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グレースネヘス  作者: たつG
19/41

19 5日目:壁攻略の始まり

19 『5日目:壁攻略の始まり』


壁のある方へ向かうと霧が出てくるようになった。

その濃度は近づくにつれドンドン濃くなっていった。


「もうすぐ壁に着くと思うんだけど…。」

「あれじゃねーか」


聖也の指さす方を見ると、高さ3メートルぐらいの白い壁が見えてきた。

白い壁には何の模様もなく、更には境目の様なものも正面にはなかった。


「あれジャンプしたら、縁に届きそうだな。」

「そうだよなぁ。…低くねぇか?」


運動部の男子なら頑張れば届きそうな高さではあった。

寛人たちが着いたときは、まだ王国軍は1人も到着していなかった。


「あんまり近づくなよ。王国軍が到着するまで少し待とう。

あと上からの攻撃があるかもしれないから、警戒しろよ。」


寛人は念のため注意を促し、壁の5メートルほど手前で待機をした。

塀の上を見ても敵らしき存在はいないが、霧が濃いので遠くまでは確認できなかった。

レーダーを見ると敵は壁沿いに均等に配備されており、その中で1体は壁沿いをグルグル回っているものがいた。


「こっち側って入り口なさそうだな。」

「そうだな。横にあるのか?」

「王国軍が来る前にぐるっと回って入り口を見つけておこうぜ。」

「それぐらいはしておくか。」


寛人は聖也に言われ、入り口を探すことにした。

だが、リーダーたちは王国軍が来た時にこの場にいる必要があるので、それ以外の男子からメンバーを選んで、探索に向かわせることにした。

メンバーは翔太・省吾・勇樹・将文の四人に決まり、四人は早速馬に乗り、左側から壁に沿って走っていった。

5分経とうとしたぐらいに、右側から省吾と将文だけ戻ってきた。


「翔太と勇樹がやられた!」

「何にやられたんだ!」

「分からない。二人とも後ろから襲われた。」

「上は警戒していたが、敵の姿は全く見えなかった。」


省吾と将文も少しけがを負っていたので、千佳と寿葉が治療をした。

将文の話を詳しく聞くと、反対側まで馬を走らせた時、最後尾を走っていた翔太が、不用意に壁に近づいて行き霧で見えなくなったので、呼んでみたがが返事がなかったらしい。

少し待つと馬だけ戻ってきて、ヤバいと思った三人はそのまま時計回りで戻ってくる途中で、今度は勇樹が背後から矢で射抜かれたということである。


「それだけじゃない、門がなかった。」

「嘘だろ!?どこから入るんだ。」


っとその時、右斜め前から矢が飛んできたが、霧でギリギリまで気付かなかった聖也が射抜かれてしまった。


「聖也!くそっ!みんな気を付けろ!敵の攻撃が始まった!

