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グレースネヘス  作者: たつG
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27 8日目:桟橋の始まり

27 『8日目:桟橋の始まり』


ハンマーの猛攻を掻い潜りながら、寛人は石像の倒し方を模索した。

そこで寛人は純の所に行ってスキルについて確認した。


「純、密閉空間の大きさはどれくらいだ?」

「1辺が3メートルの立方体になる。」

「奴の足は入るか?」

「足首なら入ると思う。」

「ならあいつの両足首を閉じ込めてくれ。」


純は寛人の指示で石像に近づき、まずは右足首をスキルで捉えた。

石像は捉えられた足を引き抜こうとしていたが、ビクともしなかった。

続けて左足首も捉えると、石像は仁王立ちでその場に固定された。


「秀吉、腹部のコア付近に燃料を掛けてくれ。」

「分かった。」


秀吉が石像の腹部に燃料を広げると、竜輝に指示を出して<Fボール>で腹部を炎上させた。

その次に寛人は彰のもとに駆け寄った。


「彰、お前のスキルで急冷してくれ。」

「あいよ。」


彰は腹部目が駆けて槍を投げると、炎上していた箇所は一気に氷に覆われた。

怒った石像はその場でハンマを振り回した。

全員距離を取っていたので、被害は全くなかった。

石像が動くたびに腹部の氷はボロボロと落ちていき、素手の石像同様に、変色しボロボロになった表面が露わになた。


「聖也、俺が今からスキルを打つが、ダメだったら、お前のスキルをねじ込んでくれ。」

「任せておけ。」


寛人は聖也に自分が失敗した場合の保険をかけ、一呼吸おいて腹部に斬撃を飛ばした。

寛人の予想に反して、斬撃は胴を真っ二つに切り裂いた。

石像の腰から上が地面に落ちたが、石像はハンマー地面を打った勢いで飛び跳ねて、後ろに下がってメンバーのもとに届くと、そのままハンマーを打ち降ろした。

そこはかなりの人数が固まっていたため、ごたごたで逃げ切れなかった者もいた。


「みんな川の方へ!」


石像はその場でハンマーを左右に振っていたので、寛人は川の方へ一旦逃げるように指示した。

石像は先ほどの様に反動を付けながら川に近づいてきた。

その途中で自らの足をハンマーで打ち込むと、足は地面に埋まった。

この衝撃で地面に亀裂が入ったが、誰もその変化に気づかなかった。

更に石像は反動をつけて地面を叩くと、地面の一部が割れた。

割れた地面に立っていた寛人・翔太・梓紗・菫・灰島がそのまま落ちていった。


「俺に掴れ!」


翔太は叫ぶと壁に青の矢を撃った。

寛人・梓紗・菫は翔太に掴ったが、灰島は掴ろうとしなかった。

明らかに定員オーバーだと分かっていたからだ。


「私のことは気にするな。」


灰島はそう言うとスキルを使い地面と石像の首を蔦でつなげた。

石像はその勢いで引きずりおろされた。

翔太は瞬間移動で矢に掴ったが、下で石像が片手で壁を掴み流れに耐えていた。


「翔太、二人は絶対に助けてやってくれ。」

「寛人やめろ!」


寛人は石像のもとに飛び込むとスキルで壁を掴んでいた手の指を切り落とした。

石像の手は壁から剥がれ、寛人と灰島と共に下流へ勢いよく流されていった。


「寛人、絶対にこいつらは助けるぞ。」


翔太は涙をこらえ、二人を引っ張り壁に掴らせた。

二人も必死に壁を掴んだ。


「咲田くんごめん…。」


晴花と同じバレー部である梓紗は、仲間の好きな人に助けてもらったことが罪悪感を強めた。

その後三人は復活した大輔のスキルで引っ張り上げられた。

梓紗はすぐに晴花のもとに行って頭を下げた。


「晴花ちゃん…、本当にごめん…。

咲田くんに助けられてばかりだったのに、また咲田くんを助けられなかった…。」

「いいよ梓紗。あいつ自己犠牲が趣味なだけだから。」

「本当に…ごめん…。」


梓紗は晴花を抱きしめ涙を流して謝った。

