表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グレースネヘス  作者: たつG
23/41

23 7日目:蜘蛛退治の始まり

23 『7日目:蜘蛛退治の始まり』


リーダーたちがいつも通り砦の会議室に入ると、アンドリューが包帯を全て取っていた。

それを横目に四人はいつもの席に座った。


「今日は君たちに2つ朗報がある。

1つは今日から英雄アンドリューが戦場に戻ることになった。」

「今まで待たせて申し訳ない。今日からまた君たちと一丸となって魔王討伐に精進するよ。」


この報告はかなりの吉報で、四人はもちろん隊長たちもかなり喜んでいた。

寛人は単純に戦力が増えることは喜んだが、英雄たちと接触する機会が増えることを少し危惧した。


「それともう1つは王都より資源と兵の援助が漸く届いた。

資源は各隊のテントに届いているはずだ。兵の補充については隊長同士で行ってくれ。」


マーティンは2つの報告が終わると、少し間を置いて、ため息をしたのち話し始めた。


「さて、本題だが。大量に発生した<ボカノス>の討伐についてだが…。」

「それについては私たちから提案があります。」


<ボカノス>は昨日戦った大蜘蛛の事で、戦った敵は全てライブラリに登録されているので、事前に名前を把握していた。

マーティンの話の途中で寛人が立ち上がり、マーティンに提案があると伝えた。


「なんだね、<ウィザラー>諸君」

「<ボカノス>の討伐は私たちに任せて欲しいです。

その代わり、王国軍には今日再び出現するかもしれない<イーボ>3体を討伐してもらいたい。

もし<イーボ>が出現しなかった場合は、昨日の封印石を破壊した地点で待機していて欲しい。」

「どうだね、英雄ブライト。」


寛人の提案を聞いたマーティンはブライトに意見を聞いた。


「私は構いません。昨日戦って分かったが、あの敵は彼らの方が適任です。」

「ブライトがそう言うなら俺も構わない。」

「もちろん病み上がりの私はみんなの意見に合わせますよ。」


ブライトが賛成するとアレクサンドラとアンドリューも賛成してくれた。

こうして予定通り、寛人たちが大蜘蛛退治で、英雄たちがそれぞれ1体ずつ<イーボ>を引き受けることになった。


「では<ウィザラー>の提案通り、<ボカノス>の討伐は君たちに任せた。

今夜の目標だが、まず<アイグネル草原>の出口にある封印石の破壊は必須で、

その後は進路とは反対となるが、<ジョヘイン洞窟>内の安全の確保をしてもらいたい。」

「その<ジョヘイン洞窟>とは。」

「この辺りで一番資源が取れる洞窟だ。魔物たちが身に付けている宝飾品の半分はその洞窟から入手している。

取り返すことができれば、魔王軍の戦力を減らすことができ、街も大いに潤う。」


これは寛人たちにとってもかなりプラスのことだった。

街に宝飾品が増えれば、みんなの装備を強化する機会が増えるため、一気にパワーアップすることができる。


「<ジョヘイン洞窟>の攻略は私が受け持とう。」

「よし、なら英雄アレクサンドラに任せた。

部隊の編成については、英雄が3名に戻ったので、初日の編成に戻す。今日の会議は以上だ。」


敬礼をすると四人はみんなのもとに向かった。

寛人はメンバーの元に戻ると、自分たちが提案した作戦が通ったことを伝えた。

また、アンドリューが復帰したので<イーボ>の討伐は完全に王国軍に任せることになったことを伝えた。

これには一同安堵の表情だった。


「まだあの蜘蛛の<ペラ>の正体がわかっていない。安心するのはまだだ。」


みんな気合を入れ直して、馬に乗り戦場へ向かった。

寛人たちの開始場所は、また最北端であった。

他の英雄たちの部隊は、砦の防衛と<ハンデウィーズ森林>の防衛に均等に兵を出し合ったので、

<アイグネル草原>まで来た兵士の数は、昨日とそれほど変わっていなかった。