渡瀬、前方に壁を作ってくれ!みんなその後ろに隠れるんだ!」

「分かった。」


実久はすぐにスキルで壁を作ると、みんなはその後ろに隠れた。

矢は数発放たれたが、手ごたえがないと感じたのか、すぐに攻撃は終わった。

発射回数と感覚からして、弓を使う敵の数はそれほど多そうではなかった。


「みんな油断するな。今も俺たちが出てくるのを待っているかもしれない。」


その体制のまま待機していると、ブライトの部隊が漸く壁の所まで来た。


「待たせた。攻撃を受けているのか。」

「気を付けてください。正体は確認できていませんが矢での攻撃を受けています。」


ブライトに聞かれた寛人は今の状況を説明していると、今度は王国軍目掛けて矢が飛んできた。

ブライトはすぐに盾部隊を前方に展開した。


「この霧が邪魔だ。」

「めんどくせえ。ダイナマイトで壁に穴開けるぞ。」

「この際それでもいいかもしれない。秀吉、いつもの頼む。」

「分かった。」


竜輝の提案に寛人は乗った。

いつものように火の付いたダイナマイトを秀吉がスキルで打ち、壁の近くで爆発した。

壁は少し欠けたぐらいで、倒壊はしなかった。

ただ、その爆風で霧が晴れて、一瞬だけ壁の角の上に煙を発生させている装置が見えた。


「寛人、さっきのこの霧を発生させている装置じゃないか?」


装置に気づいた彰が、寛人に確認した。


「そうかもしれない。英水、さっきの装置狙えるか?」

「えぇ、たぶん行けると思う。」

「頼んだ。将文と大輔、英水を守ってくれ。」

「了解」


将文と大輔の盾の間から美郷は先ほどの装置を狙った。

右、左と順番に破壊していくと、正面の霧が薄まっていき、端から端までが見えるようになった。

だが矢を放っていた敵は見当たらない。


「霧が晴れてきたな。<ウィザラー>、反対側にも装置があるかもしれないから、それも破壊してくれ。そのあと入り口で合流して、反撃を開始する。」

「ブライトさん、こちらで確認したんですが、入り口は見当たりませんでした。」

「それは本当か!?あの高さならよじ登って入るしかないか…。

お前たちは装置を破壊したら、反対側からの侵入を試みてくれ。」

「分かりました。」


寛人はメンバーに合図を送ると一斉に時計回りで反対側に向かった。

矢が放たれても対応ができるように、壁から少し距離を取って大きく回った。

反対側に着くと美郷は再び角に矢を射ると、やはり霧を発生させていた装置があり、また左右2箇所破壊すると、霧は完全に晴れていった。


「これで不意を突かれることはない。近距離部隊でまず侵入を試みる。

敵が出たら弓部隊は援護を頼む。」


そう言って寛人たちは横3列で壁に近づいて行った。

壁まで2メートルの所で、いきなり壁から大きな彫刻が現れ、寛人たちを攻撃した。

突然の攻撃で受けることしかできなかったが、彫刻の攻撃は重くほとんどは吹き飛ばされた。

距離を取ると彫刻は壁の中に消えていき、また近づくと攻撃を仕掛けてきた。

だが防御は弱いようで、後方からの弓の攻撃ですぐに消えた。


「こいつらは弱いぞ。チャンスを見て攻撃出来たら、すぐ壁を登るんだ。」


正面の彫刻を倒した人が<Rボール>で土台を作り壁をよじ登ろうとすると、今度は上から弓で一斉攻撃された。

更に倒したはずの場所からまた彫刻が出現し、油断した者がやられていった。


「みんな離れろ!壁の中にコアがあるのかもしれない。」


そう言って寛人の指示に従い、戦っていた者は壁から距離を取った。

そこで寛人は深呼吸をして彫刻が出てきた辺りに斬撃を飛ばした。

斬撃は壁を貫通して飛んだが、コアは破壊できなかった。


「寛人、純からもらった道具を試そうぜ。」

「そうだな。」


彰の提案で寛人は純からもらっていた攻撃道具を使用した。

まず<Fボール>を使って見ると、彫刻1体は倒せるが、壁は黒く焦げるぐらいだった。

次に<Tボール>を使うと、壁を伝って接着地点から半径5メートルにいた敵を倒せた。だがやはり壁には効果なかった。

今度は寛人が空けた穴に向かって<Mボール>を投げると、彫刻には聞いてなさそうだったが、壁の向こうから呻き声が聞こえた。


「彫刻には毒は効かないが、壁の向こうにいる敵には効いているのかもな。」

「そうかもしれな…。って、壁の穴が閉じていくぞ。」


寛人たちの目の前で、穴がじわじわと修復していった。

