し、腹の中に収めていく。


 「ウホー!」 


 石とはまるで違う瑞々しい食べ物。頭の先から痛みが走り、喉の奥に感じたことのない感覚で満たされる。私は叫び声を上げながら、自分の手に持っていた『実』を食べ終えると、近くにある『実』を再び手に取り貪り始める。そして、それは周りにいる仲間たちも同じで――彼もそうだった。 


 「ウホ?」

 「ウホホ、ウホホ」


 彼もその『実』を食べながら、私の方へと歩てい来る。どうやら彼もその『実』のおかげで元気になったようだ。その事に私はとても嬉しくなる。


 嬉しくは、なるのだが……。


 「ウホホホォォ」

 「ウッホォ」


 彼を見ていると、何故か体が火照る感じがする。そしてそれは彼も一緒のようで、顔が赤くなり私の体をチラチラと……見たり見なかったりしているのだ。 


 「ウホォ……」


 私は彼のその熱い視線に耐えられなくなり、近くにあった大きな葉で自分の体を隠してしまうのだった。

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