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グレースネヘス  作者: たつG
26/41

26 8日目:石工の始まり

26 『8日目:石工の始まり』


「赤司、上から来てるぞ!」

「賀来くん、しゃがんで!」

「もう少しで穴が開きます!」


鎚部隊は連携を取りながら、今度は左足首を集中的に攻撃していった。

将文と大輔も敵の攻撃を随所にブロックし、鎚部隊をフォローした。

地道な攻撃の末、左足首も拳サイズの穴が開いたので、すかさず竜輝がスキルで殴打した。

石像は再び転倒していったが、その時手の平で玲奈を狙って押し潰そうとした。


「赤司さん、危ない!」

「きゃっ!」


大輔がプッシングで玲奈を弾き飛ばし、代わりに大輔が石像の手の下敷きになった。


「大輔くん、大輔くん!」

「赤司さんを…、守らないと…、俺が先輩に殺されるから…。」


大輔をそう言って息絶えた。


「…ありがとう、…大輔くん。(これ以上犠牲を出さないために…。)」


玲奈は泣くのをやめ、深呼吸して気持ちを切り替えた。

灰島は再びスキルで石像の首を抑え込み、今度はうつ伏せで倒れたので、地面を押して立ち上がろうとしていた。


「みんな手を狙って!」


玲奈の合図で鎚部隊は武器を持っていた左手首を狙っていった。

それは大輔を潰した手だった。

石像は地面をバンバン叩きながら抵抗した。


「(絶対に、勝って、みんなで、戻るんだ!)」


玲奈の鎚の先端が青くなり、その状態で石像を思い切り殴打した。

手首は壊れなかったが、何かが変わった気がした。

鎚部隊は違和感はあったものの、何が変わったか気付かないまま殴打を続けた。

そこへ寛人が戻ってきた。


「この石像縮んでないか?」

「嘘っ!?」


その違和感に気づいた寛人が指摘すると、鎚部隊は石像の頭の方に目を合った。

するときつく締めていた首の蔦に空間ができ、自分たちの身長の3倍近くあった頭部もジャンプすれば手が届きそうな大きさになっていた。

その時、玲奈は自分に通知が来ていることに気づいた。


「私のスキルでサイズが3割小さくなったみたい。」


通知を確認した玲奈が自分のスキルを報告した。

石像のサイズは3割ほど縮んだが、それでも3階建ての大きさだった。


「赤司、もう一回こいつを縮めてくれ!」

「分かった。」


玲奈がスキルでもう一撃殴打すると、更に3割縮み、元の半分以下となった。

ゆるゆるになった蔦から石像は頭を行いたが、両足首を破壊され立つことができず、四つん這いになった。


「このサイズならいける!竜輝、剣を持った手を吹き飛ばしてくれ!」

「おうっ!」


足首みたいに穴は開いてなかったが、それでもひびが入った状態で竜輝がスキルで殴打すると、左手首は破壊された。

片腕しか残っていない石像はただジタバタするだけだった。

その間に深呼吸をして集中した寛人は、頭部に斬撃を飛ばした。

今度は斬撃が首元まで進攻し、頭と首にあったコアを破壊した。


「残りあと2箇所だ。晴花聞こえるか?橘をこっちに。」

「分かった。すぐに行かせる。」


寛人は連絡を取っていた晴花に胡桃をこちらに来させるように指示した。

石像が残り2体いる状況で、スキルを使いすぎていたため、縮んだ状態ならコアを破壊できる人物を考えて、胡桃が思い浮かんだからだ。

胡桃はすぐに寛人のもとに来た。


「橘、残り2つコアがある。どうすればいい。俺たちのスキルはまだ温存したい。」

「えぇ。分かってる。」


二人は隣で暴れている石像をちらっと見て会話をした。


「コアがある位置の上側に少しでもひびを入れられたら、コアまで槍が届く。」

「分かった。俺たちが何とかするから、そこで準備をしといてくれ。」


寛人は竜輝と秀吉に声を掛け、石像の背中に乗った。


「二人は胸のコアの位置を削って、ダイナマイトで爆破してくれ、俺はさっき遣り損なった腰に行く。」

「了解」「分かった」


三人は分かれて位置に着くと、まず竜輝と秀吉はコアを位置を殴打しまくって少し窪みを作るとそこにダイナマイトを置いた。

寛人は腰に行くと剣2撃で×を作り、そこにダイナマイトを置いた。


「橘!頼んだ!」


三人が背中から降りるとダイナマイトが爆発し、それを見て胡桃は背中へ駆けあがった。

まずは肩甲骨にできた窪みの上で高くジャンプをすると、コアの位置を正確に串刺しにした。

更にそこから腰のコアに槍を投げ、軽く刺さった槍の柄を勢いよく飛び蹴りで踏みつけて、最後のコアを破壊した。


「漸く1体目だ。」

「橘は相変わらず凄いな。」

「キャー。」


1体目の石像を撃破し、寛人たちが喜んでいると、連絡を取り続けていた晴花が悲鳴を上げた。

一瞬何かが上を通過したような影が通ったので、上を見上げると、王国軍と共に<ウィザラー>が谷の方へ放り込まれていた。

飛んできた方向を見ると素手の石像が後ろにいたメンバーを襲っていた。

石像を倒すメンバーをこちら側に固めていたため、素手の石像に太刀打ちできないまま捕まっては投げられていた。


「赤司、スキルであいつを!」

「すぐ行く!」


玲奈はすぐに素手の石像のもとへ行き、残りの鎚部隊も後を追った。

だがすぐに玲奈も石像に掴ってしまった。