ものの数秒で壁は元通りになり、黒く焦げた部分も元の白い壁に戻った。


「寛人、戻って来い!」


後ろを見ると復活した聖也たちが戻ってきて、寛人たちを呼んでいた。


「分かった!みんな戻るぞ!決して後ろを見せるな。」


寛人たちは正面を向いたまま後ずさりをした。

その途中で<Rボール>を壁の上に向かって投げると、弓を使っていた彫刻は押し潰され、その個所からは出現しなくなった。

遠距離組の所へ戻ると、美郷がコアのサーチ結果を報告してきた。


「あの彫刻や見える範囲の壁にスキルを使ったけど、コアが見つからなかった。」

「見つからなかったって…。どいうことだ?」

「分からない。そのままよ。」


寛人は美郷のおかしな報告に首を傾げた。

そもそも本当にコアがないのならどうすればいいのか分からなかった。


「遠くから見ていたけど、壁まで大体10メートルぐらいで弓で攻撃され、2メートルまで近づくと近距離の攻撃って感じだった。」

「<Rボール>投げたところ敵出てこないし、ブロックで塞いで強引に登るか?」

「土台を2段にして、上は21ブロック並べたらいけそうだな。」

「<Rボール>は1人1個ずつしか用意できてないから、余裕はないな。」


リーダー四人で話し合って、壁を強引によじ登ることに決めた。

早速みんなから<Rボール>を回収すると、10メートルぐらいの距離から投げてブロックを並べていった。

多少隙間は発生したが、21メートルはブロックで埋めることができた。

早速近距離組でブロックの中央辺りから侵入を試みた。

予想通り10メートル以内に入ってもブロックで塞いでいる箇所から弓に攻撃されることはなく、近距離で出た敵だけを倒し、まず寛人が壁を登った。


「何だこれは…。」


寛人は言葉を失った。天井部分は見える範囲全て屋根が付いており、中は全く見えなかった。

更にその天井の中を人間サイズの楕円の影が移動していた。

空を見上げても何もいなかったので、どうやら天井の中を移動しているようだった。

寛人は直感的にそいつがこの壁の本体だと確信した。

その影から何者かが頭を出し寛人をにらみつけると、寛人から100メートル以内の範囲から矢が飛んできた。


「降りるから下がってくれ。」


寛人は叫ぶと同時に地面に降りると、再びみんなで後ろに後退した。

遠距離組の所まで戻ると上で見た光景を話した。


「強引に侵入して、封印石を破壊することは出来ないか。」

「本体を攻撃しようにも矢の数が多すぎる。」

「万全を期して壁を全て塞ごうとすると、1000以上のボールがいるぞ。」

「そんなに投げれねーぞ。」

「一度王国軍と合流して、ブライトさんに協力を仰ごう。」

「それが良いかもしれない。」


再びリーダーで話し合うと、今度は王国軍と合流することに決まった。

すぐにみんなに号令を掛け、馬に乗って正面に廻った。

正面ではアレクサンドラ部隊も合流してしたが、壁から距離を取って待機していた。


「ブライトさん。こちらもダメですか。」

「あぁ、君たちか。梯子も爆破も投石もあまり効果がなかった。

しかも投げた石はそのまま戻ってくる始末だ。無策で行っても被害が無駄に拡大する。」

「こちらに考えがあるので、協力していただきたい。」


寛人は<Rボール>についてブライトに説明をした。

ダイナマイトと違い、特殊な道具はこちらの世界に存在しなかったので、英雄ですら扱うことは出来なかった。


「便利な道具だが、扱えないのは残念だ。それで、これを作るための素材が欲しいのだな。」

「そうです。欲しい素材は…」

「分かった。だがこの量を集めるには時間がいる。

一度退却して、明日の昼には<ウィザの洞窟>に届けよう。」

「ありがとうございます。」


そう言って一部の部隊だけを残して、あとは砦に戻った。

リーダー四人はそのまま会議室に行き、具体的な作戦を参謀交えて話し合った。

他のメンバーたちは洞窟へ戻っていった。


〔寛人RP8〕

〔聖也RP13〕

〔彰RP14〕

〔将文・秀吉RP15〕

〔竜輝・菊池・楓・玲奈RP16〕

〔省吾・美郷・晴花・胡桃RP17〕

〔大輔・翔太・巧太・千佳・翠・深琴・梓紗・菫RP18〕

〔灰島・純・勇樹・実久・寿葉RP19〕

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