魔王と一緒に観るアマーナちゃん異世界転生紀行①「ケンダマバトラー・甘菜健」
ケンダマバトラー 甘菜健
第71話 決戦・基地崩壊・フトシ死す!
『ねえ魔王聞いていい?』
『どうしたのだ』
『なんか題字の後にサブタイトル出てきたんだけど、これ本当にアマーナちゃんが転生した世界なの?』
『そうだぞ、アマーナの魂を追跡して到達した異世界から情報を拾ってきている。間違いない』
『なんか子供向けアニメっぽいんだけど?』
『よく分からんことを言う……あ、なんか映ったな』
俺っち、甘菜健。この町、いや。この県内でナンバー1のケンダマバトラーさっ!
『ナレーションと同時に出てきたこの生意気そうな子供がもしかして』
『恐らくはアマーナの魂だろう、記憶を引き継いでいるはずだ』
『そうか……。”俺っち”とか言ってんぞ」
『声色が変わってはいるが、声も同じだぞ』
『なんかメタいな』
こっちが同じクラスの萌子ちゃん、クラスのマドンナで、ピアノが得意、最初は挨拶をする程度だけだったんだけど。前にたまたま居合わせた時にソードタマー団の強襲バトルにあって以来一緒にいるんだ。ぐふふ。
『ぐふふって漏らしたぞ』
『気持ちはわかる』
『……。なんにせよ、ホビーアニメっぽい世界なんだな』
んで、こっちは親友のフトシ。ずっと一緒だ。
『あんまり語ってやらないんだな』
『ずっと一緒って、サブタイからしてこの子今回で離脱しそうなんだけど』
俺っちたち3人は、ひょんなことから悪徳ケンダマ企業のアジトを突き止め、なんやかんやあって潜入する事ができたんだ。これまで観てきたみんなはもうだいたいわかるよな!?
『説明がざっくりしているな』
『わかるよな。ってナレの意味よ……
あと企業のアジトって、それ本社なんじゃ?』
「遅かったなぁ。甘菜健くん!」
「まさかそんな……、悪の組織のリーダーがお前だったなんてーー」
「ふはははは! 初めまして、私がリーダーの吉田だ」
「初めまして」
『初対面じゃねぇか』
『人違いしてたのであればちょっと恥ずかしいな今の』
「ふっ、もはや語ることもないだろう。いざ勝負だ!!」
「ああ! お前達なんかに話す口は持たないぜ! やってやるぜ!!」
「「ケンダマバトルだ!!」」(二人のカットイン)
「いいわ、問答無用よ!! やっちゃいなさい健くん!!」
『もうとことん説明省いていくからアマーナちゃんが血の気が多い少年にしか見えねぇ』
『俺としてはテンポの早い展開は嫌いじゃないぞ』
『さっき転生したばっかで71話な時点で早いってレベルじゃないんだよなぁ』
「では、ケンダマジャッジポールは我が社のものを使わせてもらおう」
「好きにすればいいわ!」
ジャッジポールは。大きなケンダマの形をした装置で、二人のケンダマの技を採点してくれるハイテクな機械なんだ。みんなはもう知ってるよな!
みんなお年玉はこれにつぎ込むんだぞ。
おもちゃ屋さんに売ってるから、どうしても欲しい場合は親御さんにねだり倒すんだ!
『販促があからさま。と言うか誰宛のナレなんだこれ』
「まて! あんたの会社のものなんて信用ならないぞっ。不正されちゃかなわない。
だから、俺の持ってきたこの別会社のジャッジポールを使わせてもらうぞ!」
「やるわねフトシくん!」
「まってくれフトシくん!」
「健くん? なんだぞ?」
『語尾』
「その会社のジャッジポールはネットでいい評価を受けていない。それに散々フトシくんが使い倒してるから壊れてないか不安だ!
だからこのさらに別会社の新品のこれでジャッジさせてもらうぜぇぇっ!」
「さすが健くん!! その箱かして、私が組み立てるわ!!」
『信用ゼロだなフトシくん。ああ、かなり落ち込んでいる』
『お年玉を全否定されたんだからそりゃあ凹むよな、と言うかアマーナちゃん親友に厳しすぎない?』
『俺としては全方位に全力でイエスマンな萌子ちゃんの方も気になっているところだ』
『なんかずっと語気強いよなこのマドンナ』
「な、なんてこと!?」
「どうしたの萌子ちゃん!?」
「電池が別売りなのねこれ!!」
「ぬかったぁ!!」
「フハハー!! これを使うと良い!!」
「あ、新品の電池だ!!」
「ありがとう吉田さん!!」
「うむ!!
あ、ゴミは預かるぞー!! そっちの空箱はどうする!?
そうか、じゃあはい、捨てておくぞぉ!!」
『面倒見の良い優しい大人ではないか』
『うん……。この人達”!”付けないと話せねぇんかな』
「起動したわ!」
「よっしゃあ! 勝負だ吉田さん!」
「よかろう! ルールにこだわりはあるかな!?」
「へっ! 俺っちにそんなものはない! 吉田さんの好きに決めちまって良いぜ!」
「(キラン)ふっふっふっふ。そう言うのであれば、今回は4回勝負と行こうじゃないか!」
「な、なんだと!?」
ケンダマバトルは交互に技を披露していくのはみんな知ってるよな?
