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第零話 終わる世界

 21世紀も折り返しに差しかかった頃。

 月に資源採集基地を作り、念願の宇宙進出を果たした人類は、増え過ぎた人類の棲み家を求めて、まずは火星を人の住める星にすべく、【星樹(スターツリー)計画】という惑星環境整備計画を立案し、遺伝子改造で2つの新しい種族を作った。

 火星の極限環境にも適応し、土壌を豊かにする適応型土壌開発改造球菌【緑青源素(ろくしょうげんそ)】と、惑星環境整備計画の要であり、成長する土壌さえあれば、自己進化を繰り返して周囲の環境に適応し、無限に種を増やしていく、自己進化型汎用改造植物【星樹】である。

 人畜無害の細菌と植物による、人の手を介さない惑星環境整備(テラフォーミング)の自動化こそが、【星樹計画】の骨子であり、開発者達の思惑通り、【緑青源素】と【星樹】は互いに融和して、理想的とも言える相互補完関係を作り上げていた。

 しかし、多くの科学者達は、自分達の作り出した【星樹】の能力を見誤っていた。

 化学物質や根、花粉、そして共生関係にある細菌の【緑青源素】を介して、【星樹】は急速に他種の植物と情報伝達を行い、植物という種のネットワークを作り上げて、ある種の自意識を獲得していたのである。

 人類を、植物にとっての危険生物と判断した【星樹】は、火星に打ち上げられるまでの間に、実験で繰り返し接触させられた【緑青源素】を体内に取り込み、自分の持つ自己進化能力を継承させて、【緑青源素】を繰り返し進化させ、病原性を持たせることに成功した。

 そして、自分の体内に蓄積・濃縮した病原性を持つ【緑青源素】を、研究用に各国へと定期的に持ち込まれた自らの分木(わけぎ)や種子、実を介して増殖・拡散し、火星への打ち上げ前日に、全世界規模の細菌感染、パンデミックを引き起こしたのである。

 生物が病原性を持つ【緑青源素】に感染すると、免疫力が低下している状態で何らかの重傷を負った時、その傷口から植物のコケや蔓が生える、樹化(ツリード)と呼ばれる症状を発症する。

 そして、この樹化症状が全身に広がると、その生物は自意識を失って【星樹】の意志に従うだけの、【樹人(ツリーマン)】や【樹獣(ツリーデモン)】と呼ばれる、動く屍と化した。

 【星樹】の打ち上げ前日も、世界各国の病院の重傷病者達が最初に【樹人】と化し、【樹人】に傷付けられた普通の人々が、また新たに【樹人】化するという死の連鎖が繰り返され、世界各国は瞬く間に混乱し、荒廃した。

 多くの人類が突如出現した【樹人】や【樹獣】に怯え、神に慈悲を請い、文明が崩壊しつつある世界。

 その荒廃した世界で、【樹人】や【樹獣】を畏れずに、未来への希望を信じて己が道を突き進む人々がいた。

 【星樹】から自己進化能力を受け継いだ【緑青源素】と適合し、心身を進化させた結果、特殊能力を持ってしまった一部の人類。

 【樹人】や【樹獣】と戦う力を有する、緑青色の眼を持つ者達。

 後世の人々は言う。

 彼ら彼女らこそが、人類という種の希望、【緑青(ヴァーディグリス)(アイズ)()生存者(サヴァイバー)】であると。

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