晴花も仲間が倒れていく姿は見慣れたはずだったが、涙があふれてきた。

その時梓紗のもとに通知が来た。


「これ、みんなが言っていた覚醒の通知?」

「そうだよ。スキルは…」


涙を拭いて二人で晴花の端末を覗きながら、梓紗をスキルを確認した。

そこには味方の身代わりになる式神を出現させると書いてあったので、梓紗はすぐに式神を出した。


「咲田くんを、咲田くんを助けて!」


梓紗は必死で叫んだが、式神に反応はなかった。


「きっともう復活してるからだよ。でもありがとう、梓紗がこんなに私たちのことを思ってくれていたことは嬉しい。」


梓紗は首を横に振り晴花に話した。


「うんん。こんなダメな私が戦いも部活を頑張れたのは晴花ちゃんや咲田くんのおかげだから。」

「全然ダメなんかではないよ。スキルだって、今後はみんなの希望になるし、

部活だって、梓紗は私たちのエースなんだから。」


晴花は梓紗の頭を撫でながら慰め、梓紗もだいぶ落ち着きを取り戻した。

他のメンバーはすでに王国軍とともに封印石を破壊するために、橋の入り口に固まった魔物を討伐していた。


「行くよ梓紗ちゃん。」


梓紗は晴花の声に頷くと二人はみんなに加勢しに向かった。

橋の上は人と魔物が入り乱れて、元旦の仲見世のようだった。

橋の入り口には何重もの壁が立っており、その上から魔物が矢や毒などを飛ばしていた。

王国軍は梯子をかけて対応していたが、次の壁まで間隔が空いてるため、兵士数人ずつで飛び込んでいっても効率が悪く、壁を壊さなければ進めない状態だった。


「アンドリューさん、この壁どうするんですか?」

「今壁を壊すための丸太を用意させている。準備には1時間以上かかる。」


聖也はアンドリューのもとへ行き、状況を確認した。

分厚い壁は鎚部隊でもそう簡単に壊せれ物ではなかったため、壁の外と上の敵を倒しながら、丸太を待っていた。


「聖也、今の状況は。」

「寛人、戻ってきたか。あの石像はどうなった。」


復活した寛人は聖也を見つけて駆け寄った。


「結界の外まで流されたから、<シアタ>の日が昇ると消滅するだろう。それより状況は?」


寛人は途中で息絶えたが、遠くまで流されていく石像を見ていた。

少なくともこの戦場に戻ってくることはなさそうだった。


「今王国軍が壁を破る丸太を用意するのを待ってる。」

「急がないと朝になるぞ。みんなを集めよう。」


寛人はリーダーに号令を掛け、話し合いを始めた。


「今のままだと丸太が届いても封印石に届く前に朝になってしまう。」

「なんか案でも浮かんだのか。」

「案ではない、俺たちだけで壁を越えて強引に突破する。」

「突破するって、壁の向こうの戦力がどれぐらいか…。」

「あぁ、だから前もって<Mボール>などを投げて、向こうの戦力を削ってから突っ込む。」

「それしかないのか。」

「壁を超えるには今のところそれしかない。幸い王国軍が掛けた梯子が今も残っている。」

「2枚目以降の壁はどうする。」

「<Rボール>で段差を作って登る。

みんなに決めて欲しい、俺は今日の犠牲が無駄にならないように、今日の内に封印石を破壊したい。」


みんな最初は悩んだが、気持ちは寛人と同じだった。

なので無謀とも思える寛人の案に反対する者はいなかった。


「早速行動に移すぞ!」


リーダーはチーム内のメンバーに作戦の内容を伝え、何本も掛かっていた梯子の内適当なものの前に着くと、一斉に<Mボール>を壁の向こうへ投げた。

そして梯子を上っていくと、下では半分ぐらいの魔物が毒にやられていた。


「みんな突っ込め!」


寛人の合図で飛び降りると、魔物を次々と倒していった。

それでも一人当たり数十体の魔物を相手にしなければならないため、消耗も半端なかった。


「野上くん、部活の時の私と今の私、何が足りないと思う?」


菫は同じC班の将文に声を掛けた。

気持ちの整理はついていたが、それでも物足りなさを感じていた菫は、将文に聞いていみた。


「良く分からないけど、部活中鬼の様な楽間さんならこんな質問はしないと思う。」