「みんなそろそろ<シアタ>が沈むぞ。」


寛人が声を掛けると、<シアタ>の日が沈んでいき、<ラテラ>が姿を現した。

すると案の定、王国軍の前には3体の<イーボ>が待ち構えていた。


「やっぱりあいつら来たな。」

「俺たちは構わず前に進むぞ。」


寛人たちは<イーボ>と王国軍の戦いを横目に、戦場を駆け抜けていった。

昨日できた陥没穴の近くまで来ると、そこには例の大蜘蛛がいた。


「よし、作戦通りに行こう。最後の1匹は絶対に倒すなよ。」


メンバーはチームごとに分かれて大蜘蛛との戦闘を開始した。

お互いに爆発に巻き込まれないように、1体を引きつけたら、別チームと距離を取るように離れていった。


―C班―


「どうやって倒すんだ?」


寛人たちは大蜘蛛を他のチームから引き離すと、距離を取って大蜘蛛の攻撃を躱していた。

その中で翔太が寛人に作戦を聞いた。


「しの…晴花、スキルであいつの爆発物を吸収することは出来るか?」

「えっ、あっ、えーっと、出来るんじゃないかな。(まさかこのタイミングで呼ぶなんて。)」


晴花は突然寛人に名前で呼ばれたことに動揺してしまった。

鈍感寛人はその表情に気付いていなかったが、翔太はそのやり取りを見てニヤニヤしていた。


「どうした翔太。」

「いやいや、何でもないって。」

「ならいいが。じゃあ作戦だけど、このまま遠距離で蜘蛛を攻撃して、やつが爆発物を発射するのを待つ。

発射したらそれを晴花がスキルで吸収を試みてくれ。

翔太は近くに待機し、ダメだった場合に瞬間移動で回避してくれ。」

「任せておけって。」


翔太は相変わらずにニヤニヤていたので、寛人は不思議そうに見ていたが作戦の続きを説明した。


「もし吸収出来たら、また遠距離で次の発射を待ち、力を溜めているところで、<Tボール>で気絶をさせる。

その後に晴花が吸収したエネルギをぶつける。上手くいけば一発で消滅させられる。」

「吸収できなかったら?」

「<Tボール>で気絶させた後に接近して地道にコアを破壊していくしかないな。

じゃあ、行くぞ!」


寛人の合図とともに翔太は矢で大蜘蛛を狙い、寛人たちは攻撃を躱しながら、糸に掴った仲間を互いに助け合い、大蜘蛛との距離を保った。

やがて大蜘蛛が発射の態勢に入ったので、みんな発射を待った。

爆発物が発射されると、晴花と翔太は着地地点に急ぎ、残りは距離を取った。

晴花が爆発物に対してスキルを使うと、そのエネルギーを吸収し、爆発が起こらなかった。


「よし、そのまま次の発射を誘発するぞ!」


再び先ほどの行動を繰り返していると、大蜘蛛はまた発射の態勢に入ったので、今度は一斉に<Tボール>を投げた。

電流を食らった大蜘蛛はその場に倒れると晴花は吸収したエネルギーをぶつけた。

すると、内外から爆発を起こし、予想通り一発で消滅させた。


「よし、他のチームの援護に行くぞ!」


あっさりと大蜘蛛を倒した寛人たちはD班の援護に向かった。


―A班―


「俺たちは足止めに役立つスキルが多いし、最後まで蜘蛛を引き付けるぞ。」


彰の言う通り、A班には彰と灰島の足止めに有効なスキルと、秀吉による道具の節約も出来るので、最大限まで大蜘蛛を引き付けることに決めた。


「それでどうやって足止めするの?」

「ではまず私の蔦で動きを止めよう。」


灰島はそう言うとスキルを使って大蜘蛛の足を捉えた。

足をからめとられた大蜘蛛は地面に倒れ、ジタバタさせていた。

数十秒でその蔦を千切ると、今度は発射の態勢に入った。


「任せとけ。」


秀吉はすぐに<Tボール>を打つと、大蜘蛛は電流で気絶した。

その後はみんなで様子を窺っていた。

1分も経たないうちに大蜘蛛は復活すると、すぐに発射体制に入り、一瞬で爆発物を発射させた。


「先の溜め、引き継ぐのかよ!」

「すぐに逃げて。」


みんな蜘蛛の子が散るように八方に逃げていったが、その途中で寿葉が躓いてしまった。