その状態でも玲奈は諦めずに2度石像にスキルを使った。

スキルを使い切って体力がなくなった玲奈は、何の抵抗も出来ずに地面に叩きつけられやられた。


「くそぉー!」


寛人は怒りに任せて首元に斬撃を飛ばした。

それはそのまま首のコアを破壊し、頭が地面に落ちた。


「ふざけんじゃねーぞ!」


竜輝がその落ちた頭をスキルで粉々にした。

スキルを使い切って倒れた竜輝のもとに翠がやってきて、竜輝に栄養食を食べさせた。


「ごめん竜輝、実久を守れなかった。」

「お前のせいじゃねー。」


栄養食を食べた竜輝はゆっくり立ち上がり、すぐさま石像の足元を攻撃し始めた。

頭をなくした石像だが、縮んだことでスピードが増し、まるで格闘技選手の様にキックやパンツを繰り出した。

見えてないので攻撃場所は定まっていなかったが、手数が多いので、近づくことが困難だった。


「君たちすまない。」


ボロボロになったアンドリューが寛人に近づいた。


「大丈夫ですか、アンドリューさん。」

「いや。私たち王国軍が不甲斐ないために君たちの仲間に犠牲を出してしまった。」

「それは大丈夫です。それよりアレクサンドラさんのフォローをお願いします。

こちらは私たちに任せてください。」

「何もかも君たち頼みで本当に申し訳ない。」


アンドユーは寛人の言う通りにし、アレクサンドラの支援に行った。

素手の石像は相変わらず暴れ回っていた。


「将文、あの攻撃止められるか?」

「試してみる、少なくとも重力は与える。」


そう言って将文は石像にタックルで突っ込んだ。

石像のローキックは将文の盾を捉えたが、将文は少し押されつつも何とか受け止め、さらに重力を与えた。

石像の動きは少し遅くはなったが、それでも鎚部隊が攻撃する隙があまりなかった。

将文は更に石像の攻撃を防御し、重力を付加した。

流石に石像の動きは鈍くなり、簡単に躱せるようになった。

その隙に鎚部隊が先ほどと同様に右足を集中して攻撃し始めたが、今度は両手を握り締め、地面を思い切り叩いてきた。

重力による重さも付加され、衝撃がすさまじく、近くにいた者は武器で体を支えて立っていた。

さらに次は足を上げて四股を踏むと、その衝撃で足元にいた鎚部隊は吹き飛ばされていった。


「なんて威力だ。これだと足元から崩すのも難しい。」

「俺に考えがある。」


聖也が寛人に近づいて、聖也の案を伝えた。


「やってみるか。」


寛人は戻ってきた大輔と彰と秀吉を呼んで、作戦の内容を伝えた。

三人は了解すると聖也は弓部隊を谷の方へ引き連れていった。


「みんな一斉に撃て!」


聖也が号令を掛けると石像を一斉に攻撃し、谷側に石像を誘導した。

谷まで十メートルの所で秀吉が燃料が入った瓶を打ち、石像の体全体に燃料がかかった。

そこに<Fボール>を投げて全身を炎で包んだ。


「あとは彰と大輔任せた。」

「よっしゃ!」


彰は石像の前方にスキルで氷を張り、大輔が巨大な手で石像を弾き飛ばした。

石像は勢いよく氷の上を滑って、そのまま谷を落ちていった。

聖也が谷を覗くと、落ちた石像が崖をよじ登っていた。

聖也たちは今度は谷から離れて石像が登ってくるのを待った。


「来たぞ!」


登ってきた石像は色が変色し、表面がボロボロとしていた。


「さっさと倒れろ!」


聖也が胸のコアをスキルで射抜き、竜輝と秀吉で両足首を殴打した。

石像が尻もちをついたところで、寛人が止めに腹部に剣を突き立てコアを破壊した。

見事な連携で寛人たちは2体目を撃破した。

だが、ほぼほぼスキルは使い果たし、肝心の玲奈のスキルも使い果たしているため、最後の1体は回復を待ちながらの長期戦になることを覚悟した。

寛人は一度落ち着いて、やられた仲間が復活するのを一旦また。

ものの数分で全員集まると、最後の石像のもとへ行った。


「アンドリューさん、アレクサンドラさんお待たせしました。

石像は私たちに任せて、封印石の破壊をお願いします。」

「あぁ、こちらは頼んだ!」


アンドリューとアレクサンドラは部隊を残兵を引き連れて橋の入り口に向かっていった。

最後ハンマーの石像は、英雄二人の頑張りで所々に傷を負っていた。


「今度はどうする。」

「あのサイズはさっきの作戦が通用しない。また初めみたいに足元から崩す。

鎚部隊のみんなまた一緒に付いて来てくれ!」


寛人は鎚部隊と共に石像に向かっていった。

石像が持つハンマーは面が直径2メートルほどあり、そのサイズだと盾部隊のガードは確実に破壊されるため、連れていくことはしなかった。

巨大ハンマーでの叩きつけは躱すことができたが、スイングされると避けられずに灰島と菫が吹き飛ばされた。

辿り着いた数名で足元を攻撃しようとすると、石像は飛び上がり、ハンマーを打ち下ろしてきた。


「なんだこいつ。俺らのパターンが読まれてる。」

「ならこちらのパターンを変えるだけだ。」

「でどう変えるんだ?」


竜輝に聞き返されたが、寛人は良い案が思い浮かんだわけではなかった。

試しに石像が飛んだタイミングで着地地点に<Rボール>を投げブロックを作ったが、そのまま踏みつぶされた。

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