「鬼って何よ。…でも何か分かった気がする。

(私はこの世界だと結局みんなを頼るだけで、自分を信じていなかった。

形だけ前までの自分に戻ったつもりだったけど、今なら…。)」


菫の鎚の勢いが増してきた。目の前の敵をなぎ倒していき、筋肉はパンパンに膨れ上がっていた。

そのまま登ってきた壁を殴ると、1発で壁に穴が開いた。


「あいつ1発で壁に穴開けやがった。」

「凄すぎ。」


横にいたD班の竜輝と実久はその威力に驚いた。

菫は更に3発壁を殴ると、3人が通れるほどの穴が開いた。

その穴を通って、王国軍が流れてきた。


「よしっ、次っ!」


菫は今度は反対側の壁に向かっていき、同じように穴をあけた。

そこからは壁の向こうにいた魔物が雪崩込んできたが、様々な属性ボールを使って、押し返した。

2枚目を打ち抜いたところで、菫の体は元通りに戻った。

壁と壁の間には対処できないほどの敵は出てこなかったので、王国軍の数で押していき、魔物が減ると菫が壁を壊すということを繰り返してた。


「だいぶ進んだが、まだ封印石には届かないのか。」

「マップ上だと次の壁を壊せば石があるみたい。」


なかなか封印石の見えない状況に寛人は対象焦っていた。

寛人の横で盾を使っていた将文は冷静に地図を見て答えた。


「みんなここが正念場だ、この壁の向こうに封印石がある!」


寛人はみんなに檄を飛ばし、士気を高めた。

魔物の数も減り菫が次の壁に穴をあけると、奥に光る石が見えた。


「聖也、彰、竜輝!」

「おうっ!」


寛人はリーダーに声を掛けると、四人は最後の力を振り絞り、一直線に封印石に向かった。

その後にメンバーも続いて行った。

だが封印石までの壁は厚く、なかなか手の届く距離まで行けなかった。

その間にも<ラテラ>はドンドン沈んでいき、朝を迎えようとしていた。


「お前たちもう戻れ、このままだと結界に閉じ込められるぞ!」


後ろでアンドユーが警告した。王国軍はすでに撤退を開始していた。

だが当然<ウィザラー>たちは1人として最後まで諦めなかった。


「誰が諦めるかっ!大輔どこだ!」

「すぐ後ろにいるよ!」

「俺を投げろ!」

「分かった!」


大輔は巨大な手で竜輝を掴むと、封印石目掛けて竜輝を投げた。

それを封印石の前にいた魔物2体が打ち返そうとしたのを、聖也と美郷が矢で阻止した。

そこで<ラテラ>は完全に沈み、周りは完全に闇に包まれた。

竜輝は暗くなったあと目を瞑り、封印石までの距離を測っていた。


「ぶっ壊れろ!」


そして勢いよく鎚を振り下ろすと、見事攻撃が当たり封印石を破壊した。

その瞬間結界は消えて、周りにいた魔物たちは灰になって消えていった。

晴れ上がった空を見上げて、一同歓喜した。


「やったぞ竜輝!」


寛人たちは竜輝のもとへ駆け寄ったが、誰よりも早く実久は竜輝に近づくと、そのまま抱き付いた。


「おまっ、よせって。」

「こんな時ぐらい格好つけんなよ。」


周りはそんな二人を見守っていった。


「俺たちだけで報告に行くか。」

「あぁそうだな。」

「邪魔したら悪いな。」

「いや待て、俺も行くぞ!」


寛人と聖也と彰はニヤニヤしながら三人で報告に戻ろうと話していたが、竜輝が呼び止めた。


「いいって、今の時間を大切にしろ。」

「みんなも洞窟に戻れよ。」

「先生も野暮なことは言わずに戻りましょうね。」


彰は竜輝に今日は大丈夫だと伝え、寛人は周りのみんなに帰還を促した。

聖也は冗談っぽく灰島と菊池に伝えると、二人はやれやれという表情だった。

そして竜輝と実久を残して、全員帰還していった。


〔寛人RP6〕

〔聖也・彰RP12〕

〔将文・菊池・楓RP13〕

〔秀吉・巧太・千佳・梓紗RP15〕

〔竜輝・省吾・純・勇樹・翠・深琴・美郷・晴花・胡桃・玲奈RP16〕

〔大輔・翔太・菫・寿葉RP17〕

〔灰島・実久RP18〕

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