近くで走っていた灰島は寿葉の手を引っ張り、最後は爆発から寿葉を庇うように被さった。

灰島と寿葉は爆発の衝撃で気を失った。


「純、そっちに蜘蛛が向かったぞ!」


大蜘蛛はバラバラになったA班を個別に狙いに行き、まずは純がロックオンされた。

彰が大蜘蛛の足元に槍を投げ、地面と共に凍らせた。

これには大蜘蛛もすぐに氷を解除させそうにもなかった。


「ありがとう檜山くん。」

「なんてことない。」

「(僕の役目は盾なのに、いつも守られてばかりだ。

折角ゲームの知識が役立って、咲田くんたちが僕を頼ってくれたのに、戦場で役に立てないなんて…。)」

「大丈夫か純?」


落ち込んだ雰囲気を醸し出していた純に彰が声を掛けた。


「大丈夫。でも僕って戦場では役立たずだなぁって…。」

「そんなことないよ。猪瀬くんのおかげで、色々と楽になれたし、希望も持てた。」

「そうだ。誰一人として役に立っていない奴なんていないぞ。なっ秀吉。」

「あぁ、そうだな。」

「みんな…。(俺もみんなを守れるような存在になる!)」


すると純のもとに通知が来た。

内容を見た純は徐に大蜘蛛の近くに行った。


「どうしたんだ純?」

「少し待っててください。」


純は大蜘蛛の前で盾を掲げると、大蜘蛛の周りを青いガラスの様な殻が包んだ。

蜘蛛はその中で暴れまわり、また糸を吐いたが、糸が外に漏れることも殻にヒビが入ることもなかった。


「これで当分は蜘蛛も出てこれません。」

「すごいな。これが純のスキルか。」

「そういえば先生と寿葉ちゃんは…。」

「そうだ。」


胡桃の言葉で先ほど吹き飛ばされた灰島たちを思い出し、五人は慌てて灰島と寿葉のもとに向かった。


「新山、新山大丈夫か。」


灰島は寿葉に声を掛けていた。寿葉も呼びかけに漸く気付いた。


「漸く気付いたか。大丈夫だったか?」

「…はい、…大丈夫です。」


寿葉は体を起こすと灰島の背中は爆発でダメージを受けていた。


「先生、そのケガ!」

「あぁ、大したことない。」

「見せてください。治療します。」


灰島は寿葉に背中を向けると、寿葉は治療を開始した。

その間、寿葉はさっきの出来事を思い返していた。


「(また先生に助けてもらった。なんだろうこの気持ち…。

はぁ、先生の背中大きいなぁ。今までそんなこと考えたことなかった。)」

「新山、新山?」

「はっ、先生どうしました。」

「いや、この小さいのは分かるか?」

「えっ?」


寿葉が灰島の声で正気に戻り周りを見ると、寿葉の周りを小さい獣が6体回っていた。

その獣は寿葉の後ろの方へ飛んでいった。


「なんだこのちっこいの?」

「なんだろう害はないみたい。」


後ろから彰たちが向かって来ていた。

その彰たちの所で獣はグルグル回っていた。


「これ寿葉ちゃんが出したの?」

「そうかもしれい…。無意識で出してた。」

「なんか痛みが引いてきたぞ。」


獣は彰たちの小さな傷をミルミルと自動で回復していき、治療が完了するとメンバーの肩に止まった。


「なんかかわいい。」

「そうだな。」


その小さい獣に見惚れていると、向こうから他のチームみんなが集まってきた。


「彰、こっちのチームの蜘蛛は?」

「あそこで純が閉じ込めてる。」


彰が指差した方を寛人が見ると、いまだに大蜘蛛が殻の中でジタバタしていた。


「良かった。ここ以外はすべて倒した。」

「じゃあ蜘蛛が来た方へ行こうぜ!」

「そうだな、すぐに向かおう。」


竜輝が促すと寛人もすぐに賛同し、みんなで大蜘蛛が来た方向へ向かった。


「純、あれはいつ解けるんだ?」

「30分は解けないです。」

「十分だな。」


一同馬を走らせていると、前方に草や砂で固められた大きな巣があった。

その大きさは5メートルほどあり、天辺には大きな穴が開いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