早さ、技、……とかもうみんな知ってる採点基準で点数を出して。
もういつもみたいな感じで合計点で1回毎の勝敗を決めていくんだ。
だけれど、みんな知ってる通り俺っちの技はいつもの最強技は3回勝負分の構成でしか考えられてない!
くっそう〜! どうしてバレたんだ!!?
『みんな知ってるからだろ……』
『ん? 1回戦分増えたって、これって結局勝てるのではないか?』
「では先攻は私からだ!」
「はーい」
『良い返事』
<コッッカッ! トッ! ト! ト! カッカ! ヒュンヒュン! コッコッコ! ポス! >
「ヨシダサン 1カイメ 89テン」
「おお! 結構良い点数でたぁ!」
「くそー! やるじゃないか吉田さん!」
「上手!」
「上手よ吉田さん!」
「ありがとう!」
『和気藹々としているな』
『おもちゃ会社の偉い人なんだし、子供と遊ぶの好きなんだろうね』
『しかしなんというか、それまでの掛け合いと比べると随分と地味に感じてしまう競技だ』
『こういうのって、やったことない人や興味ない人からするとすごさが伝わりにくいからなぁ』
『喋ってるうちにも4回目が終わろうとしてるぞ』
『バトルパートがかなり短い』
「くっくそぅ! 23点だと!?」
「甘菜くん! 君の弱点はおきまりの3つの技に頼り切ってレパートリーが限られてしまっているところだ!」
「ガーン! 悔しいぜ!」
『おお、師匠ポジっぽい展開だ』
『ガーンとは』
「シュウケイ 1タイ3で アマナサン ノ カチ デス」
『だよなぁ』
「よっしゃあ! 勝ったぜ!」
「おめでとう! じゃあ、賞品はっと、どうしようかなぁ」
「賞品……? 何を言っているの?」
「僕たちの目的は賞品をもらうことじゃないんだ」
「もうみんな知っているはずだぜ。俺っち達がここに来た理由」
「!?」
「この会社を潰すことよ」
「うん、物理的に」
『悪鬼羅刹の類じゃん』
『ホラーだなこれ』
こうして俺っち達は、アジトの自爆装置のボタンを押して、アジトを爆破したぜ!
『どうしてあるかな自爆装置』
アジト跡地である瓦礫の山のてっぺんに一人の男が立っているぞ。
誰かな? そう、みんな知ってるね。
「ふぅ、瓦礫の隙間に奇跡的に収まってなんとか生きてたぜ!」
「健くーん!」
「あ、萌子ちゃん! 無事だったんだね」
「うん。瓦礫の隙間に奇跡的に収まってたみたいでなんとか生きてた!」
「やれやれ酷い目にあったよ」
「吉田さん!」
「まったく。瓦礫の隙間に奇跡的に収まってなかったらひとたまりもなかったよ」
「あれ、フトシくんは?」
「……」
「ダメだったみたいだね」
「うん」
『ドライだな』
『いや、探せば見つかるやつだろこれ、瓦礫の隙間に奇跡的に収まって生きてるだろ絶対』
「あ、あの車!」
「今市博士だ!」
「今市博士ぇーー!」
「クヒヒヒヒヒ……! イマイチィィィィイーーーー!」
『うわびっくりした、あの白衣のハゲたおっさん車から顔を出したと思ったら急に叫んだぞ』
『何かがいまいちだったのか……? それとも自分の名前を叫んだのか。
どちらにしても意味がわからないが』
『こえーななんか』
「わははは! 相変わらず気が触れてるぜ!」
『率直だ』
「君たち、どうやら悪徳企業をきちんと爆破出来たみたいだネェ!」
「うん」
『こいつ黒幕じゃねぇのか?』
「さてと、人数は……、いち、にー、さん。ようし! 全員揃ってるみたいだネェ!」
『吉田さんが含まれておる』
『やべーよ。この博士、個体を識別できてない!』
「博士ぇ、俺っち達も乗せてってよ!」
「イマイチィィィィイ!!」
「みんな乗ろうぜ!」
「ええ!」
「わかった」
『会話が成立してるように思えなかったが』
『吉田さんもう自然についてってるな……』
俺っち達はこうして悪の組織3社を博士の指示と協力のもと全てぶっ潰すことができた。
これでケンダマ業界に平和が訪れることだろう。
『指示と協力のもと、って引っかかるわ」
『博士の命令で会社3つ壊して回ったんだな』
さぁーて、世界救ったし。この世界はもういいでしょ。
俺っち、……じゃなくて私ってばまた図らずも世界を救ってしまったわ。
『ああ、中身アマーナちゃんだっけ』
『俺も途中から忘れてたぞ、過激すぎて』
次はどんな世界に行って救ってやろうかしら。くふふ。楽しみー!
END
『探査魔法はここで途絶えたようだ』
『清楚のかけらも感じないけど、魔王も興醒めだろ?』
『アマーナは気苦労をこうして晴らしているんだな。
いいじゃないか、こうして転生しまくって成長していくのも悪くなかろうよ』
『もう保護者目線じゃん。それより、転生ってそんなスナックをつまむ感覚でバンバンできるものだったのかよ』
『転生についてはそこまで詳しくないのだが、どうやらアマーナは使いこなしているようだったな』
『なんか、すげーエンジョイしてたよな……。あーあ。俺もこの世界を楽しもうかな』
『うむ、それがよかろうさ』
萌子ちゃんは日頃相手の話を理解しないまま当たり障りのない合いの手入れるタイプ